映画評 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ🇺🇸
世界的ヒットを記録した同名ホラーゲームを『M3GAN/ミーガン』『ブラック・フォン』のブラムハウス・プロダクション製作で映画化。廃墟と化したレストランを舞台に機械仕掛けのマスコットたちが恐怖を巻き起こす。
廃墟と化したレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことになったマイク。「モニターを監視するだけ」という簡単な仕事のはずだったが、そのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが眼を怪しく光らせながら自ら動き出す姿を目撃してしまう。マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟の侵入者を襲い始める。
物語に中身をもたらせようとする場合、主人公の葛藤を描き、ストーリーを通じて乗り越え成長していくのが鉄板だ。だが無理に成長を描こうとすると、逆に中身の薄っぺらさや粗が際立ってしまう諸刃の剣でもある。
主人公マイクは過去に弟を目の前で連れ去られるというトラウマを抱えており、そのせいで仕事が続かず、妹アビーとの関係性もギクシャクしてるのだが、正直言ってこの設定は無い方がシンプルなホラー映画になり得た。
警備をしていたら怖いマスコットたちに襲われてしまい、しまいには妹までも巻き込む大惨事に発展する。解決の糸口を探っている過程で、家族の絆を再び取り戻すことができた、というスッキリとした内容になれたため、過去のトラウマを克服する展開は蛇足に映る。
主人公のキャラ設定が雑に扱われてるのも気になるところ。序盤、モールで警備員として子供を連れ去ろうとする男性に殴りかかる(後に父親だと判明)シーンがある。弟を連れ去られた経験から、子供を連れ去ろうとする怪しい人を見つけたら許さない気持ちが表れている。
マイクは妹を職場に連れてこなければならなくなった際、妹を寝かせた後に、自分も寝てしまう不始末をはたらく。夢をみることで弟を連れ去った真犯人を見つけようとする理屈なのだが、いつ侵入者が入ってきてもおかしく無い状態で寝てしまうのは理解に苦しむ。妹が連れ去られるかもしれないと考えたらなおさらだ。
アビーは機械仕掛けのマスコットと仲良くなり、危ないと感じ取ったマイクではあったが、弟を連れ去った犯人を引き出せるかもしれないと踏み、再び妹を機械仕掛けのマスコットに合わせる。危ないと思ったのなら普通合わせない。自分の肉親を失うかもしれないと分かっていながらこの選択をするのはサイコパスでしか無い。
マイクの過去を描く際、マイクが見ている夢のシーンが度々差し込まれるのだが、非常に飲み込みにくい設定で溢れてる。
犯人の顔を思い出すために夢をみるは百歩譲って理解できる。トラウマがきっかけで記憶障害になるのは現実的にあるからだ。しかし、徐々に犯人の面影が見えてこなければ意味がない。しかも、夢で犯人がわかるならともかく人伝で犯人が判明する展開は、これまで見せられていた夢で犯人を探す設定の意味が無くなってしまう。
マイクの弟誘拐事件とマイクが警備してる元ピザ屋の廃墟で起きたら児童失踪未解決事件がリンクしてるのも偶然に見えてしまう。尚且つ、マイクの夢の中に失踪した子供達の霊が入ってくるというなんでもありさに唖然としてしまう。
怖い機会に襲われるだけでも十分成り立つ内容に、主人公がトラウマを克服して現実問題を解決するという、成長及び中身を無理矢理捩じ込んだことで、怖さが半減してしまったと評価せざる得ない。
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