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映画評 デッドプール&ウルヴァリン🇺🇸

(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.

マーベルコミック原作の異色ヒーローアクション『デッドプール』シリーズ第3弾。マーベルコミック原作『X-MEN』シリーズで活躍したウルヴァリンがスクリーンにカムバックし、2大ヒーローの共演が実現。

不治の病の治療のために受けた人体実験で、自らの容姿と引き換えに不死身の肉体を手に入れた「デッドプール」ことウェイド・ウィルソンは、世界の命運をかけたミッションに挑むことに。その助けにと彼が助けを求めたのは鋼鉄の爪を持つ屈強な戦士「ウルヴァリン」だった。しかし、とある理由で、いまは戦いから遠ざかっていた。

デッドプール』シリーズの面白さは、他のマーベル映画とは一線を描くようなヒーローとしての独自なスタンスと第四の壁を超えてマーベル関連のメタギャグを観客に語りかけるのだが、本作においてはシリーズの強みが悉く都合を優先させているようにしか見えない杜撰さに満ちている。

デッドプールはアウトローのヒーローであってアベンジャーズのようなヒーローではない。本作はウェイドがアベンジャーズのようなヒーローになりたいところから始まるため飲み込みにくさが否めない。彼が起こす騒動からマッチポンプな所だけがアベンジャーズのレガシーを引き継いでしまうのは皮肉か。

動機としては『スパイダーマン』のような身近な人たちを救いたいということなのだが、肝心な身近な人たちはフラッシュバックで顔見せ程度でしか登場しないため救いたい説得力が希薄。むしろヒーローとしてのスタンスとしては『デッドプール2』で確立されているものであると思っていたため、同じような話を展開される不快感に襲われる。終始ウェイド個人のワガママを見せられる点ではピーターを踏襲してるのもこれもまた皮肉か。


(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.

ウェイドの自己都合だけならまだしも、第四の壁を超えて製作陣の事情及び都合が垣間見えてしまう居心地の悪さがある。

やはり『LOGAN/ローガン』で綺麗に終わらせていたウルヴァリンを復活させること自体に無理がある。『シー・ハルク:ザ・アトーニー』で再登場が匂わされ、本作で満を持してなのだが、今後本格的にMCUに合流させるための足掛かりに本作が作られたように見えてしまう。冒頭シーンで本作で出てくるローガンは別個体であることは明かされるのだが、それならヒュー・ジャックマンが演じることもなかったのではと勘繰ってしまう。それほどまでしてローガンを登場させたいのかと制作側の欲ぶかさが垣間見えてしまった。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の成功に味を絞めた結果、『スーサイド・スクワッド』『ジャスティス・リーグ』の失敗を踏襲することになっている。『X-MEN』シリーズに登場していたキャラやMCU以前のマーベル原作映画のキャラクター、企画が頓挫し幻になったキャラなどが多数登場するのだが、誰が誰だか分からないため、正しく一見さんお断りのスタンスを突きつけられる。またシリーズの統一感も無いためまとまりにも欠けた。

最も居心地の悪さが出たのが、MCU及びディズニー社の制作体制を皮肉るギャグが一切なかったことだ。近年のディズニー及びMCUは作品数の乱発による質の低下、ドラマシリーズ鑑賞が前提の映画作品、不均衡に偏るポリティカリーコレクトなど尽きないが、デッドプールがギャグとして用いたのは20FOXがディズニーに買収されたことくらい。1番ギャグとして成立しそうなネタをデッドプールでも皮肉らせないのは、自社の都合の悪い部分をひた隠しにしようとする小賢しが見えてしまった。


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