店舗設計会社のマーケティングは難しい。
記事投稿日の本日日曜日が仕事で出張になり、日が高いうちからクライアントとお酒を飲んでしまったため、デスクに向かった18時現在、かなり眠たい。
毎週のルーティーンを一度破ると、今後どうなるかは火を見るより明らかなので、簡単に書けそうなネタはないかと探そうとするが、なぜかデスクにはハイボールの500ml缶があり、頭が回らない。
そこで、最近よくお世話になっているチャットGPTに聞いてみることにした。
来年度入社の新人の求人をしていることもあり、Z世代(が世代的にあっているのかよくわかっていないが)に届きやすい記事にしようと以下のように聞いてみた。
「空間デザイナーとして働いている僕はブログを書いているのだけど、僕の仕事に関係していて、Z世代が興味を抱くような記事ってどんなものがある?」
そうして返ってきた回答は5つの項目に分かれていたが「ほんまに?」と懐疑的に感じるものが多かった。
サスティナビリティやらエコ、テクノロジー、ARやVR、ポップカルチャーとアート、などなど。
どこぞの企業のビジネスマンが、Z世代をターゲットにした商材の企画書に、ゲシュタルト崩壊するくらい書きまくった内容を引っ張ってきたんだろう。
これで記事書くのはなかなか厳しいなぁ、と思っていたら、最後の項目に懐かしい響きの言葉が混ざっていた。
「ビフォーアフター」
20代は知らないだろうなと思い、ウェブ検索してみたところ、今でも時折特番として放送しているようなので、知っている人もいるだろう。
チャットGPTが提案した内容はこうだ。
なるほどと頷きかけたが、これは別にZ世代だけに言えることではなく、お年寄りから子供まで、およそ誰でも当てはまりそうだ。
前述のTV番組が人気を博し、割と長寿命であったことが証明している。
ちなみに、この番組に出演した建築家がそれ以降に様々なトラブルに巻き込まれる話を耳にしたのはまた別の話だ。
ともあれ、ビフォーアフターの写真を出すのでよければ、たくさんある。
なんせ、こちとらリノベーションのプロですから。
よーし、過去に手がけた物件の現場写真と、竣工写真を探すぞ〜!と意気込んだものの、ちょっとした違和感が喉につかえている。
何か違うな。
TV番組が面白かったのは、住む人の改装前の困りごとを聞き、それを解決していく過程を視聴者が一緒に体感して、最後はサプライズの形で、それこそ「劇的に」演出していたからだろう。
つまり人と空間が登場人物であるストーリーがある。
視聴者はこのストーリーに惹かれているのだ。
だとすると、この後単純に設計した案件のビフォーアフターの写真を並べたところで、読者の方には何の驚きも提供できない。
さらに追い討ちをかけるのは、設計対象が「店舗空間」であることだ。
住宅を対象としたビフォーアフターコンテンツであれば、設計者とクライアントという関係性がそのまま物語になり、視聴者はクライアントと同じ目線で、設計者が提案してくる「匠の技」に一喜一憂、称賛と批判をすることで楽しめる。
しかし、店舗設計のビフォーアフターを、事業主がかける想いと共に提示しても、共感してもらえるのは、住宅と比較すると関心を示す人が極端に少ない、「空間を使用して事業をする人」に絞られる。
ここまで書いてきて、記事のタイトルを変更した。
当初この記事のタイトルは「劇的!なビフォーアフターが面白いのは「ストーリー」がセットになっているから。」だった。
しかし、書き進めると、単純にビフォーアフターの写真を提示するだけでも、届ける人が限られることに気がつき、うすうす、というかはっきり感じていたけど、目を背けていたマーケティングの難しさに直面する内容になってきたためタイトルを変更した。
住宅市場と比較すると店舗設計の市場は非常にニッチな世界である。
住宅を専門にする設計者と、店舗設計を専門にする設計者のSNSアカウントのフォロワー数を比較してみるとよくわかる。
もちろん店舗設計の専門の人でも、著名な方はもちろんいるが、基本的に住宅「も」設計するいわゆる建築家の方が圧倒的に知名度が高いと思う。
それはやはり、設計対象に興味を持つ人の多さによってあらかた決まっていると思う。
良い例えとは言えなさそうだが、例えばファッションのブランド名を知っているのと、そのブランドの服をデザインしている人を知っている、くらいの違いがある。
ユニクロの服をデザインしてる人の名前を言えますか?
日常生活で考えてみよう。
住宅を建てたい場合「この住宅は誰が設計したんだろう?」という話題は出るが、美味しい食事をしたい場合はどうだろうか。
「フレンチにしたいけどどんなお店が良いかな?」とは考えるが「このお店は誰が設計したんだろう?」とは誰も思わない。
そういうことだ。
住宅設計のマーケティングはB to C だが、店舗設計のマーケティングはB to B to C になる。全然違う。
店舗設計者のクライアントは基本的にビジネスオーナー(もしくは企業の店舗開発部)だが、難しいのは「これから空間を利用するビジネスで起業する人」にピンポイントで辿り着くことだ。
僕は「何か空間を使って新しいことをしたいが、どうやってやれば良いかわからない。誰に頼むべきか?」と悩んでいる、未来のビジネスオーナーに出会いたいのだが、どのチャネルで、どのようなコンテンツを届ければ最適なのか、いまだに「これだ!」というものには出会っていない。
それなりに色んな施策をしてきたが、18年近く事業をしてきて、結局のところ「紹介」が集客チャネルの99.5%を占めている。
紹介もマーケティングの内、それだけ紹介で仕事がつながるのは、良い仕事をしている証拠、などと褒めてくれたり鼓舞してくれる人がいて救われることもあるれけど、やはり紹介だけでは心許ない。
自らの施策で問い合わせが来ることがあったらどんなに嬉しいかなと思う。
会社の電話が鳴り「◯◯ホテルに泊まった時、そこの雰囲気が良かったので、別荘の設計をお願いしようと思って電話しました」と問い合わせをもらった時などニヤニヤが止まらなかった。嬉しい。
そんな経験が日常的になるよう、作戦を練らねばならない。
いい案降りてこーい。