ミクロでラベンダー精油をみてみよーう!
最近、思い立ってウチで収穫・収蔵しているラベンダーのポプリを無印の小分けケースに閉じ込めてラベンダーサンプルを作ったんですよ。
歩くラベンダー博物館になってやろう!と思い立って。。。
まぁこのとき用意したサンプルたちなんですけど、、、
今まではドライフラワーにしたりとか、花穂の状態で試験管に閉じ込めて暗所で保管する以外にまじまじとラベンダーを観察する機会って意外となかったんですよねおいら氏。
冬場はラベンダーが外で見られないので文献漁りを中心にラベ活してたんです。
(ラベ活なんて言葉生み出したよこの人!)
でドライだけど、ポプリそれぞれの色見比べられて楽しいし、匂いも嗅ぎ比べられて2倍楽しいよね〜というオモチャが手に入ったわけなんですが、、、
そんなオモチャをコロコロやって(3才児レベル)遊んでると、"あること"に気付いたんですよ。
ラベンダー、よくみるとキラキラしてんな〜…
これが今回の記事テーマの経緯ですbb
ここ半年以内に学んだ、割と直近・ホヤホヤ知識なのですが、ラベンダーの精油がどこにいるのかを、海外の資料ページから学び得たんですよ。
エフゲニーマエダ氏、今年の2月半ばまでラベンダーの紫色のモコモコ毛の英語ワードを全く知らず、、、
ラベンダー園芸の都であるロンドン大学に在籍なさってた知り合いの方に教えてもらったところ、検索スキルが向上して様々な英語資料を知り得た経緯があるんです。
いやぁほんと英語句ひとつを教えてくださった方には偉大なる感謝。。。
そんなこんなで、ラベンダーの紫色のつぶつぶ(業界用語でポプリという)をよーーーく凝視してみると、見えるんです。
キラキラしてるのが見えるんです。見えますよね?
この黄金色にキラキラしたミクロな物体こそ、ラベンダーオイル・精油が閉じ込められている"線毛組織=盾状線毛"なんですナ!
うまーく光にかざしてそれぞれラベンダー品種のポプリを観察してみると、もしかするとそのラベンダー品種が持っている精油の多さや良し悪し、そのほか情報が見えてくるんじゃね〜〜〜!?
という思いつきで、いざ、やっていってみましょう…!
●さて、手持ちのラベンダー品種をミクロに観察してみよーう!
①北海道ラベンダーグループ
北海道のラベンダーの歴史は確か1937年からスタートしていて、産業としては1950~70年代にかけて最盛期を迎えていて、観光資源としては2000年代以降という区分がありますね。
北海道は日本の中でもKyoto! Okinawa! Hokkaido!と世界から注目されるプリフェクチャーなのでもっとラベンダーを推していい気がする。
イギリスでは紫色したラベンダージンが作られてたり、タスマニア島やニュージーランドではラベンダーのアイスが売られてたり、アメリカやイギリスではラベンダー農園の数がべらぼうに多かったり。
もっと日本もラベンダー売り出して国際競争しなよって思ってるんですけど、北海道人はあまり起業家出ないらしいですからね。。。(やーい経営ヘタクソな北海道人めー)
開花前でも花の色が濃いために北海道で植栽数堂々のナンバーワンを誇っている3号濃紫(あるいは早咲き3号、早咲濃紫とも)の拡大写真でっす!
エフゲニーマエダ自身ラベンダーといえばで思い浮かぶなじみ品種であり、我が農園での植栽年数も一番長い長老的存在な3号濃紫ラベンダー。
ドライになってもモコモコ具合といいますか、紫色のフサフサ具合を失わないThe濃色ラベンダーという存在感を放っています。
しかし、モコモコすぎるせいか黄金色に輝く精油の線毛はあんまり見えていないようです。
それもそのはず、北海道のラベンダー歴史として、この3号濃紫は精油生産の優良品種には合格できていない不遇な子なんです。
見ての通り、精油を内包している線毛組織の数が少ないから精油生産の優良品種には選ばれなかったんでしょうかね?
3号濃紫は1号ようていから生まれた品種と言われていますが、このナナ・ナリサワはさらに3号濃紫から生まれた長穂品種なんです。(姿は4号オカムラサキ に似る)
ラベンダー史的にはごく近年、英国のミスキャサリンと同年代に生まれた品種なんですよ〜!
