2023年2月、スーツ大手のパンフレット比較~SUIT SELECT~
「署名を提出したいのですが」と送り先を聞いたら、
「価値観を提供しているのは採用企業。我々はお客様の価値観についてとやかく申し上げる立場ではなく、ニーズがあるので提供しているだけ。いじめないでいただきたい。コロナ禍でスーツのニーズも減っており、我々自身も困っている立ち場。そっとしておいて欲しい」
と強い調子で言われ大変怖い思いをしたコナカの関連(https://www.konaka.co.jp/company/group.html)のSUIT SELECTです。
参考:
こちら、SUIT SELECTのお店で、「レディース」「メンズ」1冊ずつファイルをもらってきた内容です。
青山は「レディース=ピンク/メンズ=青」から脱却したのに、SUIT SELECTは依然としてこんな感じです。
男女二元論、「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」、やめてください。これらのあるべき「女性像」「男性像」に当てはまらないすべての人はどうすればよいでしょうか。
「はじめよう、スーツと私」「初めてのスーツ。」「入学式・卒業式・新入社」「入学式や入社式などはじまりの日にもぴったり。」「入学式、就活、入社式と、ずっと使えるブラックスーツ」などの文言から、これらのパンフレットが、学生向けであると受け取って話を進めますね。
気になるのが、男女二元論でもって強制的に振り分けられた「女性」側に頻出する「プリンセスライン」という言葉。
この2ページで「プリンセスライン」が3回登場。
「美シルエット」は、2回登場。
「体のカーブラインを美しく」、「体のラインを立体的に美しく見せる」「ボディラインがキレイに見える」など、体のラインに言及する解説も多数。このようなシルエットを求める顧客にはとても良いと思います!
そしたら、次のページ以降、このような女性らしいシルエット、ではない製品も紹介されるのかな?と思いきや……
まだまだいきます。「背中のくびれが自然に生まれるデザイン」「プリンセスライン」「ボディラインを美しく見せる」などの文言。
このパンフレットでは、このようなテイスト以外のスタイルは、最後まで提案されません。このパンフレット自体、このようなテイストを好む人に向けたものという解釈もできますが、「レディース」用として渡されるパンフレットがこれ1冊しかない状況では、「女性はこうあるべき」と言われているのも同然ではないでしょうか?
「女性」に振り分けられた人は、美しくあらねばいけないのでしょうか?
カバンと靴も、ワンパターンのみの紹介。
「女性心をくすぐる」「キュンとくるポイント凝縮」「可愛いポーチ付き」「付属のポーチも可愛らしいピンク×黒のバイカラー。」「歩きやすさと美脚見えを追求」「脚がきれいに見える点にもこだわり抜いたブラックパンプス」「足が綺麗に見えるラウンドトゥデザイン」「ヒールの高さも歩きやすさと美脚見えを兼ね備えた5cmヒール。」「ランドトゥは足元が美しく見えるだけではなく、」
美しさへのこだわり、よく分かりました。このようなファッションが好きな人や、アイデンティティに合っている人には、最高のラインナップだと思います。ピンクも、優しい色調でとても綺麗です。カバンも、これを肩にかけて歩けばとても美しく見えると思います。
……でも、それ以外のスタイルの人は?それ以外のアイデンティティの人は……?こういったタイプの「美しさ」を求めない人は?「メンズ」コーナーに行けばいいんでしょうか?それも、両極端すぎませんか……?
当たり前ですが、ここに紹介したような宣伝文句は、「メンズ」パンフレットにはありません。なぜ?「メンズ」アイテムが「背中のくびれ」や「美しさ」を売り文句にしたっていいはずです。
これが、普通のいちアパレルメーカーのパンフレットや宣伝文句であれば、何も問題はないと思います。こういったテイストを好む人のみにターゲットを絞り、そのような顧客が来ればいい訳です。でも、今や、就活や入学式というのは、たくさんの人が経験するというよりも回避することのできないものとなっていますよね。それらは、あらゆるジェンダーアイデンティティやジェンダー表現/非表現の人が参加せざるを得ないものです。そういったイベントに不可欠なアイテムを売る側の企業にも、多様な顧客を想定した広告が求められるのは当然と思います。
例えば、ピンクのテーマカラーではないチラシが別で存在するとか、紙面にも、違ったテイストの着こなしやアイテムが1つでもあるとか、何かしらできるはずだと思います。
コナカには、とても酷い署名受け取り拒否のやり方をされたと思っていますが、もう一度署名提出の打診をしようと思っています。「コロナ禍でスーツのニーズも減っており、我々自身も困っている立ち場。そっとしておいて欲しい」と言うよりも先にすべきことは、ごくごく特定の「女性らしい女性」以外の人もあたたかく迎え入れてくれるような広告や指南を打ち出すことだと考えます。自ら特定の顧客以外を排除し、反多様性を突っ走っている販売店が「ニーズが減っている」「困っている」という状況に陥っていくのは、自然なことだと思いますが。
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