2024年5月の記事一覧
ごんぎつね その後二次創作
自分の言葉をごんがどう受け取ったのか、兵十にはわかりませんでした。実際のところ、彼の言葉には失望の色がありました。おっかあに先立たれ、気にかけてくれる人のいないと思い込んでいた自分に、くりを、まつたけを、形ある愛情を足元にぽつんと置き去ってくれた、まだ見ぬ何者か。友人の加助にこの話をしたとき、加助は「そりゃあ、神さまのしわざだぞ」と何でもないように言いました。彼の言葉を、馬鹿げていると切り捨てる
もっとみる魔女。と、旅人【書くのに二時間くらいかかっちゃった短編小説】
「お嬢さん、お名前は?」
「……魔女」
旅人の質問に、魔女は風に靡く髪を手で押さえながら答えた。
「っはは、キミ面白いね。そうじゃなくて、お名前、教えてよ。呼びづらいじゃん」
「……?」
旅人の言っていることが本気で分からない、というように魔女は首を傾げた。彼女の生まれ育ったこの街では、魔女と言えば彼女ただ一人を指す固有名詞だった。生まれた時には何かもっと別の名前があった気がするが、彼女
雪かきと、善意の小路【90分くらいで書いた短編小説】
「こちらお釣りと、レシートになります」
「どうも、ありがとうございました」
店員さんに軽く頭を下げ、先に会計を済ませていた一平に「待たせたね」と声をかける。
「ありがとうございましたー」
二人そろってコンビニを出、二人並んで歩道を歩く。道の端には、昨晩降った雪が積み上げられていた。レジ袋から購入したばかりのピザまんを取り出しながら、一平はニヤニヤとした表情で僕に話しかけてくる。
「お前
30分くらいで書いた短編小説「音楽の力」
「♪~、♪~~」
少女の歌声がか細く響く。小さな公園には、少女の他に少年が三、四人。
「バーカ」
「何か言い返してみろよ」
少年たちが笑うのに合わせ、ランドセルが揺れる。その声を掻き消すように、少女は徐々に声を張り上げていく。
「ネクラ」
「……ち、近寄んなよ、ショーガイがうつる」
対照的に、少年たちは気勢を削がれたように徐々にトーンダウンしていく。
「……グズ」
「えっと、のろ
一時間くらいで書いた短編小説「瓶詰めの妖精」
その町では、妖精をペットとして買うことがブームになっていた。
小人のような体と虫のような薄い羽をもち、鱗粉をまき散らす妖精。彼女たちには様々な品種があり、体の大きさや生態も様々だ。中でも小さくて飼いやすいとされている品種は、手のひらに乗る程度の小さなガラス瓶の中で飼育されることが多い。
――ずり、ずり、ずり。
エサは花の蜜、瓶の上の方からスポイトのような器具で流し込んでやる。掃除は週
一時間くらいで書いた短編小説「物言わぬ協力者」
「やっぱりノルルの書く歌詞はいいね。情景が浮かんできそう」
送られてきた歌詞を上から下までじっくりと眺め、私はうっとりとした声音で言う。
「ノルルに頼んでよかったなあ、やっぱり。持つべきものは作詞のできる友達だね!」
画面の向こうにいるノルルは何も答えない。が、私は気分を害することもなく発言を続ける。
「じゃあこれ、いつも通り栗坊んとこ持ってって曲付けてもらう感じでいいよね?」
ノ