それぞれの地球の歩き方
『地上に星座をつくる』石川直樹
タイトルに惹かれて手に取った。カバー裏面の紹介文を読んで旅を題材にした本だと知る。
いいなぁと思う。旅の本を読むのは、自分がすることのできない経験を追体験させてもらうため。自分では知ることができない"世界"を、そこに存在する"生活"を、"生き様"を教えてもらうため。
この方は自分が見た世界を出来るだけ詳細に文章に置き換える方だと思った。写真家だからなのか、目の前の事象を捉える解像度がとても高いと思った。とても細かいけれどもただの説明ではなくそこには物語が存在している。
ガンジス川の河口で食べたカレーがどういう味わいだったのかは、ガンジス川の上流から物語り河口付近ではどのような状態なのかを物語ることで深みが増している(気がする)。
洗面台の排水口にあるコガネムシの亡骸をどれほど取りたくないのか、冒頭で書かれた「やれやれ」具合いも経緯を物語ることにより文末を読む頃には十二分に伝わっている。
海外だけではなく日本各地も旅をしている。観光ではなく旅だ。そこでの暮らしや歴史、自然と共存するようにその地で数日を過ごす。
世界だけではなく、日本各地のことも知らないことばかり。そして、自分がどこかへ行くとしても、こんな風にはできないだろうと思う。
著者の7年間をこんな風に追体験させてもらえて、とても贅沢な一冊だと思う。
その他、最近読んだ旅の本もご紹介。
それぞれ世界の見方、感じ方、旅の仕方が違って面白いと思う。
『絶景・世界の山歩き』佐藤れい子
アジア・ヨーロッパ・南米・オーストラリア、それぞれの山へ挑戦したい想いから、登頂後の感想までの「記録」という感じ。旅程も時間まで細かく記載されていたり、食事もいつどんなところで何を食べたかの記述がより「記録」感があって面白い。カラー写真も掲載されていて、山だけではなく足元の花や登山者たち、頂上での記念写真など、アルバムを見せてもらっているみたいで楽しい。
山だけではなくその国も楽しんでいる様子も良い。
『またたび』さくらももこ
ヨーロッパ、ロシア、アジアなど海外だけでなく日本の遠方にもひょいっと飛んでいく感じ。フットワークの軽さや流石の視点と文章の巧みさでおもしろおかしく笑わせてもらえる。
『ももこの宝石物語』さくらももこ
さくらももこ先生はこちらの御本でも旅について書かれている章がある。宝石店店主の買い付けに同行させてもらう旅の話だ。滅多に聞けない裏側の話を聞けるのも面白いし、あけすけなく失敗談も書いてある。
『旅の断片』若菜晃子
旅をしながら自分と向き合う方。向き合って考えたこと感じたこと思ったことなど内面のことをたくさん言葉にして書き溜める方なんだなと思う。"人生"の捉え方を読ませてもらっている感じ。「世界を見て、反射した自分を描く」という感じ。
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