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【蒸留日記 vol.101】キタコブシの落花を蒸留してみる!
さてさて蒸留マガジンがvolume100に到達したのもつかの間、蒸留シーズンはもう到来しているので続々と行きますよ〜ォ!
さてさて、記事執筆している本日は5/15なのですが、今回のテーマは桜前線が札幌に到来する直前 4/28のお話。。。
北海道では、桜が咲く一足前に花を咲かせる"とある樹木"がおります。
え!桜が春一番じゃないの!?!?!?
桜より早くに開花する樹木なんて普通に生活してると少々驚きっすよね。
その名をキタコブシ(Magnolia kobus var. borealis)。
本州ではコブシやらモクレンと呼ばれるモクレン科樹木の1種です。
その北方種といえばよいかな?
北海道の森の中にもよく居てらっしゃるホオノキ(Magnolia obovata)とも親戚関係の樹木。
学名を見て勘の良い方はお気づきでしょうが、、、
「マグノリア」どこかで聞いたことある方いらっしゃるんじゃないでしょうか。
そうです、香水のジャンルでマグノリアという香りのジャンルがありますよね。アイツの仲間植物なんですキタコブシ。
ということは香料植物なんですな〜〜〜!!
とは言っても、キタコブシはわざわざラベンダーやライラックのように花が手で収穫しやすいところに咲く香料作物ではありません。
普通に森の中に高木として育つコブシの仲間なのでまぁ早春の開花時期に切り倒しでもしなければキタコブシの花はまず手に入りません。
そこでエフゲニーマエダはどう考えたかというと、、、
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咲き終わった後の落ちた花びら拾えばゴミだし拾い放題じゃん!!!!!
ということに気づいてしまったのです。笑
さて今回のサブテーマは『ゴミからサステナブルに高級香料を得る』です。
■キタコブシ(Magnolia kobus var. borealis)の簡単なプロフィール!
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北海道の街路樹として多く利用され、春先の景色を飾る
雪が溶けまだ一面茶色の世界に、桜が咲く時期・桜前線の到来よりも先に白い花を咲かせて野山を彩る広葉樹、それがキタコブシ。
(特に街路樹に用いられるものは多花性の品種?が多い気がする…)
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開花時期は桜より一足早い
ほんと真っ茶色な山の中にちらほら樹冠が白く染まる木が現れるので、かなり目立ちます。もしかするとそれがコブシ属樹木の生存戦略なのかも。
春到来のイメージに確固たる地位を誇っているのが「桜」だと思うんですが、エフゲニーマエダ的にはキタコブシ。
彼らが花を咲かせ始めると春本番スタートといったイメージなんですよね。
そういえば出身小学校にデカすぎて傾くくらいの大木キタコブシがあったんですが、デカデカと存在感を放っていたのにも関わらず今までキタコブシの開花を見たことがなかったんですよ。
なので春先の白い満開は意外と新鮮なのです。。。
僕は北海道民なので本州の森林事情には詳しくないのですが、日本に育つモクレン科樹木を知っている限りで列挙すると、
コブシ、ニオイコブシ、キタコブシ、ホオノキなんかが挙がります。
庭木・庭園樹として利用されているものを加えるとハクモクレン、紫木蓮がプラスされますでしょうか。
実際、日本国内にモクレン科樹木が何種類育っているのかは現状わかりませぬ。(Google先生によると8種国内にいるそうです)
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大人の手…ほどではないが小学生の手のひらくらいの大きな花をつける。
バイオマス量どうなってんだ…
キタコブシやホオノキが属するモクレン科樹木は比較的原始的な形態をしている樹木とされています。花の構造が原始的らしい?のですね。
「花」と聞くと"可憐で小ぶりな花々"を想像しますが、モクレン科植物の花はどれも遠慮なくデカい。小さい子が見たら恐らく引くくらいにはデカいのです。
それも葉っぱと同じくらいのサイズの花びらをつけるので、おそらく葉っぱと花びらの機能分化があんま進んでいないことによるんじゃないだろうか〜と勝手に予想しています。
(案外この花びらの大きさが蒸留をいくらかラクにする方向に効くことに)
香料として有名な「マグノリア」
エッセンシャルオイル…が抽出されてるのかはわかりませんが、香料が採られているモクレン属植物はというと、東南アジア原産のオレンジ色の花を咲かせるチャンパカ/和名:金厚木(Magnolia champaca)と呼ばれる樹木から採油されるそうな。その交配品種ギンコウボクも同様に香料採取が行われているようです。
特に花?の香りが強いそうです。より精油を含んでいるのかな?
