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【本の紹介】台所道を究めよう!『キッチンブック』(テレンス・コンラン著)

こんにちは!シルクロード文庫の渡邉俊です。
この記事では、シルクロード文庫の1万冊ある膨大な蔵書の中から、埋もれた遺跡を掘り出すように発掘した本を紹介していきます!
訪問の際のご参考になればと思います。

前回の記事で、昔の日本の台所状況が知れる『モースの見た日本 モース・コレクション/民具編 』を紹介しましたが、

今回はイギリスの台所を知ることができる本を発掘しました!

『キッチンブック』(テレンス・コンラン著、三洋出版貿易株式会社)です。

綺麗な日差しが映える本です

みなさんはテレンス・コンランという人物をご存知でしょうか?
インテリアデザイナーであり、家具ショップ・コンランショップの設立者である彼の初めての展覧会が現在、東京ステーションギャラリーで開催されています。

そんな世界的に著名なコンランが書いた『キッチンブック』ですが、
これ一冊でイギリスの台所のすべてを書いているんじゃないかというくらいものスゴい情報量なのです。

ホームファーニッシングを提唱し、世界中にショップを展開するテレンス・コンランが、キッチンの機能性、デザイン、そして家の中心として家族、友人の集う場所はどうあるのが美しいかについて、図版、美しい写真とともに考察しています。眺めているだけでも心が弾むような美しい画像満載ですが、グラフィックとしてだけでなく御自宅のキッチンにも生かせるアイディア満載の一冊です。

『キッチンブック』書誌情報より

キッチンの歴史や各キッチンのデザイン性、機能性など写真を見ているだけで楽しくワクワクするページもあります。

ゆとりあるスペースが特徴のカントリーハウス P78-79
英国人のノスタルジーを誘うファームハウス P80-81

本書を読むまでは、台所にもスタイルがいろいろあることを自分は考えたことがありませんでした。
でも食は人類の基本なんだし、そりゃ多様なスタイルがあって当たり前ですよね。
ですが、基本的に台所に求められるのは機能性で、
本書では「"あるべきものが、あるべき場所に揃っている"、これは夢のキッチンのモットーです。」と言っていて、そのための配置例まで教えてくれています。

そのまんま再現するのは難しくてもかなり参考になります。 P110-111

このように前半だけでも学びがとてもあった本書ですが、本領発揮するのはここからなのです。
スタイルにとどまらず、水道・ガス・電気についての詳細、なんと水道管・配線図までも詳細な説明しています。

P122-123

給水管と排水管で選ぶ各素材のメリット・デメリットまでも教えてくれます。プラスチック製は扱いやすいですが膨張と縮小の幅が大きいので、温水管には適さないとのことです。

P107

照明についてもガッツリ解説していて、台所に限らず室内の明るさをわりと気にする自分としてはかなりタメになります。

P133

ごみ処理についてでは、焼却炉で発生した灰は園芸で使えるという園芸文化が盛んなイギリスらしい話も。

また、前回の記事で食洗機を導入するか悩んでいる話をしましたが、
なんと食洗機の選び方まで本書ではレクチャーしてくれます!

P137

買う余裕があれば、お買いになったほうが良いでしょう。でもこれがあっても食器洗いからいっさい解放というわけではありません。

P136

厳しい現実を教えてくれます。
この本は1980年の本なのですが、我々はいまだ食器洗いから解放されている訳ではありません。
いったい人類はいつになったら食器洗いから解放されるのでしょうか…泣

優美な磁器やガラス器、凝った装飾仕上をした鉢やつぼなどは、どうしても手で洗う必要があります。食器洗滌機が家庭にあると、時間と手間をずいぶん省いてくれるのはたしかです。
その性能をフルに発揮させるには、上手な使い方をすること。食器をぎっしり詰めて洗うのもそのひとつ。そして洗いとすすぎが終ったら、そのまま食器棚がわりに置いておき、次の食事の用意をするとき食器洗滌機から食卓へ直接に出すのも方法です。

P136

たしかに食器棚としても使えると考えたら、スペースの有効活用という考え方もできるわけで、やはり食洗機は必要だと本書を読んで思いました。
週末、家電店に行こうと思います。

本書を読んで思ったのは、もはや理想の台所を追求するのは「台所道」と呼んでも差し支えがないくらい、奥深いということです。
ですが、自分の理想の台所を作れたら毎日楽しくなりそうですね。
自分が使いやすい台所という視点がまったくなかった自分にとって、この本から得た学びは大きくて、「理想の台所を極める道」を一歩踏み出した想いです笑
知見がふんだんにつまった本書は、個人的にイチオシ本です!

自分が台所に立つようになると、これまで興味が湧かなかったこの手の本が楽しくてしょうがなくなってきました。
本は、「自分が何に興味を持っているのか」をその時折りで教えてくれると思います。
そのためには、膨大な本の中をウロウロしながら背表紙を眺め、思うままに本を手に取るするといった体験が必要なのではないでしょうか。
ぜひシルクロード文庫でそんな体験していただけたら!

前回から台所周りの本をいろいろ読んでいると、今度は世界各国の台所事情も知りたくなってきますね。
もし他の国の台所本(そんなジャンルがあるのか分かりませんが笑)があれば、また紹介したいと思います!

前回から紹介したように本文庫ではシルクロードと一見関係がないように思える料理の本など(哲学・思想書なども実はあります)も置いてありますが、おそらくシルクロードとなにか繋がりがあるでしょう。
ぜひご自身で本を手に取ってご確認ください。

それでは、本日はこのへんで!
最後まで読んで頂きありがとうございます。

紹介した本はシルクロード文庫内に置かれていますので、ご興味ありましたらお立ち寄りください。
宝探しみたいに、紹介した本を"発掘"してみるのも一興です!

text by 渡邉俊


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