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映画評 変な家🇯🇵

(C)2024「変な家」製作委員会

変な間取りに隠された真実に迫るYouTube動画をもとに、動画制作者・雨穴自ら物語の続きを加えた同名原作小説を『ミックス。』『エイプリルフーズ』の石川淳一監督によって映画化。

オカルト専門の動画クリエイター・雨宮(間宮祥太朗)はマネージャーから、購入予定の一軒家の間取りについて不可解な点があると相談される。知人である設計士・栗原(佐藤二郎)に相談したところ、その家は数々の奇妙な違和感があり、恐ろしい仮説を導かれる。そんな中、その家のすぐ近くで死体遺棄事件が発生。事件と家との関連を疑う雨宮が一連の疑惑を動画にして投稿すると、その家に心当たりがあるという人物・宮江柚希(川栄李奈)から連絡が来る。

本作の評価は原作者である雨月氏が映画の宣伝を一切していない事実から察する通り、あまり芳しいものではないのが正直なところ。

根本的な問題として、ホラー映画として成立しきれなかったことが挙げられる。原作では変な間取りに隠された謎に挑むミステリーとしてストーリーは進むのだが、次から次へと新たな情報が出てくる説明展開が基本のため、そのまま映像化できない難点があった。

ホラーとして置き換えるのは致し方無い判断であったと重々理解できるのだが、ホラー畑の監督を起用しなかったのは大いに問題がある。起用された石川淳一監督はどちらかと言うと役者にコメディ寄りの演出を得意とする監督。やりたい事とできる事は必ずしも一致しない。

石川監督が演出するホラーは怖そうな要素をかき集めただけの記号でしかない。いかにも怪しげな演技をする川栄李奈、クリシェな斉藤由貴の起用、ステレオタイプを助長する田舎描写、問題提起のかけらもないカルト宗教、極め付けは突拍子もないチェーンソー。お化けを沢山集めてお化け屋敷を作っただけ。

ホラー映画における怖がらせるは、怪しげな雰囲気のもと、急に怪しげな何かが登場し、無慈悲に人が殺されていくだけでは無い。見てはいけないもの見たくなる『リング』、トラウマを思い起こさせる『羊たちの沈黙』、負のアイデンティティを想起させる『破墓/パミョ』といった観客の深層心理を刺激する描写が必要不可欠だ。本作は「カルト宗教って怖い」と無作為に言ってるだけで、観客からすれば「知ってる」という情報の確認でしかない。

雨宮のキャラクター描写も中途半端だ。再生回数に囚われた承認欲求の権現であるため『ザ・ディープハウス ~湖底からの呪い~』のように、欲望を満たした先に待ち受ける末路を期待する。しかし、宮澤を助けるために、記録用としてカメラを回すようになるため、YouTuberとしての設定が意味をなさなくなるどころか、欲望に囚われたが故の悲劇としても成立しなくなる。雨宮が一番観客の深層心理を刺激するキャラクターであっただけに、中途半端な描き方をされたのが勿体無い。


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