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コメダ珈琲随想録(1281文字)

土曜の朝、私はコメダ珈琲に居る。

休日は混んでいるのでカウンターに案内されることが多い。
そのほうが嬉しい。
二人席や四人席に案内されてしまうと、少し居心地が悪い。
待ってる人は居るだろうかと常に気を配らなければいけなくなる。

なにより、窓際に面したカウンターから駐車場を眺めるのが好きだ。
ちょうど駐車場に車が入るところだった。
運転している70代とみられる男性と目があう。
この人がアクセルとブレーキを踏み間違えたら私は死ぬな、なんて思う。
勿論そんなことはなく、とてもスムーズに駐車を終えた。
心のなかで非礼を詫びる。

***

ドリンクはコメダブレンドのたっぷりサイズ(1.5倍)を頼む。
ゆっくり読書を楽しみたいからね。
今はモーニングの時間なので、無料で厚切り食パン半分がついてくる。
トッピングが選べる。
ゆで卵か、たまごペーストか、小倉あん。
ゆで卵を選ぶ。
貴重なタンパク質摂取の機会だ。
野菜も摂りたい。
いつもはコスパのよいミニサラダだが、今日はコールスローサラダにした。
ルーティンの中にちょっとだけ変化を入れるのが好きだ。

モーニング以外の時間はドリンクを頼むと豆菓子が付いてくる。
塩気と豆本来の甘味の相性がよく、クセになる。
お酒のアテにもなりそうな味。
今は朝だから付いてこないけど、ひとつ10円で注文できる。
今日は特別に追加した。

注文したものが運ばれてくるまでの間、メニューをパラパラとめくる。
大体のメニューは制覇した。
今度おすすめフードへの愛を語る記事でも書こうかな。

***

このコメダ珈琲に通い始めて3年になる。
あと半年後には違う街に移る。
そこにもコメダ珈琲があればいいと思う。
結婚しても土曜の朝をひとりで過ごしたいと思うのは私の我儘だろうか。
運ばれてきた珈琲を飲みながら考える。

ブラックで最初の一口を愉しんだあと、ミルクを入れる。
カップもちゃんと温められているところがよい。
首元を出した服は春先の今日にはまだ早かったみたいだ。
温かい珈琲を飲んで初めて、自分の身体が冷えていたことに気がついた。

***

偶然にも右と真後ろのボックス席は幼い子供連れだ。
騒がしすぎる。
今日は読書は無理そうだと、笑う。
この騒がしさを可愛いと思えるってことは、今の自分はけっこう幸せらしい。

お子様限定の「だいすきプレート」を頼んでいた。
私も食べたいけどお子様じゃないので頼めない。
大人になって自由を得たはずなのに、できないことが増えた気がする。
公園の遊具で遊ぶとか、大声で歌いながら帰宅する、とか。

***

レジ横に豆菓子が売っている。
30袋で300円。
珈琲一杯より安い。
けど買わない。
1袋を大事に食べて、10円払ってもうひとつ食べようかしら、と思案するのがいい。

PayPayが「ペイペイッ」と鳴く。
キャッシュバックキャンペーンのルーレットが回る。
めったに当たらない。
やっぱりはずれた。

PayPayの支払い履歴を見ると、週に一度「コメダ珈琲店に支払い」と表示されている。
変わらない日常があることに安心する。

外に出た。
肌寒いが快晴だ。
トレンチコートの袖口からは冷たい風が入ってくる。

少しだけ散歩してから帰ろう。

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枝折(しおり)
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