【SS】沈んで、浮かぶ(3981文字)
宮古島の食材をふんだんに使用したフルコースを前に、新婚旅行の最初の晩、琴音は静かな絶望を味わっていた。この先、目の前で黙々と咀嚼を続けるこの夫と、気の遠くなるような年月を添い遂げなければならないのか。
「……海ブドウってこんなにプチプチしてるのね。美味しい」
「うん。海ブドウは美味しい」
夫の優人は一世代前のロボットのように同じ言葉を繰り返した。琴音は一瞬、呼吸を止める。溢れ出そうなため息を閉じ込めるためだ。そのまま何も言わずにくいっと口角を押し上げ、泡盛がベースのカクテ