(2)人を愛すること…それは小さな自分自身を励ましながら生きていくということ
あなたが黙ったままで
行ってしまった後
例えば
笑いすぎた後の空白感のようなものに
惑わされなかったのかもしれません
宛先さえわからない手紙を書こうとして
ペンを持っても
開いた便箋のページを閉じてしまうような
そんな意味もないこともしなかったでしょうに
確かに
戸惑いやためらいが
私になかったと言ったら
それは
きっと
嘘になります
あなたが
あの女性(ひと)と会うってこと
いいんです
ただあの女性(ひと)が
あなたを
ずっとずっと
想っていたということが
なぜか
こんなにも辛いのか
そう思っている自分が
悔しくて惨めです
そして
また
あなたのことが恋しくなっていくような
自分がいることを確かめることが
怖いだけです
いろんなことが空回り
喜んだり
悲しんだり
そんなことが幸せなのかもしれません
いろんな想いを
たぐりたぐり
それに満足できない
私も
あなたも
あの女性(ひと)も
わがままでしかないのでしょうね
それにしても
私も
あなたも
そして
あの女性(ひと)も
ことばにならない想いを
渦巻かせて
何かの確証を得ることもせず
想うことは
むしろ悲しさであることを知って
そして
それ故に
割り切ることさえ出来なくて
いろんなことを聞きました
時間(とき)が
蘇ればいいのにと
イヤなことを
考えます
首振りの子犬
薄い単行本
お寺のお守り
手紙の束
数学の試験用紙の添削
あなたの名札
手探りしても
指先にさえ
当たることのない未来が
怖いくせに
想いを「愛」と呼ぶのならば
人を愛すること…
それは
小さな自分自身を励ましながら
生きていくということ