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イルカ探訪誌

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イルカ探訪誌 6

 錦鯉は滝を登ると龍になるというが、イルカはどうすればクジラになるのだろうか。

 いや、おそらく違う。

 クジラとイルカは同種ではあるけれど、イルカが鯨に成長するわけではないのだ。

 私は人間であるが、どうあがいても白人にはなれない。

 両者は限りなく近い存在だが、どこまでいってもパラレルなのだ。

 空と海が交わることがないように。

 さて、ウィキペディアによると、だいたい4mがクジラ

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イルカ探訪誌 5

 私は大辞林でイルカの項目を引いた。

 一行目にはこうあった。

    クジラ目の哺乳類のうち、小型のハクジラ類の総称。

 どうやら私はこの世迷言を事実として受け入れなければならないらしい。

 私は観念した。

 しかしその事実を受け入れることは、私にとって容易なことではなかった。

 尋常ならざることだった。

 その事実は鋭いナイフとなって胸に深々と突き刺さり、私は声を上げることもでき

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イルカ探訪誌 4

  腹をくくって、ウィキペディアの『イルカ』の項目について見ていく。まずは一行目。

   
 イルカ(海豚、鯆)は、哺乳類偶蹄目クジラ類ハクジラ亜目に属する種の内、比較的小型の種の総称(なお、この区別は分類上においては明確なものではない)。

 私は目を疑った。目薬『養潤水』を差し、眉間を指で念入りにほぐして、蒸したタオルを瞼の上に5分間置いた。

 目を意識的にぐるぐると回し、正常に機能してい

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イルカ探訪誌 3

  私はまず、イルカについての大まかな知識を得るため、ウィキペディアのイルカの項目から読み進めることにした。

 しかしこのスタートとしてウィキペディアを選ぶのは些か問題がある。

 わからないことがあればすぐにインターネットで検索するのは、ネット時代に毒された若者という謗りを免れない上、そこで得た知識をこのようなソーシャルな場で披瀝するのは、自らの見識の浅さを露呈してしまうことにもなりかねないだ

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イルカ探訪誌 2

 それがなぜ、今、イルカについて書こうと筆を執ったのか。

 当たり前のことだが、イルカを語るにはイルカを知らなければならない。

 もし私が、イルカを知らずにイルカを語り出すようなことがあれば、それはイルカではなく、イルカの姿形と名前を模した別の何かだ。

 イルカを語る者ではなく、イルカを騙る物だ。

 そうならないために、私はイルカを知り、イルカを伝えようとしている。

 平家について唄う琵

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イルカ探訪誌 1

私がイルカについて何かを書こうと思ったのは、冬と春の境目に線を引くように雨の降った日のことだった。

 それは稲妻が心臓を貫くような運命的な神の啓示などではなく、腹の底からじわりとこみ上げる使命感だった。

 最初に一つ留意しておいて欲しいのは、私はこれまでの長いとも短いとも言えない人生の中で、イルカと関わるようなことはほとんどなかったという点だ。

 もちろん、私の生活がイルカとは全くかけ離れた

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