けど一つ上の3号濃紫と比べると結構ポプリの様子は違いますよね。
そもそもめちゃくちゃキラキラしてて黄金色に輝く線毛がめちゃくちゃ多い。
ポプリの溝部分めちゃくちゃキラキラしてますやん!!!
こいつらが精油のいわゆる正体です。
生まれは比布町の成沢農園さんとされてます。
成沢さんが3号濃紫の苗木を栽培していると、畑の中で何やらひとつだけ花穂の長い変異枝をみっけたそう。
こいつは新品種にできるじゃねぇか〜!とその枝を挿し穂して増やし、品種固定したものがこのナナ・ナリサワってワケだ!
(ラベンダーの増殖、簡単すぎるだろ!)
ナナ・ナリサワは名前にNanaが付いていて、植物業界では小型・矮性を意味する語句。
草丈があまり大きくならない3号濃紫からその遺伝を引き継いでおり、しかしながら花穂は濃紫と異なって長く伸びるという特徴をもっています。
けどドライポプリを観察すると線毛数がめちゃくちゃ多いみたいだけど、君本当に3号濃紫から生まれた子なのかい、、、??
名前からは脈絡が感じられないけれど曽田香料が監督していた札幌市南沢藻岩農場にて、のちに4号オカムラサキと命名される株列の中にひときわ花色の濃いオカムラサキの変異株が発見された。
しかし1960年代当時は精油の品質向上が研究目標だった時代で、園芸鑑賞要素としては意味がない時代でもあったために、農場の端っこに避けられるだけの扱いだった。
南沢農場が閉鎖されるときに農場関係者が小樽の高橋農園さんに株を預け、それが現在までに生き長らえ、バイオレットメモリーと名付けられて苗がホームセンターで売られるに至っている。だそうだ。
ということで、ファーム富田さんが精を尽くして栽培保存している4号オカムラサキを親に持つか定かではないが、親子品種であるため精油の品質・抽出量は多いはずのバイオレットメモリー。
しかしそこまでキラキラしている様子がない。(親はオイル量多いはずじゃ…)
そもそもポプリの色が濃い=モコモコしているためにポプリの溝に多く点在する線毛組織が見えにくいのかもしれない。
②ラベンダーの色が濃いグループ
ラベンダーの色が濃い!というと、つまるところラベンダーのポプリを覆うtrichorm=毛状線毛が多いかどうかによる場合がほとんどなのです。
しかしモコモコしまくってるのには何か理由があるんじゃね?別にモコモコしてない品種もあるじゃんね?といろいろ思ってたりするおいらです。
アメリカとイギリスの大きく有名なラベンダー園ではほぼ確実に栽培されている、わりと仕事ができる子なラベンダー品種フォルゲイト。
アメリカはシアトル郊外のウィドビー島にあるウィング農園というところで主力栽培されており、イギリスではロンドン郊外のメイフィールドラベンダー園でメイレット、グロッソとともに主力栽培されている。
ラベンダーの産業利用の考え方が若干異なってくる2国でも決まって料理に使われている品種としてエフゲニーマエダ個人的には有名な品種。
けども日本・北海道でフォルゲイトを育てると、ぱっと見姿が3号濃紫と瓜二つでまったく区別がつかない。
フォルゲイトはドライにするとやや青みが深まる特徴があるのでちゃんと分けて保管しておくと区別つくかな〜というぐらい瓜二つ。
まぁ、画像をみてもモコモコすぎて黄金色に輝くツブツブはなかなか見えないですね。
苗木を買って植えた当初から、ラベンダーの香りがフルーツみたいに甘い!と定評のあるアヴィニョン・アーリーブルー。
しかし来歴を調べてもあまり情報は出てこず、EU圏の園芸サイトではちょくちょく栽培データがあるくらいなのでごく最近世に放たれた新品種なんだと思う。
この頃よくホームセンターで販売元によっては「アーリーブルー」と「アヴィニョン・アーリーブルー」という微妙に異なる表記名で販売されているのを目にする。
けど特徴的に甘い香りと花穂の形は共通なので同じ品種なんだと思う。
アーリーブルーも3号濃紫同様、モコモコしていて線毛組織のキラキラはあまり観察できない。
香りもめちゃ甘ったるいからそこまで精油は持ってないのかな?とか勝手に思っている。
ラベンダーヒストリー的にはまったく資料がなく、EU圏のポーランドやハンガリーなどの園芸サイトでHITするので、東欧で作られた園芸品種なんじゃないかなぁ〜と思っている、今まで見た中でもっとも色の濃いラベンダー。
個人的にこの品種はラベンダー染め用に栽培していくつもりで所有・栽培している。
香りはアヴィニョン・アーリーブルーに似ている。
