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【ほっこり読める小説】塩のサジ

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オリジナルの小説を書こう!と長年の夢を形にしました。「塩かげんのサジかげん」と題し、省略して「塩のサジ」。10分程度で読めるショートショートをベースに書き連ねていきます。まずは、…
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#SF

【短編】交差するXと処刑するYの傾き

 早い話、イタチごっこだ。一匹見つけたら十匹いる、ゴキブリの駆除なのにイタチの例えはスン…

塩かげん
3週間前
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【短編小説】地獄の休日出勤

 「山形さん、無理ですよぉ。そもそもですよ、罰として送り込まれる場所に、移住したがる人っ…

塩かげん
2か月前
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【短編小説】自白タイピスト

 ジメジメとした取調室には、水仙が活けられていた。似つかわしいとはとてもいえない、取り調…

塩かげん
2か月前
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パンとサーカスと、自転車に乗って【4】

第四話:思い出せない音を飲む  秀一が高校二年生になって高校を中退した頃、正美は病室には…

塩かげん
4か月前
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パンとサーカスと、自転車に乗って【3】

第三話:多用する読点 正美は集中治療室などではなく、普通の大部屋にいた。スマホとタブレッ…

塩かげん
7か月前
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パンとサーカスと、自転車に乗って【2】

第二話:カオスなショー 義務教育だから退学なんてわけにもいかず、正美はそのまま地獄の二年…

塩かげん
7か月前
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パンとサーカスと、自転車に乗って【1】

第一話:パンとサーカス  「パンとサーカス」  パンとサーカス、食料と娯楽で満足になって政治に無関心になるということを表している。ユウェナリスという詩人の言葉らしい、と久保隅秀一は、高校時代の歴史か古典の教師が授業中に熱心に語っていたのを思い出した。  学校で毎日、同じことを繰り返す、秀一はうんざりしていた。勉強ができたにもかかわらず、くだらないと一蹴し、高校二年の秋に中退した。すべて中途半端だ。二年の秋、夏休みを二回越えてようやく決断している。もう一年ほど通えば、高校卒

【短編】わかりあう、ふたり

「ねぇ、もう終電なくなるんじゃない?」  早田早紀は澤井雄二の断固として帰らなさげな素振…

塩かげん
9か月前
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【短編小説】最初から、好きだったふたり

「吉野くんのことは嫌いじゃないけど、恋人っていうか付き合うっていうのは、なんというか」 …

塩かげん
10か月前
39

【短編小説】埋める、悪党

 どうにもこうにもおっかねぇ。小学校の通学路にまた、ひび割れができていやがる。  独り言…

塩かげん
10か月前
16

【短編】隕石に、眠る

 不治の病って、ふじの病なのか、ふちの病なのか。どっちかなんて、まぁ今考えても仕方ない。…

塩かげん
11か月前
33

【短編小説】夢見る家族

 六月八日(木)、午前十時  田辺健一はスマホの着信音で目覚めた。会社からだった。そのま…

塩かげん
1年前
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俺を、昼に葬るな【後編】

 前回のおはなし↓  芳野はあれから何度か、タイムホールに突き落とされていた。もう四回目…

塩かげん
1年前
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俺を、昼に葬るな【前編】

 俺の身体にはウイルス型の時限爆弾がセットされている。正確には一定時間が経つと、身体の中ウイルスが体外に放出される。どんなウイルスかはわからない。きっと俺の体内にカプセルみたいなものが埋め込まれていて、それが時間経過で溶けだすんだろう。あと、十一時間しかない。  ウイルスが外に放出されると同時に俺は死ぬんだ。まだ彼女もいないのに。  芳野淳は部活もせず勉強に明け暮れた。やっと大学生になったばかりの頃、身体の中に異物感があったので、整形外科で診てもらった。 「芳野さん、ご両親