見出し画像

【絵本】「いのちのおはなし」 日野原重明 絵 村上康成

「いのち」は、だれにも平等にあります。1日1日の時間のなかに、いのちがあるのです。その時間をみんなのいのちとして、大切にしてほしいのです。」



「いのちのおはなし」 日野原重明 絵 村上康成


この絵本のあとがきに、日野原先生はこう書いています。


わたしは20年前に母校の神戸市立諏訪山小学校にいって、「いのち」についての最初の授業を行いました。


この絵本は、日野原先生が小学校で「いのち」の授業をしていて、その授業を読者が受けているように描かれています。


まずはじめに、日野原先生は元気にあいさつをして自己紹介をしました。


「わたしは病院で、いまも患者さんを診察している、現役の医師です。日野原重明といいます。いま、95歳です。」


95歳で医師(この本の出版当時)の日野原先生は、どんな「いのちのお話」をされるのでしょうか?


とても興味深くページをめくっていくと


そこに


一面、黒板の絵がでてきました。


日野原先生はチョークを手に取り、2ページまるごと見開きの黒板に書きはじめました。


左端に数字の「0」が書いてあり、ずーっと白い線が伸びてゆき、右端には数字の「100」と書かれています。


そして


授業を受けている小学生の年齢と、日野原先生の年齢が書かれました。


「今日は『いのち』について、おはなししたいと思います。」

「いのちってなんでしょう? そう、生きているということですね。では、生きているとは、どういうことだと思いますか?

そして、いのちはどこにあると思いますか?」


しばらく考えてみました。


・・・が思い浮かばない。


今まで、このような問いかけをされたことがありませんでした。


あなたなら、どう考えますか?


絵本は目がテンになったような、考えこんでいるような小学生の顔30人が描かれています。


すると


「答えを考えながら、まず、心臓の音をきいてみましょう。」


日野原先生は聴診器を何本も取り出し、子どもたちどうしで、心臓の音を聴く体験をさせるのです。


それから、心臓の音の話や役割を解説します。


見えないいのちが、形あるものとしてせまってくる瞬間を、ひとりひとりの感じ方で、うけとめているのです。


そして


日野原先生は、いのちについてこのように言いました。


「いのちは、きみたちのもっている時間だといえますよ。」


教室がざわめいてきました。


「どういうことなんだろう?」
って思ったんでしょうかね。


僕も、このあとの日野原先生の言葉で、「ああ、そうか!」って。


その言葉が


「いのちが自分のもっている時間だなんて、お医者さんがこんなことをいうのは、おかしいと思いますか。

でもちょっと考えてみてください。心臓は大切ですが、いのちそのものではありません。いのちを動かすためのモーターです。

心臓が止まったら、人間は死んでしまい、使える時間もなくなるのです。

いまきみたちは、どのようにでもつかえる自分の時間をもっている。時間をつかうことは、いのちをつかうことです。」


時間をつかうことは、いのちをつかうこと


日野原先生の子どもたちに送るメッセージは、これだったんですね。


「これから生きていく時間。それが、きみたちのいのちなんですよ。」


時間をどのように使うか!


これが「いのちをどのように使うか」ということに繋がるんですね。


人のために、忙しくても時間をかけているってことは、その人たちのためにいのちをかけているんだと。


とても素敵なことですよね。


あとがきには、さらに、このように書かれていました。


このことが、今、人が忘れかけている一番大切なことなんじゃないかと考えています。


「いのち」や、いのちをどうつかおうかと決める「こころ」は見えませんが、見えないものこそ大切にすべきです。

空気は見えませんが、人が生きるのに大切だということに似ています。


とっても深く、読んだ後、心がスッキリした絵本でした。



【出典】

「いのちのおはなし」 日野原重明 絵 村上康成 講談社


この記事が参加している募集

いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。