色が濃いラベンダーの中では、ポプリの付け根らへんに黄金色のプツプツが細々見受けられるので、線毛組織は小さいながらもそれなりに精油は抱えているラベンダーなんじゃないかなぁと見当つけている。
③ラベンダーの色が薄いグループ
ベストシーズンにファーム富田など富良野エリアを訪れた人は、ラベンダーには白いタイプもいる!と知っているかもしれません。
そうなんです、紫色が常なイメージのラベンダーは薄色タイプ、ピンクタイプ、そして白タイプが存在しているんですね。
世界的には1600年代には白いラベンダー品種が確立されていたようで、それが有名な白ラベンダー品種のラベンダーアルバだそう。
以降、実に雑多に品種改良が繰り返されてきました。
IreneDoyleをイレーネドイルと読むかアイリーヌドエルと読むかで二分されている、1983年アメリカ生まれのラベンダー。
ガン医療ドクターの片手趣味で生み出されたラベンダーであることで有名です。
ポプリの色より開花した花びらの色の方が濃く、花期が来ると一層紫色の鮮やかさが増す魅力のある鑑賞ラベンダー。
ポプリの詳細画像をみてみてわかるように、めちゃくちゃ線毛がキラキラして見えています。
黄金色にキラキラ輝いているのが精油を持っている盾状線毛ですね。
イレーネドイルの香りは、柑橘系のアロマのベクトルが強いらしく、個性的な香りを持つ精油だそうです。
今後とも栽培数の拡充に努めていきたい考えのラベンダー品種です。
ブルーマウンテンは海外の資料によると、ニュージーランド生まれの品種だそうです。
しかしニュージーランドの誰・どこ組織が作ったかは知られておらず、ブルーマウンテンと呼ばれる品種がニュージーランドのセントラルオタゴという都市でレポートされたそう。
育ててみると、3号濃紫のようにポプリ含めて全体が紫色に濃いのかと思いきや、花びらだけが色が濃い!という特徴であった。
なので薄色ラベンダーに分類しています。
ブルーマウンテンのポプリは薄毛な分、ポプリの溝が見えやすいので若干線毛組織がキラキラしてますけど、イレーネドイルなんかに比べるとキラキラ具合はぜんぜん少ないですよね。
実際のところ、ブルーマウンテンの生花もそこまで強い香りはしません。
持ってる精油の量は案外少ないのかも。。。
フォーボーストームはニュージーランドで作出されたと情報がある薄色ラベンダーです。
北海道で育てると、2号はなもいわ(未収穫)と外見が似ている(と思っている)ラベンダーです。
ポプリの詳細画像ではやはり溝に沿ってキラキラしていますね。
しかしそこまで密集しているわけでもないもよう。
特段多くのラベンダー精油が抽出できそう!というわけではなさそうですね。
ミスキャサリンは近年生み出されたピンクラベンダーです。
生まれはイギリスの王室に由緒あるノーフォークガーデンで1992年に作られ、英国王立園芸協会(RHS)のトーナメントに2006年入賞した来歴をもつ。
さすがは入賞記録をもつ園芸用ラベンダー品種で、ピンクラベンダーでありながらも大柄に育ち、してなお早咲き系であるという特徴を持っています。
ポプリ自体はかなりモコモコしているのですが、ピンク色・アルビノ的であり、ポプリのスキン(地肌)が見えています。
なので毛状線毛の奥にキラキラした微細な盾状線毛がちらほら見えていますね。
ミスキャサリンのおもしろいところが、時折紫色のラベンダーに先祖返りを起こした部分が見つかる点です。
上記のリンクは2021年のミスキャサリン収穫時に見つかった先祖返り花穂。
ピンクラベンダーは紫色ラベンダーの異常個体を安定品種として改良した経緯が伺えるのがポイントですね。
④ハイブリッド品種ことラバンジングループ
ラバンジン ラベンダーの面々を紹介する一足前に、この子を紹介しておきます。
ラバンジン ラベンダーは①②③で紹介したangustifolia系統=コモンラベンダー系統とはまったく別の系統種のラベンダーなんです。
ポルトガルやスペインや南フランスの地中海沿岸などの暑い乾燥帯に主に分布しているラベンダーです。
自然界でコモンラベンダー系統とこのヒロハラベンダー系統が交雑したハイブリッド種が発見され、栽培適地が広く、精油の採れる量も多かったことからグロッソやスーパーなど多くの品種が作出されるまでになっています。
それらラバンジンラベンダーの交配基となっている系統種です。
