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映画評 キングダム 大将軍の帰還🇯🇵

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

原泰久の同名漫画を実写映画化した大ヒットシリーズ『キングダム』の第4作。『BLEACH』『いぬやしき』の佐藤信介監督がシリーズ4作連続で監督を務める。

馬陽の戦いで、隣国・趙の敵将を討った秦国の飛信隊の信(しん)たちの前に趙軍の真の総大将・ほう煖(ほうけん)が突如現れた。自らを「武神」と名乗るほう煖の急襲により部隊は壊滅的な痛手を追い、飛信隊の仲間たちは致命傷を負った信を背負って決死の脱出劇を試みる。一方、その戦局を見守っていた総大将・王騎は、ほう煖の背後に、天才軍師・李牧(りぼく)の存在を感じ取っていた。

2024年9月時点で、実写邦画興行収入ランキングで70億越えの堂々の1位。さらにシリーズ最高収入を記録するなど華々しい成績をあげた本作ではあるが、記録の豪華さと内容の出来に大きなギャップが生じているように見えるのは私だけであろうか。

アクションだけを見れば、大ヒットは頷ける。漫画原作のエッセンスを取り入れつつも生死をかけた命懸けの死闘を描くことには成功しているからだ。特に吉川晃司演じる”ほう煖”の如何にもヤバそうな奴の雰囲気もあって、アクションにはハラハラしながら釘付けになった。

だがさすが日本クオリティというべきか、戦闘中にベラベラと喋り出してしまうリアリティの無さに呆れさせられた。特に王騎が喋り出すと、部下たちが話を聞くために視線を王騎に向け、手と足を止めてしまう。この間に斬られたりでもしたらどうするんだと疑問が湧くと同時に、少ない戦略で戦わないといけない緊張感が一気に途切れてしまう。『るろうに剣心』でも同じような展開があったため、日本映画の病理として受け入れるしかないのだろう。


(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

日本エンタメ界を引っ張っていく一流の豪華役者陣を起用しているのが本シリーズの特色だ。漫画ファンはもちろんのこと、役者さんのファンの方が大勢観に行っていることが、大ヒットの理由ではあるだろう。

しかし、本作に登場する半分の役者さんは、登場させることが目的になってしまった感は否めない。役者ファンはなぜ声を荒げないのか疑問に思う。本作から本格的に登場した李牧(小栗旬)は、戦況説明してるだけだ。使い方としては何とも勿体無さが際立つ。また、カイネ(佐久間由依)は李牧の金魚の糞だ。いる意味がない。

河了貂(橋本環奈)は、ただただ戦況を傍観してるだけ。李牧やカイネより扱いが雑だ。シリーズの主人公の一人である嬴政(吉沢亮)に関しては、王弟で報告を受け取るか、王齮の昔話をするかのどっちかだ。彼もまた何もしてない人の一人だ。主人公級のキャラがこのような描かれ方には呆れてしまう。

他にも昌文君(高嶋政宏)、昌平君(玉木宏)、呂不韋(佐藤浩市)もほとんど何もしてない登場人物で、いてもいなくてもどちらでも良い扱いを受ける。一番酷いのは長澤まさみ演じる楊端和で、相手側に李牧がいることを嬴政に報告するだけだ。そのまま戦に参戦しろよと頭を抱える。一作目の強さを見てきただけに、扱われ方は雑としか言いようがない。


(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

前半のストーリー展開は悪くはなかった。飛信隊とほう煖の対峙や王騎将軍が本格的に参戦するなど見応えのあるシーンは多かった。しかし、クライマックスに差し掛かるにつれて、グダグダな展開の物語を見せられることになる。

秦国対趙軍の戦闘シーンの合間に、王弟で嬴政や昌文君が王騎将軍に関する昔話をするシーンがこまめに差し込まれるため、テンポが停滞し、アクションのスピード感や臨場感が忙殺されてしまった。基本、本作における彼らは何もしてないキャラのため、見せ場のための見せ場でしかない。

しかも昔話を過去回想として描いてるのもタチが悪い。若き日の王騎将軍とかつての恋人・摎(新木優子)との関係性や荘襄王との関係性、王騎とほう煖の因縁を描いているのだが、説明のための説明描写でしかない。漫画で描く分には必要な描写及び展開なのかもしれないが、一本の映画で描く上では渋滞と停滞を招く。

筆者個人的には『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』級の興行と内容に大きな開きがある映画であると思ってる。豪華キャストは登場しているだけであるため、事務所の圧力を画面からも感じた。そして何より、作品のことを一番理解しているはずの原作者が書いた脚本が酷い現象に、メディアの変化に合わせた変化が必要であると勉強になった。


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