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07 病み上がり。大磯で箱根駅伝を初観戦してみた

お正月と言えば、「箱根駅伝!」と答える人は少なくないだろう。そういえば亡き父も毎年ラジオやテレビで観戦していたのを思い出す。

大磯に移住して初めての年末年始を迎えるということで地元の方々にお正月の過ごし方などを尋ねると、口を揃えておすすめされたのが「箱根駅伝」だった。もともとスポーツ観戦に興味があるほうではないけれど、地元民の言うことは試したい気持ち満々なので楽しみにしていた。

しかし年末に伍浪、花子揃って風邪をひいてしまって病み上がりということもあって、観戦の計画は直前まで立てず、気合を入れずその時の天候と体調に任せようということになった。

2日、大手町のスタートからテレビで観戦し、4区予想通過時刻の15分くらい前になってようやく、ばっちり防寒対策をして家を出てみたら、わらわらと人々が現れ同じ方向に向かって歩いているのが見えた。陽射しを受けた表情は花見やピクニックにでも出かけるかのよう。ここは住宅街なのでこんなにたくさんの人が一度に路地を歩いている景色を見るのは初めてだ。目的の海岸沿いの道路に出ると、雲のない青空が広がり道の両側には応援の小旗を手にもつ小さな子どもたち、飼い主に抱えられたわんこ、ファミリー、学生、女子グループ、老夫婦もいる、ほとんどがこの町の人々だろう。あちこちで挨拶が交わされている。


初春のおだやかな陽気 のどかだ

そこにはサッカー観戦みたいに特別なグルーヴ感や連帯感が生まれるといったハデな盛り上がりや興奮があるわけではなかった。選手が走ってくるのを待つワクワク感はあるものの、どこかひたすらのどかで朗らかな雰囲気。競技の性質によるものか、ロケーションによるものなのか?気持ちよくって、病んだ肺いっぱいに空気を吸いたくなる。

お正月というのは、毎年澄んだ空気に包まれる。大晦日までには多くの人が大掃除をしたり、なんらかの片づけや始末をする。そして年が明けると一斉に「あけましておめでとうございます」という言葉がそこかしこで繰り返される。その行為が形式的であれ、皆が祓い清め寿ぐのは一年の内でもこの期間だけではないだろうか。
加えて駅伝観戦では、ゴールに向かって全力を振り絞って走る選手らに向かって、往復107.5kmの沿道で人々が小旗を振り振り声援を送る、檄をとばす、拍手でエールを送る。選手側からすれば沿道の声援は力になると言うし、応援する側とすればたとえ推しの選手や大学がなくても、真っ直ぐに前に向かって走る姿を見ると、気がつくと「ガンバレー」とか、拍手とか勝手に身体が反応してしまう。応援してエネルギーを放出しているんだけど選手(リレーしていくチーム一丸)の凄いパワーがこっちにも流れてくる。


こんなに間近!前進するエナジー全開💨

このエネルギー、見えないけれどエネルギー交流の渦が生まれているはず。天上からの視点でこれを可視化できたら107.5kmにわたってすんごいボルテックスを起こしてるんじゃないかと、想像した(発電できたらいいのにと真剣に思う)

わらわらと集まった人々は、最後尾の選手が通り過ぎると、あっという間に散り散りに消えていった。続きを帰って観戦するためなんだろうな。そのあっけなさがまたなんとも小気味良いのであった。

普段見慣れた景色や、訪れたことのあるスポットを背景に、繋いでつないで走る箱根駅伝。10時間を超えるロードムービーのほんの一コマを人々と共有する。私にとってここ大磯での観戦は祭といった特別なものというより、どこまでも日常と地続きの感じがあって病み上がりの身にもすんなりエントリーできて、結構いいもんだったな。

〈花子〉


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