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待望の「ムンディ先生」続編!1本筋の通った見事な日本史の流れに魅了される1冊。【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』】
いまや15万部を突破、あのオリラジのあっちゃんも自身のYouTubeで展開している世界史動画の参考文献にしていると公言した『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』の発刊からはや1年。満を持して、ついにムンディ先生の「一度読んだら絶対に忘れないシリーズ」第2弾、それも待望の「日本史」がやってきた!!!
山崎圭一先生、通称「ムンディ先生」とは福岡のとある公立高校の社会科教諭。これだけではどこにでもいそうな肩書だが、先生は世界史・日本史の授業動画をYouTubeにそれぞれ200本ずつ、地理の授業動画も100本以上配信している「YouTuber教員」である(もちろんYouTubeによる収益はあげていない)。
その授業のわかりやすさに全国の地理歴史に悩む中高生が続々と動画を再生し、「ムンディ先生のおかげでセンター試験満点でした!」と言う声も続出する、教育界大注目の存在だ。
さてそのムンディ先生が書いた待望の「日本史」。世界史に引き続き年号を排除したシンプルな構成もさることながら、各時代やその時々で政権を握っていた人物、たとえば将軍や天皇、首相といった「政権担当者」を主人公として話を展開している。
日本がまだ「列島」ではなかった時代、つまりユーラシア大陸と陸続きだったころから、まさしくいまの「令和」までをまとめた300ページ強は、あまりに「美しく」「見事」と感嘆せざるを得ない。文章だけでなく、たとえば各武将の関係性や藤原京の場所をいまの地図に当てはめたものなど、とにかくたくさん出てくる図表や地図も大きな見どころだ。
そういえばお笑いコンビ・ロザンの菅ちゃんが書いた『京大芸人式日本史』では、宇治原が「歴史は物語を読むように学べ!」と豪語していたが、前述したように「政権担当者」という主人公がいるこの本こそ、まさに日本史の「物語」そのものである。
ヨーロッパや中国、イスラム、インドの各世界ごとの歴史がゆるゆるとまとまっていく過程を見る世界史とは違い、今回の日本史は年代が行ったり来たりすることもない。それがまた、日本史という物語のおもしろさをシンプルに際立たせている。職業柄、日本史の本はたくさん手にとってきたが、こんなにも夢中になって読みふけった日本史の本ははじめてだった。
最後に、僕なりのおすすめポイントを2つ。
1つは、『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』の書評の最後にも書いたが、あらかじめYouTubeでムンディ先生の動画授業を受講したあとにこれを読むと、文章の一字一句がほぼすべて頭の中でムンディ先生の柔和な博多弁交じりのあの声に変換されて再生される。これがちょっと楽しいし、たとえば電車の中で読んでいてもムンディ先生の授業を受けているような気分になる。
それともう1つは、各時代(章)ごとに出てくるシンボルマーク。たとえば飛鳥時代と奈良時代の章は大仏だったり、江戸時代は徳川家の家紋でおなじみの三つ葉葵が用いられているのだが、僕が一番グッと来たのは明治時代のシンボルマークだった。この簡単な絵柄で誰を示しているのか一発で気づいてしまうほどのわかりやすさ。気になった人は、ぜひ手にとって確かめて欲しい。