なぜ働いていなくても本が読めなかったのか
本を読まなかった編集者が見つけたかすかな希望
遅ればせながら、今年発売されて話題になった三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)を読みました。1978年生まれ(中村俊輔世代)の就職氷河期世代(※就職は氷河期で、社会に出たら「自己責任」で、社会保険料は上がり続け、今度は老後の資金は自分で何とかしろ世代。はい愚痴です)の自分にはぐさぐさ刺さる部分が多かったです。
読書論かと思いきや、働き方を問う本でした。
なぜ日本が長時間労働の国になってしまったのか? 仕事や家事や育児に「全身全霊」を捧げることが美徳にされてしまうのか? 日本における働き方の歴史や世界の事例を丁寧に紐解きながら、日本人が本を読む余裕もないほどにがんばってしまう問題の根っこに迫ります。
労働と読書を両立させる方法にとどまらず、働き方を変えることで少子化問題や日本経済の停滞も打破できると説く視座と熱さがとても良かったです。
この本を読みながら、子どもの頃に見た「24時間戦えますか」のCMが何度もフラッシュバックしました。
そして、ふとした疑問がわき上がります。
いや、そもそも働いていないときからそんなに本読んでないぞ、オレ。
出版業界に入って、さすがにそこそこ本を読むようにはなったのですが、
子どもの頃からマンガ以外の読書習慣はほぼなく、児童文学の名作なんか読んだ記憶が全くありません。
中学・高校でもよく読んでいたと言えるのは、「サッカーダイジェスト」(マガジンよりダイジェスト派だった)、定期購読していた「ボクシングマガジン」。あと、本と名のつくものは「競馬ブック」ぐらい。ちゃんとした本はあまり読んでいない。
時間はたくさんあったはずなのに、なぜ本を読まなかったのか。今みたいにスマホに時間を奪われることもなかったのに。
ここ2、3日ずっと考えているのですが、圧倒的な頭の回転不足でよくわかりません(笑)。いろいろ理由はあるとしても、一番はたまたまのめり込むような本との出会いに恵まれなかったのかなという気がしています。
とにもかくにも、この業界に入ってから若い頃にもっと本を読んでおけばよかったと後悔しました。
出版業界って、当たり前すぎますが、本が好きでたまらない人が多い。
長い間、読書体験のなさがコンプレックスで、「この本に救われた」「本がないと生きていけません」みたいな話を聞くと、いつもへこんでいました。仕事で壁にぶつかるたびに「やっぱり編集に向いていないのかな」と思い、毎年のように故郷の淡路島に帰りたいと言っていました。
でもあるとき、昔の自分でも読みたくなるような本を作ればいいんじゃないかと思うようになりました。開き直りですね。
あの頃の自分が読みたくなる本なら誰でも読みたくなるはず(間違いない)。
それ以来、普段本をあまり読まない人でも読みたくなるような本作りを心掛けるようになりました。
生物界で言うニッチを見つけたことになるのかどうなのかはわかりませんが、とにかく迷いはなくなりました。
今でも本がないと生きられない人間ではないので、許されるなら、自分にできることをがんばりすぎない程度にがんばろうと思います。
最後まで大して面白くもない話にお付き合いくださりありがとうございます。
せめてひとつだけでも役立つ情報をということで、最近聞いた耳より情報をお伝えします。
WEBの記事は金曜日の18時30分が一番読まれるらしいです。
記事の公開やSNSでの告知はその時間を狙うといいみたいです。
では、よい週末を。
文/アワジマン
迷える編集者。淡路島生まれ。陸(おか)サーファー歴23年のベテラン。先天性の五月病の完治を目指して奮闘中。
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