「日本一心を揺るがす新聞の社説」 水谷もりひと
「みやざき中央新聞は、小さな小さな新聞ですが、読んでいると、何でか分からないけど、人生が豊かになるそんな情報をお届けしたいといつも思っています。」
「日本一心を揺るがす新聞の社説」 水谷もりひと
新聞を読むと、政治・経済・犯罪のニュース等、マイナスの情報ばかり目に飛び込んできます。
たしかに、たくさんの情報は頭に入ります。ですが、自分の感情や内面にとって辛いこともありますよね?
この本の見出しに
それは朝日でも毎日でも読売でもなかった
とあります。
みやざき中央新聞は、ミニコミ誌です。
一般誌とちがって、政治・経済・事件・事故といった暗いニュースは載っていません。
水谷もりひとさんは、娘さんの「保育園便り」で見たトルストイの言葉が「みやざき中央新聞」の原点になったと語っています。
どうでもよいこと。不必要なことをやたらにたくさん知るよりも、たとえ少しでも真によいこと、必要なことを知るほうがよい
そんな みやざき中央新聞の社説をまとめたものが、この本「日本一心を揺るがす新聞の社説」なんです。
この社説は
心に訴えかけられます。
震えます。
考えさせられます。
そして
読み終わったあと
あったか~い気持ちになります。
みやざき中央新聞は、小さな小さな新聞ですが、読んでいると、何でか分からないけど、人生が豊かになるそんな情報をお届けしたいといつも思っています。
僕は最初に載っていたこの話を読んでから、その絵本も読みました。それほど余韻が半端なく、感極まった話でした。
その話を。
牛を殺すときって、目があうそうなんです。
「いつかこの仕事を辞めよう」と思っていた食肉加工センターに勤めていた坂本さん。
ある日の夕方、牛を乗せた軽トラックがセンターにやってきました。
しかし
いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。
すると
「みいちゃん、ごめんねぇ。
みいちゃん、ごめんねぇ・・・」
と女の子の声が聞こえてきました。
牛のお腹をさすりながら、
「みいちゃん、ごめんねぇ、
みいちゃん、ごめんねぇ・・・」
と牛に語りかけています。
女の子のおじいちゃんが、坂本さんに頭を下げました。
「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。だげん、ずっとうちに置いとくつもりでした。
ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。明日はよろしくお願いします・・・」
「もうこの仕事を辞めよう」
と思った坂本さんは、家に帰って息子のしのぶ君に話します。
「明日の仕事も休もう」と。
すると
「やっぱりお父さんがしてやってよ。
心の無か人がしたら牛が苦しむけん」
としのぶ君は坂本さんに言いました。
翌日、しぶしぶ仕事場に行った坂本さん。
牛舎に入るとほかの牛と同じように、みいちゃんも角を下げて威嚇するポーズをとっています。
「みいちゃん、ごめんよう。
みいちゃんが肉にならんとみんなが困るけん。ごめんよう」
と坂本さんは、みいちゃんに言いました。
みいちゃんは、坂本さんに首をこすりつけてきました。
殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。
「じっとしとけよ、じっとしとけよ」
と坂本さんがみいちゃんに言いました。
みいちゃんは動かなくなりました。
次の瞬間、みいちゃんの目から大きな涙がこぼれ落ちた。
牛の涙を坂本さんは初めて見た。
(「いのちをいただく」西日本新聞社刊より)
この話の最後に、みやざき中央新聞はこう結んでいます。
そう、私たちはいのちを食べていた。
今日いただくいのちに・・・・・・合掌
命をいただくことの感謝。
あったかい人たちに感謝。
みやざき中央新聞に感謝。
【出典】
「日本一心を揺るがす新聞の社説」 水谷もりひと ごま書房新社