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映画評 レッド・ワン🇺🇸
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『ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル』のジェイク・カスダン監督とドウェイン・ジョンソンが再タッグを組んだアクションアドベンチャーコメディ。
クリスマス・イブの前夜、コードネーム「レッド・ワン」ことサンタクロースが何者かに誘拐された。サンタクロース護衛隊長のカラム(ドウェイン・ジョンソン)は、世界一の追跡者にして賞金稼ぎのジャック(クリス・エヴァンス)と手を組み、サンタ救出のために世界中を飛び回ることになる。
サンタクロースの誘拐やクリスマス・イブまでに助け出さなければならないミッションなど、本作において面白くなりそうなポイントはストーリー及び世界観の設定など多岐に渡る。しかし、そのどれもが中途半端にしか描かれないのは、本作の評価を決定的なものにする。
物語には登場人物を突き動かすマクガフィンが重要なのだが、本作に至っては掘り下げ不足が露呈する。なぜジャックはサンタを毛嫌いしているのか、グレてしまった切っ掛け・動機は何だったのか、序盤にサンタを信じない幼少期のシーンを描いてるだけに中途半端に映る。ラストに見せた人間的成長のカタルシスに説得力が欠ける。また、やり手の賞金稼ぎの設定も発揮されるのは序盤のみで、常時発揮している訳では無いのも物足りない。
サンタクロースを誘拐したヴィランの動機は中途半端どころか、マクガフィンの想像を観客に丸投げする始末。悪い子ばかり増える現状に失望した故なのか、邪悪な力に飲み込まれたが故なのか、はたまた悪さをすること自体に楽しみを覚えてしまったのか。いくらでもどのようにも解釈はできるのだが、逆を言えば作り手がヴィランを通じて主張及び解を提示していないのと同義だ。
プレゼントを与えても良い子になるどころか悪い子ばかり増える現状に失望の色を隠せてないカラム以外に、キャラクターとしての魅力が映ることはないのは致命的すぎる。
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各キャラクターや世界観の設定が全く生かされていないのも中途半端に映る要因となる。
序盤こそは、各キャラクターの特徴を存分に発揮したシーンがいくつか描かれてはいたのだが、終盤になるにつれて腕っぷしを見せつけるだけのただ戦うだけという短調な演出に落ち着いた感は否めない。特にラストシーンは、何しに来たのか分からないキャラや大したことの無さそうなラスボスなど見応えらしい見応えは皆無に等しかった。
本作は護衛隊長カラムと人間のジャックが誘拐されたサンタの居場所を突き止めるために世界中を飛び回る設定なのだが、メガロポリスのような北極の拠点のシーンを増やして欲しいのが正直なところ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で宇宙や惑星描写よりも地球描写がメインに描かれるくらい物足りなく映る。
擬人化したホッキョクグマやペンギンなど本作でしか観られないであろうキャラクターやサンタクロース省庁システムの設定などオリジナリティ溢れる世界観が濃縮されているだけに、堪能する時間がほとんどなく、書き割り化している始末。人間世界が多めに描く選択は、自ら強みを放棄する愚行であると言わざる得ない。