#006 想像してごらん。無意識データとアルゴリズムがあるだけさ。
いや〜。分かりました!
分かりましたよ!
ずっと思っていたんです。
「成田悠輔先生って何者? いったい本業は何が専門の先生なんだろう?」と。
コメンテーター?
YouTuber?
イエール大学の助教授?
データサイエンティスト?
この本を読んで分かりました。
成田先生は「革命思想家」だったんだと。
本書は「民主主義の劣化」に対する認識からスタートする。
そしてそれは日本だけの状況ではない。
ネットの拡散は扇動やフェイクニュース、陰謀論を生みだし、選挙制度を侵食している。そして民主主義的な国ほど、経済成長が低迷し続けている。
重症の民主主義が再生するために何が必要だろうか。
成田先生は3つの処方箋を提示する。
1 民主主義との闘争
2 民主主義からの逃走
3 まだ見ぬ民主主義の構想
詳細は本書をぜひ読んでいただきたいが、簡単にそれぞれを説明すると以下になる。
「闘争」とは、今の民主主義や選挙制度の調整や改良を行うアプローチ。
「逃走」とは、新国家群が企業のように競争し、政治制度を商品やサービスのように呈示して人々を誘致する形。
しかしその二つは民主主義の問題を根本的には解決しない。
成田先生は、「構想」=民主主義の再発明 を提案する。
それが「無意識データ民主主義」の構想である。
「無意識データ民主主義」は人々の声や表情を常にモニターするのだ。
意識的に意見を表明する必要はないらしい。僕らはただ日々を感動と共に暮らせば良い。
成田先生はこの「無意識データ民主主義」の構想はSFではないという。
構想というより予測である、という。
すごいぶっとんだ構想だなと思う。
AIなりディープラーニングなりの進化によってネットの膨大なビッグデータが丸ごと活用できるようなアルゴリズムが実現する時代が来るのなら、こういう民主主義もありかも知れないと思わせる。
これは要するに「反実仮想」ということなのだろう。
「もし、選挙制度によらない民主主義があるとしたら」と思考実験をすると、人民の無意識からデータを集めてアルゴリズムによって勝手に社会の目的設定をしたり、政策立案をするというのはそんなに不合理な考えではない。
「選挙制度」を中途半端に改善するよりいっそのことぶっ壊してしまえば良い、というような思い切った発想をするところに成田先生の奇才ぶりが発揮されているように思う。
自分にはAIや情報技術の発展によって、こういう構想を本当に実現することができるのかを判断することはできない。実現するとして21世紀なのか、22世紀なのかを予想することもできない。
ただ、面白いのは成田先生のこの本を読むことによって、確実に頭の中に「無意識データ民主主義」という概念がしっかりと植え付けられてしまったということだ。思想や社会の構想だって立派な発明と呼べるのだ。
例えば、カール・マルクスの著した「資本論」が未来の共産主義社会のイメージを人々にもたらしたようにだ。実際に理想的な共産主義社会が実現できるかどうかの成否は別として、思想なり構想が、人々の頭の中に描く未来の社会のイメージとして時代を牽引していくということは十分にある。
成田先生の文章はレトリックに富んでいて面白い。様々な比喩がぽんぽんと飛び出してくる。その中で好きなフレーズがこれだ。
ネコの仮面が巫女ならば、アルゴリズムは「神」ということになる。
自分はこの「神託」の比喩表現に出くわして、ふっと未来、全く新しい文明を想像した。
あれだ。
ジョンレノンの「イマジン」みたいにだ。
想像してごらん。選挙制度のない民主主義を。
ネコの仮面を被ったアバターの巫女はいるけど宗教はない。
天国も地獄もなく。
独裁者も代議士もポピュリストもいない。
上にはただ空があって。クラウドがあるだけ。
モニターされた無意識データとアルゴリズムがあるだけさ。
人々は皆、今日を生きているだけなんだ。
…すみません。冗談です(笑)
でも、正直そういうイメージです。
22世紀の日本人は、すごおく原初的でデジタルな自然の中で動物のように日々を生きているのかも知れません。
終わり。
では、また!
こういう人に読んでもらいたい!
・成田悠輔先生の本業が何か知りたい人
・民主主義の現状を考えたい人
・近未来の国家や社会について考えたい人
・データサイエンス、AI、アルゴリズムについて考えたい人
・大学生は特に必読の書
今回の『22世紀の民主主義』もLectioの課題図書で読むことになりました🤗
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