なぜ地方の進学校は、地方国公立大学進学を勧めがちか?
最近、YouTubeなどでも度々話題になるこの話に触れたいと思います。
私は地方の私立進学校に勤務しています。いわゆる自称進学校と呼ばれることも多い学校かもしれません。
さて先日noteでよく見る「でまち」さんの記事に以下のようなものがありました。
要約すると、「地方の進学校の教員は地方国公立大学への進学を勧めがちだが、自分でよく調べよう。個人的には就職に有利な都会の私立大学がおすすめ。」といった内容です。
これに関して、地方の進学校の、一応は進路指導を担当している立場から弁解をしてみたいと思います。
地方進学校には都会の私立大学のデータが無い
主な就職先などが教員や保護者から魅力に欠ける
理系信仰が根深い
地方進学校には都会の私立大学のデータが無い
まずは根本的にこれが生徒に進学を勧めない理由になります。
受験段階においての過去問の分析や対策をできる体制が整っていません。
もちろん、準備をすることで対応は可能ですが、多くの学校においてその準備をするほどのコストに見合った受験者数がいないのが現実です。
また、過去の進学者が少ないため、卒業生の追跡データもほとんどありません。
その結果、就職先なども公開データ以上のものが存在せず、自信を持って進学を勧めることが出来ないということになります。
主な就職先などが教員や保護者から魅力に欠ける
地方の進学校の場合、教員は地方国立大学から教育公務員になった人がほとんどです。
また、保護者も高卒が比較的多く、大卒の場合も地方大学から地元企業や地方公務員や医療関係といったケースが多いようです。
そのため、彼らの就職の成功例のイメージというのはインフラ系などの地方大企業や地方公務員などになります。
(例えば、福岡県には七社会という圧倒的なネームバリューを誇る企業団が存在します。このブランド価値は県内では全国区の企業の比ではありません。)
逆に言えば、都会の私立大学からコンサルやベンチャーに就職することはたとえ給与が高くとも決して成功例にはならないということです。
その上に、入試難易度も学費も高いとなると受験や進学を勧めるのが非常に難しくなります。
このように。保護者や親戚縁者の評価が芳しくないため、わざわざ生徒に勧めるメリットはまったくないのです。
理系信仰が根深い
首都圏などと比較して、地方では製造系の就職先が比較的多いため理系信仰が強いのも特徴です。
これは、第三次産業が大都市近郊に集中するという理由からです。
九州は全国区の自動車企業や半導体企業などが工場を設置していることもあり、それらの企業に勤務する人達が労働環境や給与体系が地方の中では優位です。
(特に平均所得の低い九州では差が顕著です)
それらの大半は研究や開発、製造など理系からの出身者がほとんどのため、理系信仰が根深いです。
そのため、研究費などの面でも同レベルの私立大学よりも理系優遇が強い地方の国立大学を勧める傾向は強まります。
教員の価値観のアップデートも必要
生徒の進学希望に沿った指導をする、というのは教員をする上でとても重要な心構えでしょう。
しかし実際には残念ながら、自身の偏見や大学のネームバリューだけで進路指導をするケースは少なくないようです。
九州においては、生徒管理型の進学指導が主流のため教員側と生徒で無意味に対立する話もよく聞くのが実情です。
教員側も価値観をアップデートして指導に当たる必要があります。いつまでも昭和的護送船団方式、年控除序列が通用する時代ではないからです。
まずは調べること、これに尽きるのではないでしょうか。
まれに功名心や学校のエゴで地元大学を勧めるケースもあるようです。
そういう指導は、生徒にバレバレなのでもう少し上手く理由を自分の中で固めたほうが良いと思います…