11月22・23日 石狩沼田駅(北海道)~分岐点~
広大な自然風景と歴史ロマン溢れる「北の大地」は昔も今も訪れる者を魅了してやまない。そんな地を縦横無尽に走る鉄道もまた旅情をかきたてるが、人と暮らしの変化によって次々と姿を消している。
今回は来年3月末で、形を変える留萌本線の開業記念日の旅に出た。
11月22日9時 新千歳空港、清々しい青空の下旅は始まった。雪はまだ見当たらないが、冬将軍の洗礼を受けて寒い。
アイヌ語の名残を駅名に当てた小さな駅をいくつも過ぎ、小雪舞う中を北へ北へと進んでゆく。再び青空が顔を出した12時28分 深川駅に降り立った。
深川駅から、ニシン漁で繁栄した日本海漁場の地 留萌へとレールを延ばすのが留萌本線である。いまは全長50キロの道のりを1日7本の列車が行き来する「小さな本線」だが、かつてはいくつもの分岐させた鉄路を延ばし、海産物や石炭輸送に活躍した。そのネットワーク網も時代とともに次々と失い、ついに自らも来年3月末で石狩沼田~留萌駅のレールを失うことになってしまったのだ。
13時28分発 留萌ゆき1両のディーゼルカーには別れを惜しむ旅行者がカメラを向けたり、軽食を広げたりと思い思いの時間を過ごしていた。それに混じり早帰りの女子高生が何人か乗っている。参考書を開いて真剣に読んでいる子、「今日はずいぶん乗ってるね」と2人で話し合っている子、「初雪はいつなんだろうね」という声も聴こえる。
私は途中の石狩沼田駅で降りる。来年の廃止は免れたが、数年先には危ぶまれる分岐点である。
石狩沼田駅では女子高生もかなり降りて行った。地元利用としてはこの辺りまでが多いのだろう。
列車が去ってゆくと辺りは広大な大地を駆け抜ける冷たい風の音が聴こえるだけだが、何と駅のきっぷ発売窓口まで閉まっており静寂に包まれているのには、大いに焦った。
明日11月23日が開業記念日だが、祝日の窓口休みにあたるため、営業している今日に来たのだ。しばし待つが、人の気配が全くない。諦めて町歩きをして、郵便局で話を聞くと「営業は午前中だけでは…」とのこと。さすがに絶望感が襲うが、「記念入場券」というきっぷも発売されており、それは近くのコンビニエンスストアでも発売されているようだ。早速コンビニに向かうと、明日23日も発売されているようで、やっと安堵する。
遅い昼食を取っていると、早くも日が暮れてきた。時計は16時である。寒い手に息を吹きながら足早に駅に戻ると、ひっそりと窓口に灯りがつき、すでに買い求める旅行者がいた。あと25分後には列車がやって来る。どうやら発着前後の営業のようだ。
窓口の若い男性は手慣れていたが、手作業で書き込みながら発券するきっぷは大変そうであった。23日のきっぷは買えないが、私も少しばかり購入した。翌23日の早朝にはコンビニエンスストアで記念入場券を購入した。