マガジンのカバー画像

旅と私

55
旅から学んだいろいろなことを綴ってます
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

新しい道と古い道

新しい道と古い道

のんびり歩いていると大きな道路が小さな道路網を無視するかのように人工的に造られていることに気づくことがある。

家の近くを船堀街道が南北軸から少し右に傾いて真っすぐ通っている。葛西橋通りが東西に真っすぐ走って、船堀街道と交差している。歩いていると、これらの大きな道路のありようがどうも変だなと思う。小さな道路と垂直に交差していないのである。地図を見て船堀街道や葛西橋通りを取り除くと、いくつかの小さな

もっとみる
父との旅行

父との旅行

私が学生の頃に、父母がよく夫婦で連れ立って旅行に行った。心臓を患っていた父は母にわがままだった。旅先でツアーの同行者から「あなたは病気を武器にしている」と冗談めかして言われたらしい。父は、家に帰ってきてその話を何度も言い、激高していた。旅先で、父は母を頼っていた。ただ傍目にはその深刻さが分からず、亭主関白のわがままと映ったのだろうか。「『あなたは病気を武器にしている』なんて言われたが、本当に具合が

もっとみる
何故人は旅をするのか?

何故人は旅をするのか?

人は何故旅をするのか。その一つの答えは、日常からの解放である。「旅に出ることは日常の生活環境を脱けることであり、平生の習慣的な関係から逃れることである」といったのは哲学者の三木清である。旅により、心が開放的になる。内向的な心が外向的になり、自我が解放されていく。漱石の「行人」や「彼岸過迄」のクライマックスで旅による精神的な救済が扱われている。

日常からの解放を求めて旅に出ると、旅先で思いがけない

もっとみる
物乞いと芸能

物乞いと芸能

北京オリンピック前のことである。現在の北京は当時とはだいぶ変わっていると思われるが、天安門広場を歩いていると、手を差し出して近づいてくる人がいた。見るとその手には指がなかった。手の平の上にはコインが乗っている。この上に貨幣を乗せてくれとの意味なのだろう。その姿に単なる物乞いというよりは、自らを見世物にして対価を要求している。そう思えた。これが手の平でなく、手足となり、軽やかに動き出したら舞踊である

もっとみる
不思議な天気 雪と晴の境

不思議な天気 雪と晴の境

昨日は午前中に雨が降ったが、正午過ぎに青空が見えた。外に出てみると傘をさしている人がいる。まだ雨だった。折り畳み傘を広げたが、雲間には透き通った青空が広がっている。空が晴れても雨が降るアイルランドのような・・・丸山薫の「汽車に乗って」の詩はどんなだったかな。そんなことを連想させる不思議な天気だった。

かつて出かけたスキー場はあいにくの雨、冷たい雨が服を濡らした。スキーリフトに乗って上がっていくに

もっとみる
修善寺の麦わら細工の店

修善寺の麦わら細工の店

学生の夏休みに中伊豆の旅をした。修善寺に泊り、翌日湯ヶ島に行くバスを待つときに、バス停の前に工房を兼ねたような土産物屋があるのに気づき入ってみた。

古めかしい感じの店内には古典を題材にした麦わらの貼り絵がたくさん飾られていた。

店主らしき人が帳場に座り、作品を作っている最中だった。

郷土玩具に関心があったので、修善寺の麦わら細工を一度見たいと思っていた。見渡したところ店内にはそれはなかった。

もっとみる