末世のアリス 【詩】
ついにそのときが来て
ザザザザザと乱れ飛ぶ数式たち
鏡の中のチェシャ猫が笑う
午後の紅茶の時間
ウサギたちが
お茶を注いでくれる
透明なカップに海亀が泳いでいて
甲羅に空いたドアを開けてみると
末世のアリスが笑っていた
この国の未来について話し合っていた
遠い昔の午後
水陽炎ゆらめく天井に目を泳がせ
科学技術の未来を話し合っていた
遠い昔の午後の斜め向かい側
この国の頭脳が集結した座談会では
死語を駆使した議論が佳境であったが
今日この頃では
語彙も底をついてカラカラ鳴るばかり
予想したとおりの惨事です、と
湯川博士談
鏡の中で笑い転げる
末世のアリスの
顎が外れたみたい
目を遠くしたあの方々の瞳の中にも
それぞれのエンドロール
まだ三月だというのに
地中のねずみたちがむずむずしている