本州ではニオイコブシ(Magnolia salicifolia)から精油が採られる
日本国内でも同マグノリア属植物から精油抽出が行われているようなんですな!
別名タムシバ?とも呼ばれるコブシの近縁樹木で、名の通りコブシ類縁樹木の中でも香りが強いそうで、精油分もひときわ多く含まれているんでしょうかね?
抽出部位はなんと枝葉など木部がメインのようで、水蒸気蒸留法で精油が採られているもよう。しっかし驚くのはその精油の値段…
と!
本州でもコブシの仲間から精油が採られていることがわかったので、今開花期が来ているキタコブシの落花蒸留も夢じゃねぇな…って思いつきのもと、コブシ素材集めへ出てみることにしました!
■素材集め…咲き終わるのを待てばエエじゃない!
さてさて4月も末になりキタコブシの開花期は訪れたけれども、満開期だと対象素材は未だ手の届かぬ木の上。
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木の上には白い花がこれでもかというばかり咲いている
しかし花はいつか咲き終わり、散りゆくもの。。。
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季節感のやや早い子を探していると居ました居ました!
散り時期が来ているキタコブシもちらほら現れているよう!
生き物にはやはり"個体差"が生じるもんですな。
花を満開に咲かせている街路樹を切るワケには到底いかないので、今回はこの散って落ちた花びらを素材として回収します!!
落ち花は時期が来れば拾い放題
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散り落ちて間もないものは傷みも少ない新鮮な状態で拾える
おそらくその日のうちに風に吹かれて散り落ちたキタコブシの花びらはまだ新鮮味を保って白い状態のまま。今回はこの花びらを重点的に拾い集めます。
キタコブシの花びらは片面の根元が鮮やかなピンク色をしているのでずっと拾っていると渡島名産のホッキ貝を拾い集めてるような妙な感覚に…
桜の花びらと同様、ナマ素材なので散り落ちてから1、2日と経つと茶色く萎れてしまうようなんですよ。そうなってしまうと新鮮な精油が採れる気がしないので多少の傷みがあっても白い状態のものを拾い集めます。
拾ってる最中にも風が吹けば何枚かパサパサと落ちてくるので、数本の街路樹の下をウロウロするような収穫風景に。
毎年毎年、樹冠を真っ白に染めた花びらが全て道路に落ちて茶色い自然ゴミに成り変わると考えると、「ゴミを減らす」行為ともとれるコブシの花びら集め。秋の銀杏拾いと同様に悪い気はしません。
この時点ではまだ精油が採れるかどうかは分かってませんが、もし精油が採れるのだとしたらコブシの街路樹が並ぶ道路は金鉱脈みたいなもんですよね。。。(コブシ精油の相場から考えると)
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匂いはぜんぜん強くないのでこの時点では精油が採れるとは思っていない
まだ満開シーズンで咲き終わりではないんでしょうが、街路樹という何本もキタコブシが並んだ条件地なので案外量が拾えてしまっている図。
ある種の都市鉱山みたいな感覚に思えてきたエフゲニーマエダ氏。
新鮮な花を数枚拾ってみると、強くは香りませんがほんのりとマンゴー?みたいな南国フルーツを感じさせる香りがうっすら香ります。
収穫バケツの中はもうすんごいフルーティな香りです。
対して香水ジャンルにあるマグノリアノートとはエラくかけ離れた香りがしてます。香水のあのマグノリアか…?と疑問に思うくらいには。
だいたい2時間くらい夜のコブシ並木をウロウロしましたかね?
夜だと花びらが白く目立つので案外拾いやすかったと思います。
太陽が照りつける日中に拾い集めると、陽に照らされてすぐに萎れる!ってことも避けられますしね。
■蒸留準備!
