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【総評】第76回アカデミー賞

 みなさん、こんばんは!

 久しぶりにこの企画をやります!
 今回は『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』が作品賞に輝いた第76回アカデミー賞!その総括と個人的ランキングを書いていきます。


総括

この年は『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』の年でした。ノミネートされた全ての部門で受賞、『ベン・ハー』『タイタニック』と並ぶ11部門で受賞となりました。
また、『ロスト・イン・トランスレーション』ソフィア・コッポラはアメリカ人女性として初めて監督賞にノミネートされました。
また、日本関係だと『ラスト サムライ』渡辺謙が助演男優賞にノミネートされたことが話題になりました。

10作品の選定

 まず作品賞に入ったのは
 
 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
 ロスト・イン・トランスレーション
 シービスケット
 ミスティック・リバー
 マスター・アンド・コマンダー

 です。
 そして監督賞に入ったのは

 シティ・オブ・ゴッド

 でした。この6作品は決定。あとはノミネート数を見ていきます。上の6作品以外でノミネートが多いのは上から

 コールド マウンテン(7)
 パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち(5)
 ラスト サムライ(4)
 ファインディング・ニモ(4)

です。よって対象は

 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
 ロスト・イン・トランスレーション
 シービスケット
 ミスティック・リバー
 マスター・アンド・コマンダー
 シティ・オブ・ゴッド
 コールド マウンテン
 パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち
 ラスト サムライ
 ファインディング・ニモ

とします。

個人的ランキング

第10位 『ロスト・イン・トランスレーション』

ノミネート : 作品賞、監督賞、主演男優賞(ビル・マーレイ)
受賞 : 脚本賞

ハマらなかったです。
外国の映画で日本が舞台というのはなぜこんなに気恥ずかしいのでしょう。
日本の文化には敬意を払い、かつユーモラスな描写だと思うものの、日本の人の描写はあまりに現実離れしていて見ていてこっぱずかしく感じました。あんな司会者はいないですし、しゃぶしゃぶの店で、しかもそこそこ良さそうな店で外国人に何の説明もしないなんてあり得ないですよね。パリピやディレクターについてはリアルを知らないから何も言えないですが。
スカーレット・ヨハンソンはよかったです。

第9位 『コールド マウンテン』

ノミネート : 主演男優賞(ジュード・ロウ)、撮影賞、編集賞、作曲賞、歌曲賞×2
受賞 : 助演女優賞(レネー・ゼルウィガー)

まぁまぁでした。特別面白いわけではないですが、オスカー狙いだったらこういうのもいいんじゃないという感じでした。ワインスタインがつくったという背景もあるので「アカデミー賞が好きそうな映画」という印象です。その割には作品賞にもノミネートされていないですが。
助演女優賞を受賞したレネー・ゼルウィガーが入魂の演技を見せていますが、展開上別になくてもいい役だなとは思いました。彼女のためのような役に見えてしまい、これだったら断然『ジュディ 虹の彼方に』の方がはまり役だったかなと思います。
南北戦争期のアメリカ南部を描いた作品で、とにかくスケールが壮大です。戦闘シーンは流石に迫力があっていいですし、後半雪の中での格闘もよかったです。ニコール・キッドマン演じるエイダ、レネー・ゼルウィガー演じるルビーが少しずつ心を通わせる描写も丁寧です。
概ねよく出来た良作、ではありますがそれ以上でも以下でもない。厳しいことを言ってしまえば毒にも薬にもならない平凡な映画だなというのが正直な感想でした。

第8位 『ファインディング・ニモ』

ノミネート : 脚本賞、作曲賞、音響編集賞
受賞 : 長編アニメーション映画賞

言わずと知れたピクサーの名作です。正統派によく出来たアニメーション映画で、シンプルながら練られた脚本が素晴らしいです。父子の絆を描いた感動作で、ラストには思わず涙しました。
しかしあくまで子ども向けという感じで、特段ハマりはしませんでした。技術としてクオリティは文句なしに素晴らしいと思います。

第7位 『シービスケット』

ノミネート : 作品賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞
受賞 : なし

弱き者たちが下剋上を目指すという王道感動ストーリーです。馬映画としても申し分ないですね。泣けます。
馬と三人の男たちが出会うまで、そしてアメリカ制覇までを丁寧に描いています。レースの描写も抜け目なく迫力満点でした。
初めて優勝するところや一騎打ちに勝つところ、そして最後などまんまと泣かされました。
主要人物はみないい人で観ていて気持ちいいです。富豪の若い後妻、というだけで悪く描かれがちな妻マーセラも普通にめちゃくちゃいい奥さんでした。夫を支え共に一喜一憂するんですよね。
シービスケットと三人の男たち、それに加えてその背後にしっかりと当時のアメリカという社会背景を描いています。
あらゆる意味で抜け目なく見事なアメリカ的感動作です。定期的にある良質馬映画の一作ですね。誰が見てもいい映画だと思います。感動しました。

第6位 『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』

ノミネート : 主演男優賞(ジョニー・デップ)、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞
受賞 : なし