香りはよりローズマリーのようにスースーした成分が強く、コモンラベンダーはほぼ持たない、樟脳・Camphorや竜脳・Borneolという虫を寄せ付けない成分を精油に10%以上も持っているためです。
そんなヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)のポプリを拡大してみると、全くと言っていいほど毛状線毛をもっていません。
そしてポプリの溝にはそこまで多くはないものの、黄金色にキラキラした盾状線毛をもっているのがわかります。
ヒロハラベンダーは、コモンラベンダーと同等かそれ以上の精油含有量であり、たくさん精油が採れるそうです。
世界で最も栽培され、精油が生産されているラバンジンラベンダーの代表品種で有名なこの品種グロッソ。
品種名にこの品種を開発したピエールグロッソさんの名前が冠されるほど優秀であると評価されるハイブリッドラベンダーで、耐病性が強いことで有名です。
またヒロハラベンダーの性格も受け継ぎ、わりと暑い地方でも栽培が可能です。それゆえに世界で最も栽培面積が大きいとされます。
1900年代よりフランスで産業生産が開始されたラベンダーオイルですが、同一の野生ラベンダーを大量にプランテーション栽培していると、害虫や感染症の被害を度々受けることが栽培上の課題でした。
そんな課題を解決し、ラベンダー精油の生産性を向上させる役割を担ったのがフランス人のピエールグロッソ氏です。
1972年にこのラバンジン・グロッソは開発されたと数々の文献に記載があります。
ラバンジン・グロッソはそもそもがコモンラベンダーと同様に色の濃い、観賞用としても美しいラベンダーで紫のモコモコが濃い品種。
なのでわかりにくいですが、ポプリを光にかざすと小さくもキラキラしているのがわかります。
ラバンジン・スーパーは1956年に精油産業用品種の主力であったアブリアルに取って代わられた次世代品種でした。
1920年代に産業用化されたアブリアルよりは耐病性が強い改良品種であったため、本種がフランスにて1950年代以降に栽培開始された歴史があります。
1950年代は日本の倶知安・札幌・富良野・北見でもラベンダーの本格栽培がスタートした年代であり、フランスではラバンジン・スーパーでの精油生産が盛んとなるとともに、このスーパーもニュージーランドやアメリカ、オーストラリアなど世界各国に持ち込まれた年代でした。
ポプリの見た目はそこまで色は濃くありません。
よく見てみると、しっかりと溝の奥がキラキラしているのがわかります。
グロッソやヒロハラベンダーよりは精油含有量は少ないのかもしれません。
香りはグロッソに比べて甘み成分が少なく、より薬品っぽい樟脳感が強いアロマです。(エフゲニーマエダ所有のL.x.'Super')
イギリスのダウンデリーナーサリーでは、グロスブルーはフランスで発見され英国に持ち込まれたという記述があります。
しかし詳細な年代や起源のわかる資料はあまり多くはないようです。
グロスブルーはコモンラベンダーの3号濃紫と同じレベルで紫色が濃い品種です。
グロスブルーはドライフラワーにするとなぜか爽快な樟脳の香りが薄れ、甘くフルーティな香りが立ち始める、ラバンジンらしくない、おもしろいラベンダー品種です。
しかし精油量が少ないか?というわけでもなさそうで、ポプリの隅々にキラキラと黄金色に輝く精油を持った線毛組織が観察できます。
ラバンジンの中でも特に甘い香りの精油が作れるんじゃないか?と個人的に期待を寄せている品種だったりします。
はい!!
たくさんのラベンダー品種のポプリを紹介してみました!
おそらくこの記事を読んでみて、ラベンダー精油が作られる精油がどこに隠れているのかが学べたと思います!(ありがとうと言ってね!)
ここ最近まで、ラベンダーの匂い袋・サシェって収穫から時間が経つにつれて香り薄まるんじゃねーか〜〜〜とバカにしていた面があったのですが、、、
ラベンダーそもそもの構造を理解すると、どれだけ時間たってもポプリを揉み込むだけでしっかり香りが充満するということがわかりますね!
サシェってすげぇんだ!
というように、何かと細かく観察してみるというのも新たな発見が山ほど得られるので大事なんだなぁ〜と思うエフゲニーマエダでした!
もしよかったら下記リンクのラベンダーパウダーを買って、エフゲニーマエダのラベンダー製作を応援してね!
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