見出し画像

心地よい「住」探し

家を見ることがすきだ。
歩きながら、家の形や庭などから見知らぬ他人の生活に思いを馳せることもすきだし、リビングの灯りを見るとなぜだか心がすこしだけあたたかくなる。

あとは、賃貸情報も。
そろそろ契約更新の時期だから、最近はひたすらにインターネットで物件サイトを漁っている。
今住んでいる家を決めるのにも、3か月ほどかかった。閲覧した物件数は恐らく300件以上。
回った不動産屋も10カ所弱。
内見に行く予定だった物件を当日キャンセルされるなど、程よく不動産屋の洗礼を浴びつつも、お陰様で物件探しの知識が少しついた。

その割に決める時はあっさり決めてしまう。いつもそう。これだ、と思ったものは迷うことなく、どこからともなく湧き上がってくる自信だけを頼りに、物事を進めてしまう。
物件を見ていても、なんとなく、なんとなくでわかってしまうのだ。
居心地のいい家は、明るく澄んだ雰囲気がある。
1人で暮らすとしても孤独が感じられない、自由で、心地のよいさびしさに包まれた家。

今の家も、内見することもなく直感で決めた。
陽当たりも良さそうだし、なによりも、物件写真で見たときに、窓から見える風景が好きだと思った。
陽当たりも良く、何よりも窓から見える風景が好きで。
さびしくも、何処からかやってくるちいさな希望に溢れる春のように。
どこへでも羽ばたいていけるような気がする、そんな家だと思った。


実際、これでもかと言わんばかりに窓が至る所についているし、部屋も広くて風通しもいいから洗濯物を室内干しすることもできる。
1階に住んでいる大家さんはやさしい方だし、わたしの下の階の隣人は毎年この時期になると、実家の青森から送ってもらったらしい、りんごをマンションの住人にお裾分けしてくれる。
みんな、お礼の手紙を添えるから、1日おきに増えていく手紙の数を数えることも好きだ。


やっぱり1人で暮らしていくにはすこしさびしいけれども、ここは落ち着くような家なのだ。

余談だけれど、わたしは家選びの条件に陽当たりのよい家であること、角部屋であることだけは譲れない。
2年前、東京に上京して家を探していた時、その条件を伝えた不動産屋のおじさんに、「仕事が終わって帰って眠るだけの家なのに、陽当たりなんか気にする必要はない」と嘲笑されたことを今でもしぶとく覚えている。
結局わたしは、在宅で仕事をするようになったから、1週間のうちの4〜6日ほどは家にいるようになったし、今になって、不動産屋のおじさんのあの発言を「ほら、やっぱりね」と時々見返したくなったりも、するのだ。

そんな感じで、わたしは「住」へのこだわりが強い方だと思うのだけど、わたしが東京にいる間はいろんな街に住んでみたいな、とおもう。
「若いうちは好きな街に住みなさい」と、会社の上司に教えていただいたこともあり、自分で稼いだお金なのだから、好きにしたらいいのか、と思えるようになったのだ。

住みたい街に住む。居心地のいい家を探す。
街を歩いてみて、次の家を探してみる。
次の衣食住のテーマは何にしよう。
そんなことを考えながら。


いいなと思ったら応援しよう!