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記憶の中で

仕事が終わって、昨夜のうちから予め、切っておいた材料を鍋に入れてひたすらに煮込む夜21時。

「もつ鍋はくたくたのほうがいいんだよ、
もう少し火をつけときな」と先日、
福岡に行ったときに教えてもらった知らないお兄さんの顔を思い出す。



自分の知らないことをだれかに教えてもらった記憶を、わたしはいつも、いつまでも、宝物のように、なぞりつづける。

朝帰りの始発の中、わたしに色々な音楽や世界のことを教えてくれた歳上のお姉さん。
かつて尊敬していた人の、一緒に歩いたとき、前を歩く後ろ姿を見つめながら横にはまだまだ並べないなあ、と思った記憶。

わたしを掬い上げてくれた人の真っ直ぐで、うつくしい瞳。

ひとから与えてもらった記憶。
冬はそんなことばかり思い出す。


そんなふうにわたしもだれかの記憶に、ほんの少しでも引っ掛かれたらいいな
と思って、毎日いきている。

今は1月の途中。
春はまだまだ先。

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