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今年読んだ「新作ミステリー」(読書回顧2024)
一年が経つのは早いです。
大好きなミステリー小説の年間ブックランキング発表の時期なんで、例年のように、私的に今年読んだ "新作ミステリー" の振り返りをしていこうと思います。
(と、記事を書いていたのですが、PCの不調もあって、投稿が遅れたため、いくつかのランキングは発表されてしまいました💦 後出しジャンケン的な面は否めないんですが、ランキングを踏まえたコメントは(※~)を付けて付記しています。)
今年読んだ "新作ミステリー" については、既に「本の帯」視点から記事にしてるので、重複する部分もありますがご了承ください!
※ 各種ランキングに倣って、2023年10月~2024年9月の間にリリースされたものを新作としていますが、基本、私にとっては "今年読んだ本" に関する記事になっています。
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【国内編】
今年読んだ国内ミステリーの新作は次の19冊です。
青崎 有吾「地雷グリコ」11.27
森見 登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」1.22
芦辺 拓・江戸川 乱歩「乱歩殺人事件」1.30
恩田 陸「夜明けの花園」1.31
潮谷 験「ミノタウロス現象」2.2
阿津川 辰海「黄土館の殺人」2.15
米澤 穂信「冬期限定ボンボンショコラ事件」4.30
荻原浩「笑う森」5.30
京極 夏彦「了巷説百物語」6.19
芦沢 央「魂婚心中」6.19
今村 昌弘「明智恭介の奔走」6.28
潮谷 験「伯爵と三つの棺」7.18
阿津川 辰海「バーニング・ダンサー」7.26
永嶋 恵美「檜垣澤家の炎上」7.29
呉 勝浩「法廷占拠 爆弾2」7.30
有栖川 有栖「日本扇の謎」8.7
白井 智之「ぼくは化け物きみは怪物」8.21
方丈 貴恵「少女には向かない完全犯罪」8.21
斜線堂 有紀「ミステリ・トランスミッター」9.19
※太字は初読み作家さんです。
今年は読書に充てる時間が減少傾向だった割にはけっこう読んでます。
もちろん、待望だった米澤穂信さんの<小市民シリーズ>の最終巻である「冬期限定ボンボンショコラ事件」、そして京極夏彦さんの ”巷説シリーズ” の最終巻となった「了巷説百物語」と、大好きなシリーズの完結を見届けられた満足感もあった年となりました。
また、森見登美彦さんのホームズものをはじめ、恩田陸さんや有栖川有栖さん、阿津川辰海さん、呉勝浩さんらの新作も楽しかったです。
その他の作品についてテーマを絞ってトピックしていきます。
◎追いかけるのが確定した新鋭作家さん
今年、初めて読んだ若手作家さんの中で、私的に面白かったのが潮谷験さんです。
そして、初・潮谷さんとなったのが「ミノタウロス現象」という本です。
ふざけたタイトルですよね~。
なぜか怪物:ミノタウロスが出現するようになってしまった現代を舞台にした特殊設定ミステリーです。
非常にバカバカしい設定なんで、力を抜いて読んでたんですが、途中、なにやら本格の気配を感じさせてくれる部分もあって、ちょっと魅かれちゃったんですよね。
面白い作家さんが出てきたと… 思ったのです。
その予感は間違ってなくて、次にリリースされた「伯爵と三つの棺」になると、フランス革命時代を舞台に三つ子の兄弟が出てくるクラシカルな犯人当てを披露してくれたり、なかなか楽しませてくれました。(※ランキングでは「伯爵と三つの棺」の方が評価が高いようです。)
器用さを感じる作家さんで、今後、間違いなく追いかけてしまうと思います。
◎SFとクロスオ-バーする3冊の短編集
普段はあまり読まない短編集なんですが、今年はSF×ミステリーの短編集が目についた年でした。
特殊設定ミステリー隆盛の昨今は、若手ミステリー作家さんはSFとミステリーの境界がボーダレス化してて楽しいですね。
好みが分かれる部分もあって、私的に芦沢央さんの「魂婚心中」には乗り切れなかったのですが、収録作のひとつ『九月某日の誓い』なんかはSFとミステリーのバランスが良くて面白かったです。
斜線堂有紀さんの「ミステリ・トランスミッター」は、既視感のあるテイストが多くてインパクトには欠けますが全体的にバランスが良い印象です。
特に収録作のひとつ、カール・セーガン博士が主要人物の『ゴールデンレコード』なんかはなかなかの傑作だと思いました。
白井智之さんの「ぼくは化け物きみは怪物」になると、もうSFも超えちゃってて、異形さも加えた、まさに ”奇想!” というに相応しい作品ばかりで圧倒されました。
ここ数年、毎年のように楽しませてくれる作家さんで、ほんと面白かったです。
◎総括
白井智之さんの「ぼくは化け物きみは怪物」も推したい作品なんですが、今年読んで一番楽しかったのは、青崎有吾さんの「地雷グリコ」でした。
実は note友 の みとんさん から紹介された本なんですが、ほんと面白かったです!(※各ランキングで上位を席巻してますが、納得の面白さです。)
タイトルの ”地雷グリコ” のような風変わりなゲームで勝負する学園ミステリーなんですが、「カイジ」や「ライアーゲーム」と同様の心理的駆け引きをメインに据えた本です。
少年漫画的な展開も熱くてエンタメとして完成度が高いです!
私としては「ジョジョの奇妙な冒険」第3部での ”ダービー・ザ・ギャンブラー戦” を思い出させるほど楽しかったです。(←わからんわ!w)
さて、もう一冊付け加えるならば、永嶋恵美さんの「檜垣澤家の炎上」も引き込まれた本です。
大正時代を舞台とした物語なんですが、主人公の少女のしたたかさと、周りの大人との駆け引きがとても面白かったのです。
純粋なミステリーとは言えないかもですが、今までになかった印象を残した一冊でした!(※各ランキングでも高く評価されてました。頁数にひるまず、ぜひ手に取ってみてください!)
