【蒸留日記 vol.141】夏季の栽培セイヨウノコギリソウ蒸留。
こんにちは、北海道で青い植物オイルの研究やってますエフゲニーマエダですどうも!
本稿と実際の蒸留日時はかなりズレてますが、次に投稿するvolume142の晩秋蒸留編との前後関係で今に投稿していまっす!
まずはウシアブが飛び交う噛み虫襲撃のえげつない夏間に収穫蒸留した回をお送りいたしまっす!
■Achillea millefolium栽培の試み。
この内容は裏庭ハーブ園開拓の発起記事ともかぶるのですが、数年前より耕作放棄され雑草ランドと化していた裏庭をどうにかして再活用を図り、土地を健全維持したいと考えていました。
ラベンダー畑としての活用案もあったのですが、山あいで日照が少なく湿気も多い土地だったのでラベンダー栽培には向かないだろうとしてラベンダー以外の作物での利用を模索していました。
そこで北海道で野生化・雑草化している外来種ハーブのひとつセイヨウノコギリソウが、このようなへんぴな土地でも生育できることを知り、たいへん魅力的な青いエッセンシャルオイルの生産も可能であることからこの研究・栽培地として利用していくことに決定し、今に至る運びです。
当初は北海道の田舎のあちこちに生育している野生化したセイヨウノコギリソウを引っこ抜いたりタネを取ってきて苗を作ってそれを植える予定だったのですが、各国薬学研究の最新論文を追っていくと各国が青色の濃いヤロウ精油の生産を目指している動向を掴みました。
エフゲニーマエダもご多聞に漏れず、世界的にセイヨウノコギリソウの青色が最も濃いとされるドイツからセイヨウノコギリソウの種子を購入し、それを栽培することとしたのです。
■Material & Method
ラベンダーの蒸留がひと段落ついた頃合い、6/6に畝へ移植した10数株あまりの国内販売'Proa'株が真っ白い房を広げて満開を迎えてました。
(エフゲニーマエダがドイツより種子輸入し実生栽培した個体とは異なる)
北海道の自然環境に帰化生育するセイヨウノコギリソウら本来の開花時期(6月中旬)ではありませんが、収穫段階としては同じなのでこの状態で収穫します。
ハーブ園としてはまた生産量が充実していないので、蒸留方法は茎や葉っぱを含めた全草蒸留とすることに決定しました。
▶︎収穫のようす。
わが園初の栽培セイヨウノコギリソウ収穫のビフォーアフター。
今までは風衝草原に生育するA.millefoliumの野生帰化個体のみを蒸留対象にしていたのですが、裏庭ハーブ園は山かげになっている土地で日陰になりやすいためか、栽培個体は草丈の巨大化傾向がみられました。
巨大化の理由として、他に考えられる理由は土壌栄養が豊富(旧畑のため)であるためかとも考えられます。
なので日照量によって草丈が上下しているかの真偽はわかりません。
山のように収穫できました。
畝への移植・定植から数ヶ月目の個体ばかりなのでなかなか草丈が揃っていませんね。
明らかに蒸留1回で済ませられる物量ではないので、2回に分けて先に花部を集中的に蒸留前処理しました。
蒸留1本目の素材重量は差し引き2455グラム。
蒸留2本目の素材重量は差し引き932グラム。
今回のA. millefolium cv 'Proa'の全素材重量は3387グラムとなりました!
蒸留時間は2時間30分としました!
■Result
自然生育するセイヨウノコギリソウから得られる精油と比べても容器壁面に残るインクのように濃い精油から高いカマズレン濃度が伺い知れるヤロウ精油が得られました。
やはり、ドイツの薬用植物マートから購入した、カマズレンの濃さにお墨付きの品種であることが(見た目では)証明されたかと思います!
1.EO Yield
ま、全草蒸留なので花部のみ蒸留の収油率とは大きく異なって低く出ますわな…花部のみだとだいたい0.3~4%の収率となってます。
まぁ初回収穫なので収油率が安定しないのはしゃーなしです!
大事なのは青色の濃さ!カマズレン濃度!
■Discussion
結果的に、ウチの裏庭で栽培しているセイヨウノコギリソウは青色の濃い精油を産する品種であることが判明しました!
これにより昨年より目指していた目標のひとつを無事クリアできたものと思います!
続いては安定的に多くの花を咲かせ、生産効率よく精油を得るために栽培軌道に載せることでしょうか。
ここを来年度2025年で目指していきたい考えです。
引き続き野生個体群の精油品質の調査も続けてやっていきます。
▶︎自然帰化個体と栽培個体との形態差
上の収穫のようす項でも少し触れたのですが、北海道の田園環境に帰化したものと比べると栽培したものは巨大化傾向がみられたのです。
明確な生育条件の違いは、「日照条件」か「生育土壌」とそれによる「土壌栄養条件」が考えられます。
念のために葉っぱの特徴も撮影しておきました。硬めな触感でした。
これら巨大な花茎をつけたcv 'Proa'と思われる株はその場に残しておいたので、経年観察して変化をみてみたいと思います。