大好きな映画シリーズの一つです。まさかアカデミー賞にノミネートされているとは。しかも5部門で。あくまで娯楽大作という印象だったので驚きです。
ジョニー・デップの魅力で持っているようなシリーズなので主演男優賞にノミネートされているのは意外ですが納得です。
さて本作はシリーズ一作目、はじまりの物語として王道にワクワクドキドキの活劇だったと思います。

第5位 『マスター・アンド・コマンダー』

ノミネート : 作品賞、監督賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞、視覚効果賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞
受賞 : 撮影賞、音響編集賞

海洋冒険ものではありますが、博物学の知識や船内での人間関係などを丁寧に描き飽きさせません。
戦闘シーンもやはりしっかり予算がかかっているなという感じで迫力がありなかなかよかったです。
ラッセル・クロウの髪の似合わなさが最後まで違和感がありましたが、ハマり役でしたし、親友の軍医であるポール・ベタニーもよかったです。自分で手術するシーンやガラパゴス諸島を探索するシーンは印象的でした。
最後も意外な展開ではありますが、親友とのセッションを続ける二人の仲の良さ、上品さにほっこりしました。
何か社会的意義を持った作品ではないですが、しっかり作られたフィールグッドムービーという感じで楽しめました。

第4位 『ラスト サムライ』

ノミネート : 助演男優賞(渡辺謙)、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞
受賞 : なし

何故か避けていた作品でしたが思いの外良かったです。日本描写は意外とちゃんとしていますし、トム・クルーズもはまり役でした。エドワード・ズウィック監督のスケールが大きくスッキリとした演出もよかったですね。
都合のいい展開、過度なオリエンタリズムは気になりました。なぜか重要人物(勝元=渡辺謙)が英語ができる設定だったり、いきなり主人公が刀社会に順応できたり。また「武士道」というものが繰り返し連呼されますが、それに頼りすぎではないかとも思います。
しかし全体的には飽きずにしっかり映像の力で見せてくれたいい映画でした。ズウィック監督作品は『レジェンド・オブ・フォール』しか観ていないですが、同じくスケールの大きな歴史大作をスッキリとまとめ上げる手腕は流石です。
勝元がなぜか英語を話せるという不自然な設定はあれど、その演技はやはり世界の渡辺謙という感じでした。真田広之や小雪、子役時代の池松壮亮など日本側のキャストはみな良かったです。トム・クルーズも斜に構えた南北戦争の英雄を上手く演じていました。
感動こそあまりしなかったですが、戦闘シーンなど迫力ある描写が多く惹きつけられます。期待値をあまり上げずに観たのがよかったのかもしれません。もっとめちゃくちゃな日本描写なのかと思っていたらそんなことはありませんでした。日本人キャスト同士では基本日本語で話しますし、時代考証もきちんとしているのでは。
絶賛!というわけではないが、意外にちゃんとしたスケールの大きな歴史大作で面白かったです。手堅くまとめたエドワード・ズウィック監督の手腕も感じられ、トム・クルーズのスター映画、渡辺謙の出世作としても十分評価に値する作品だと思います。

第3位 『シティ・オブ・ゴッド』

ノミネート : 監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞
受賞 : なし

研ぎ澄まされた演出と鋭い編集の優れたギャング映画でした。同じ場面が違う視点から語られたり、会話の切り返しでテンポよく話を進めたりと実にスマートでキレのいい作品です。
ギャング映画ながら、語り手は写真に夢中になる少年であり、サクセスストーリーとしても機能しています。
あれ?と思う何気ないシーンを真相はこうでした、と語る手つきも後出しではなく、ちゃんと観ていれば納得できるようになっていて巧みです。
2時間強の尺もムダがなくスピーディ。バイオレンスながら、鶏を追いかけるというどうでもいい(と思える)シーンまで異様な高揚感に満ちています。
とても面白く、巧みで優れた作品でした。

第2位 『ミスティック・リバー』

ノミネート : 作品賞、監督賞、脚色賞、助演女優賞(マーシャ・ゲイ・ハーデン)
受賞 : 主演男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ティム・ロビンス)

イーストウッド作品は苦手なんですが、これもあまり好きにはなれませんでした。すっきりしないラストはそういうものだと分かっていてもイライラしますし、田舎の警察と言えどここまで役立たずなことってある?と思ってしまいました。
しかし3人の禍々しいほどの変わった絆、田舎特有の独特の閉塞感も相まって雰囲気はよかったですし、イーストウッドなだけありすっきりした話運びはよかったです。
なによりクオリティの高さ。これに尽きます。好きではないと言えど本作をこの位置に置くことにはためらいはありませんでした。流石イーストウッドと唸るしかない緊張感のある演出が素晴らしいです。
イーストウッドの集大成とも言われている本作、その意見に納得しました。流石です。

第1位 『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』

受賞 : 作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、歌曲賞、録音賞、視覚効果賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞

もうここまでされたら1位にするしかないですよね。圧倒的なビジュアル力に見とれるしかない。三部作の最終作として見事すぎる作品です。
ピーター・ジャクソンの演出力、細かなところまで気を配った美術や衣装、圧巻の特殊効果など全てにおいて高いレベルにあります。
もうあまり言うことがありません。『指輪物語』の映画化として完璧な作品であると断言できます。

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