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【海外編】
さて、今年読んだ海外ミステリーの新作は次の21冊です。
シェルビー・ヴァン・ペルト「親愛なる八本脚の友だち」12.22
キャサリン・R・ハワード「ナッシング・マン」12.25
ハビエル・セルカス「テラ・アルタの憎悪」1.10
ホリー・ジャクソン「受験生は謎解きに向かない」1.11
アーナルデュル・インドリダソン「悪い男」1.19
ジリアン・マカリスター「ロング・プレイス、ロング・タイム」3.6
ダン・マクドーマン 「ポケミス読者よ信ずるなかれ」4.5
スティーヴン・キング「ビリー・サマーズ」4.8
ジャナ・デリオン「嵐にも負けず」4.10
S・A・コスビー「すべての罪は血を流す」5.17
M・W・クレイヴン「恐怖を失った男」6.5
アリス・フィーニー「グッド・バッド・ガール」6.19
マット・ラフ「魂に秩序を」6.26
クリスティン・ペリン「白薔薇殺人事件」7.11
ベンジャミン・スティーヴンソン「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」7.24
M・W・クレイヴン「ボタニストの殺人」8.21
リズ・ニュージェント「サリー・ダイヤモンドの数奇な人生」8.23
ペトロニーユ・ロスタニャ「あんたを殺したかった」8.27
アシュリィ・エルストン「ほんとうの名前は教えない」8.30
アンソニー・ホロヴィッツ「死はすぐそばに」9.11
ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチメイカーの罠」9.24
※太字は初読み作家さんです。
(積読)
*ガレス・ルービン「ターングラス: 鏡映しの殺人」9.19
*ジェローム・ルブリ「魔女の檻」10.9
初読み作家さんが11人と、今年も手広く読んだ感じです。
なんか新しい作家さんとの出会いはほんと楽しくて、例年なら読まないようなタイプの本にも手を出しちゃってますね。
もちろん、M・W・クレイヴンの<ワシントン・ポーシリーズ>の最新刊「ボタニストの殺人」をはじめ、アンソニー・ホロヴィッツの「死はすぐそばに」やジェフリー・ディーヴァーの「ウォッチメイカーの罠」など、人気シリーズの最新作は「さすが!」と思わせられる質の高いエンタメになってます。
多分、ランキングでも高評価だと思うんですが、シリーズの新作って、安心して読める分、新たな驚きは少なかったりするんです。
そんな自分だからこそ、新しい作家さんに手を伸ばすんだと思います。
◎何を読まされているのか分からないミステリー
私が好むミステリーの中には「読む側の好き嫌いが分かれそうな作品」というジャンル(個人的に…)があります。
そういうミステリーって、読んでるうちに予想外の方向に話が進んだりして、途中、"何を読まされてるのか分からなくなる" ことがあったりするんですが、好きなんです、そういうの__
今年読んだ作品だと、アリス・フィーニーの新作「グッド・バッド・ガール」やペトロニーユ・ロスタニャの「あんたを殺したかった」とかがそのジャンルに入るんですが、中でも面白かったのがアシュリィ・エルストンの「ほんとうの名前は教えない」という作品です。
物語は、他人になりすまして“仕事”をしてきた“わたし”が、ある“仕事”をしてる時に、自分(わたし)になりすましている謎の女性と遭遇したことから始まります。(←状況伝わります?)
様々な謎をはらみながら物語が展開していくサスペンスなんですが、その展開の仕方が面白くてですね~、オチは、まあ、それなりなんですが、この系統では上位にくる作品でした。(※ランキングではまったく姿が見えませんでしたが、変化球好きな人にはお勧めの本です。)
◎総括
ホロヴィッツやクレイヴンのシリーズ最新作は、ほんと面白かったのですが、読んで ”清新な楽しさ” があったのは初読み作家さんたちです。
その中で最も楽しませてもらったのは、ベンジャミン・スティーヴンソンの「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」でした。
雪山の山荘で起きる連続殺人というクラシカルなシチュエーションの中で、王道の犯人当てを描いたこの作品は、タイトルに魅かれたジャケ買いだったのですが、とても自分に合う作品でした。
こういう、古典に敬意をはらいながらも "古さ" を感じさせない作品はいいですよね!
また、その他の作品としては、先述のアシュリィ・エルストンの「ほんとうの名前は教えない」と、マット・ラフの「魂に秩序を」ですね~。
ミステリー/サスペンス要素はあるものの、基本は青春冒険小説なんで、ランキング等には入ってこないかもしれませんが、1000頁超ながらそれを感じさせない読み味でした。(※ランキングを見ると、ミステリーとしても評価されてたようです。)
新潮の<海外名作発掘>シリーズの一冊なんですが、なんで翻訳されなかったんでしょうね。
そして最後に、作家50周年を記念して刊行されたスティーヴン・キングの「ビリー・サマーズ」は、私にとっての特別枠です。
この年齢になっても筆力は衰えませんね~、こんな作品を描けるキングはやっぱキングなんですよね。
主人公の姿がキング自身に重なって見えてくる名作でした!
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今年も、いい読書ライフでした!
たくさんの本や作家さんと出会えて嬉しかったです。
ただ、新作を追いかける割合が増えてるので、来年は初心に戻って、過去の名作とも出会いを広げていきたいと思います。
蛇足ですが、最近 amazon の本のカスタマーレビューを時々書きこんでますので、名前を見かけたらよろしくです。
(2024関係 note )
(過去の「新作ミステリー」関係 note )
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