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【architecture】窓学|フィッシャー邸|ルイス・カーン

アメリカの建築家ルイス・カーン(1901-1974)の設計したフィラデルフィア郊外に建つフィッシャー邸は窓のお手本のような建築だ

カーンは大学や図書館、美術館、バングラデシュ国会議事堂など大きな建築を手がけた事でも有名であるが、小さな住宅も数多く手がけておりその作品は秀逸である

世界恐慌と戦争という不遇の時代を長く生きたカーンは戦後の50代になってからそれまで蓄えていたエネルギーを吐き出すように作品を作り続けた建築家だ


フィッシャー邸に話を戻す

閑静な住宅地にあり、周囲は木々に囲まれている
四角いキューブを2つ、45度傾けてドッキングした形をしている

ダイニングとリビングは暖炉によって緩く空間が分けられている
この暖炉の配置がこの家のキーポイントではあるが、今回はその暖炉で仕切られたリビングの窓際空間に注目したい

まるで森の中にいるかのような窓際空間である
石積の暖炉と木製の造り付けベンチ、外部の緑が一体化している

この窓は『風景を眺める窓』『風を取り込む窓』を明確に意識して作られている

『風景を眺める窓』は、はめ殺し窓(=FIX窓)といって開かない窓である
それゆえ開口部は大きく大胆に設けられている

一方『風を取り込む窓』は写真のベンチ左側に設けられた2段に分かれた窓である
外側に開くようになっており、ロール式の網戸が付いている


一般的な日本の既製品のサッシは開く窓には網戸が全て付いている
可動式のものあれば半固定式のものもある

私は個人的には網戸があまり好きではない
網戸越しに眺める空はやはり綺麗ではないように思うからだ
幼い息子と夕方の空を眺めるのが日課になりつつあるが息子も私に似たのか網戸越しの風景が気に入らないようで、いつも網戸を開けたがる
私も窓ガラスさえ、夕方には室内が映り込んでイヤなので息子に賛成なのだが、やはり虫が入ってきたりヤッカイである

『風景を眺める窓』『風を取り込む窓』を分ける事で網戸問題を解決しようという試みがある

また『風を取り込む窓』は壁面より室内側に掘り込まれているため雨の日でも開けることが出来る

また外観としてもスッキリしたはめ殺し窓に対して開く窓は金具などが気になる
それをうまく隠し、単純なキュービックな形に陰影を与える役目も果たしている


この2種類の窓とベンチを馴染ませるようにデザインして出来たのがこの窓辺空間である

日本の住宅によく使われる引き違い窓は、外の景色を取り込むのも、風を取り込むのも、明かりを取り込むのも全て可能にするが、網戸やサッシの障子部分がスッキリしない難点がある

性能的にもデザイン的にもかなり工夫が凝らされていて優れた商品であることは間違いない
私もよく使うサッシである


だが名作住宅の窓際空間にある考え抜かれた機能と美しさを両立させたデザインには学ぶべきことが多い

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