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『墨のゆらめき』、そのかがやき。
読書感想文は久しいです。『コンビニ人間』ぶり📚️
初作家さんに挑戦することが最近のムーブなってきています☺️今回読ませて頂いたのはこれもまた初作家さま…
三浦しをんさんの『墨のゆらめき』。
『舟を編む』やユニークなエッセイ作者としても知られている三浦しをんさん。代表作から読もうと前々から思っていましたが偶然興味深いnotorさんの記事を…✍🏻
現在進行形で書道教室に通っていることもあり、記事の題名に吸い寄せられて行きました。3冊ご紹介されている中でも表紙やストーリーにピンときた、「墨のゆらめき」を書店で購入。(正確に言えば頂きました。ありがとう…☺️)
そんな私の読書感想文、ぜひ「書道」という存在にも注目して楽しみ頂けたら大変喜ばしいです🖋️
あらすじ
実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。
この作品のキーワードとなるものは、「書道」「友情」。
技術の持った書家である遠田さん。ホテルマンとしての実務をこなす続、通称チカ。
その二人が「書道」という存在をきっかけに交流を積みつつ、相棒的な情を生み出していく物語。
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二人とも良い顔立ちで…
書家とホテルマンの他にも「カネコ氏」と呼ばれる遠田家の猫が…この子が後々良い役割を果たしてくれるんです…👀
「書道」
この物語のテーマが「書道」ということもあり、語るには必須な項目…。筆が半紙に柔らかく落とされ、ゆらめく墨汁を繊細に表現する三浦しをんさんの文が美しい。
千年以上もまえの人々の息吹や目にした風景や感じた気持ちが、書家が紙のうえに具体化した文字に宿り、それを見るものに伝わってくる。筆を使って宇宙のすべてを紙に封印し、それらを紙のうえで生き生きと躍動させることができる。
文字が組み合わさり、言葉ができ、その言葉から文ができ。そしてこの文から感じるはずの無い墨の香りが微かに感じられる。
チカ目線で語られ、読後の今からしてみればこの文から遠田さんの「書」への相当の惚れ込み具合が分かります。
それほどに美しい遠田さんの芸術を一度お目に掛かってみたいと思うばかり。
「友情」、「?情」
物語の終盤。
遠田さんの暗い過去を知った後、一度は疎遠になってしまいましたがチカは遠田を、遠田の書を忘れることが出来ず「会いにいけばいい。」と再びあの宅へ訪れ、終。
二人の友情、それ以上かそれ以下なのかの「?情」がとても良い。オタク心が疼いてしまう…(笑)
俺は遠田の顔を正面から見た。
「遠田さん。私たちは友だち……」
と意気込んで言いかけたのだが、ちょっと考え、
「ではないですよね」
と尻すぼみになった。
「ないな」
遠田もうなずく。
そんな事を言い合えていて正真正銘友だちやないかーーい!!と、突っ込みたくはなりますがどうやら友だちではないようです。
こんな友だち、相棒が私も欲しいものです……。
まとめ
「書家」と「ホテルマン」の仕事がリアルに感じられ、専門的なこともこちらが読みやすいよう分かりやすく話に取り入れ物語を成立させていく工夫。登場人物一人ひとりの思いが伝わるような工夫。読んでいる最中、綺麗に物語が流れ一つの結末に繋がる。王道ながらも作者のこだわりが現れる素敵な作品でした。
なにより「笑い」と「シリアス」のバランスが丁度良い。
題名通り、美しいゆらめき。そしてこだわりが光るかがやき。これまで以上に「書」を五感で感じ取りたいと思わせてくれました。
この作品はamazonのAudibleで全て聴くことができるのでそちらも是非🙌🏻
騒がしい読者の独り言を見てくださりありがとうございました🙏🏻最後に一番お気に入りの言葉を。
「また、来いや」
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