12月1日 弘前駅(青森県) ~歴史は想いをつなぐ~
弘前は古くから江戸幕府 弘前藩・黒石藩領地の中心地として発展し、現在でも津軽地方 代表都市として存在感のある町である。それだけに鉄道の開通も早く、日本で初めての鉄道が新橋~横浜間に開通した22年後には、早くも弘前城下で汽笛が鳴り響いている。
「狭い日本」とは言うが、それでもこの短い時間で、日本中に網の目に延びていった鉄道網をいま乗っていると、鉄道に対する大きな期待とそれを実現させようとする先人の努力に触れている気がする。何事にも常に感謝の気持ちを持っていたいものだ。
朝8時、夜行バスを降りると、弘前駅前は小雪が舞っていた。それでも朝の町は変わらずに動いていて、到着する列車から人は流れて、また発車していく列車に人は吸い込まれていく。日常ではあるが、人の温もりにほっとする。
みどりの窓口は定期券の更新や年末年始の列車予約にと賑わいを見せていた。やがて列が消えて一番最後に並んでいた私の番になった。津軽訛りの優しいトーンの男性駅員さんは話好きな方で、きっぷを発券しながら「今日は弘前駅の開業記念日ですが、今年は特にイベントはやらないですね、夕方に駅舎や駅前のイルミネーション点灯イベントを行いますよ。」と教えてくれた。弘前駅ではここ数年、毎年の開業記念日に何かしらのイベントを開催しているのだという。忘れがちな歴史がしっかりと受け継がれているのは嬉しい。
これから、川部駅や浪岡駅に向かうことを話すと、「今日は雪が降り続いていて、ポイントが凍って動かなくなったら、列車が遅れるから早めに行った方が良いですよ。」と鉄道好きな私に、なかなか興味深い話し方で心配して教えてくださった。それからも次のお客さまが入ってくるまで、しばしお話を聴いて、私は胸が温まった思いで列車に乗り込んだ。
2つの駅の訪問を無事に終えて、私は弘前駅に戻ってきた。時刻は17時30分、日は暮れて雪はしんしんと町に降り続いている。
コンコースには人が集まり、カウントダウンが行われていた。イルミネーションの点灯である。白い制服に身を包んだ駅長と近隣の子どもたちが揃ってボタンを押すと、目映い光の芸術が駅を取り囲むように、照らし始めた。弘前城のさくらやりんごをモチーフにしたライトアップは特に目を引いて、子どもたちが喜んでいたのは微笑ましい。これからも人々の想いをつなぐ駅であってほしい。