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桜も色付いてきたしキタコブシ散り始めてるかも!!!と憶測だけで家を飛び出してきたんですが、案外バケツの半分ほど拾えてしまいました(笑)
キタコブシの花びらは、おいらが蒸留経験してきた花素材のなかではかなりデカいほう。なのでそれなりの物量を得ることができちゃいます。ました。
まずは重量計測をしてみます。
キタコブシが植えられてる街路樹の下を約2時間さまよって割と新鮮な花びらを調達。まだ満開シーズンの木がほとんどで散りシーズンではなかったのでエライ時間がかかりました。大変でした…
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キタコブシの花びらは、普段私たちが見慣れている植物の花びらとはやや異なっていて、サイズが葉っぱのように大きく、そして肉厚なのです。
そのため蒸気が表面を撫でて出ていくのを抑えるためにできる限り手で細かくちぎって蒸留釜に収めました。
キタコブシの花びらは手で裂いても葉っぱ素材のように、特段青臭い匂いはしてこなかったので素材を粉砕しても精油の香り品質に大きなマイナス影響は与えないハズです。
蒸留素材はあくまで「植物の花びら」なのですが、キタコブシもといモクレン科植物の花びらは肉厚な素材であるので、蒸留時間は念のため長く見て2時間としました。
■蒸留結果は…!?
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2時間終了したところでオイルセパレータの液面を見ると油層らしきものが見当たらなかったので、なんだぁ精油が採れるのは本州のニオイコブシ(M. salicifolia)だけの話かぁ〜と諦めムードで蒸留水を抜いていると、、、
すごく透き通った精油のオイル層が出現…
なんとキタコブシの散った花びら(ゴミ)から精油が採れてしまいました…w
まさか本当に採れるとは思っておらず、採れても木の上で咲く新鮮な花から採れるものだと思い込んでいたので、春一番の大感動&大発見でした!
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見てくださいよ、蒸留水となんら色味が変わらないくらい透明な精油がわずかに溜まってます…
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909グラムの花びらから蒸留器を2時間回してわずか1mLの精油が得られました。
多分、本州のニオイコブシ蒸留とは素材部位や収穫方法がめっきり違うのでなんともいえませんが、収率の体感値からすると希少な精油であることには変わりなさそうです。。。
1.収油率
とりあえず収油率計算やってみます。
抽出量[ 1ml ]÷ 素材重量[ 909g ]x 100 = 0.110%
2-1.キタコブシ芳香蒸留水の香り
これまた面白いことがわかりました。
まずキタコブシ芳香蒸留水/フローラルウォーターの香りなんですが、、、
花びらのフルーティな香りとは打って変わって若干スパイシーさを感じさせる松/Pine系の香りが…!!!
アカマツ葉っぱ蒸留とかやってた時の香りが記憶とともに蘇る香り!
これは意外な結果でした!もしやピネンをそれなりに持ってるのか…?と勘ぐりが加速しますw
2-2.キタコブシ精油の香り
驚くのも芳香蒸留水のみならず、、、肝心の精油はというと、
初手オレンジ、八朔あたりの甘みを含んだ柑橘系の香りを思わせる香りが香ったのち、マツ精油っぽい香りにだんだんと変化してくるのです…
おもしろい、おもしろいぞキタコブシ精油…!!!
■総評!
今回のキタコブシ蒸留では、桜が散るのと同様に開花が終わって散り落ちた花びらを集めてそれを蒸留してみるという大変エコで非破壊的な蒸留方法をとりました。我ながら良い方法だと思っています。
まさか地べたに散り落ちたゴミから高級香料が採れてしまうなんてね…うん。
で、本州でのコブシ系の蒸留は枝や葉っぱなどを素材として扱っているようなのですが、今回平成林業。では花びら/Petalsという時期限定の貴重素材を蒸留してみるという未知をやってのけました。
花びらをひたすら集めてる時感じたほんのり甘い香りとは裏腹に、美味しいシトラス系の香りが芳る精油を得られ、、、
結果、おもろい香りの精油が採れたのはなかなか貴重な見聞なんじゃないかなーとすら思ってマス!
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