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158日目。【短編】君の好きなとこ。

あなたって、舌が長いのね。今気づいた。

そう?普通だと思うけど。そんなに長いかな。初めて言われたよ。ありがとう。

そうね。私でないと見ないところだものね。私はそんなところには自信があるの。人が見ないところを見るとこ。

本当に。自分でも気付かなかったよ。というか意識すらしていなかった。僕の舌は長いのか。

そうそう。あなたの舌って長いの。あとはまつ毛が長いとか、色が白いとか、色々あるけど。どうせ今まで言われてきたでしょうから。言わない。

確かにその二つは言われたことがあるよ。へえ。何で言ってくれないの?

つまらないでしょう。既に発掘された遺跡をまた掘り返すみたいで。誰かに荒らされた跡なのよ。

荒らされたって言うなよ。寂しいな。

あら。荒らされたって思わない?私は誰にも発見されていない洞窟を見つけたいの。私に会わなければ、誰も見つけない洞窟。それを見つける度に自分が好きになるの。また世の中の新しい価値を見つけたって。

大袈裟な。僕の舌はそこまでじゃないさ。

わかっていないわね。私が価値を見出したのだから、それは価値なの。

わからないな。君の価値が世界の価値なの?

そうよ。だってここにいるのは私だから。私が世界を見ているから、価値が生まれるの。

なるほどね。なるほどなるほど。

あ、目を逸らした。やっぱりまつ毛は長いのね。でも舌が長い方が良いわ。



僕は全く彼女の言っていることがわからなかったし、やっぱり彼女が好きでたまらなかった。


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