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いまコラム

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町の歯医者さんとして、書店を所在無げにうろつくオジサンとして、子供たちの明るい未来を願う一小市民として。
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53才のブルース

53才のブルース

町でかっこいい車を見かけた。
いいなぁ。
俺も大きくなったらかっこいい車に乗りたいなぁ、
と思った。
が、よく考えたら、
けっこう大きい53才だった。

続・極私的英語講座

続・極私的英語講座

「little」の発音に苦しんだ22年後、「-tle」発音で世界に問いかける千載一遇のチャンスに巡り合った。

2005年に米国シアトルでのセミナーに参加。その米国入国時、税関で「youはどこいくの?」と問われた。デジャブ。「すぃぁるぉー(私にはそう聞こえる)」でいくか?「しあとる」でいくか?他の参加者が苦戦する中、自分の耳を信じた。

心臓の鼓動を感じながら、

「すぃぁるぉー」

すると税関職

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極私的英語講座

極私的英語講座

中学生時分、時のスターMichael Jacksonは「マイケル・ジャクソン」だったが、米国MTVでの発音を聞いて「あれ?本当は『ゥマイクゥ・ジャキスン』なの?」と思った。試しに自分で発音すると何となくそれっぽく聞こえる。これは大変だ、このまま日本的英語発音に身を置いては将来国際的に交渉する場で通用しない、何様のつもりかそう勝手に思った。そんな想いを決定的にした単語があった。それはMadonna、

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父について

父について

父が亡くなり25年。中学校教員の父は小柄で痩せていて髪も薄くいつも伏し目がち、口数は少なく笑顔はほとんどない、という自信無さげな印象漂う男だった。30代で教頭に就くとその後定年まで校長になることもなく管理職。たまに運動会だということで白い体操着に着替えた父のヨレた姿がいやだった。私は父が40才の時の子ども。たまに一緒だと「い~ね~、おじいちゃんと一緒で~。」と言われ続けた。「おじいちゃんじゃなくて

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嗚呼、栄光の時よ永遠に

嗚呼、栄光の時よ永遠に

むかし、勢いよくスイカを食べていた。

それを見た彼女(のちの妻)が、「わいるど〜」と幸せそうに言った。

胸が高鳴った。

小躍りするようにガツガツ食べた。

哀しいかな、男はそんな栄光の時をいつまでも忘れない。

そう、決して忘れたりしない。

ひとまわり以上年上の男性患者さんは時々インコースをえぐる。

ひとまわり以上年上の男性患者さんは時々インコースをえぐる。

「先生は車に興味がないのですか。」

「な、なんですと!いきなり失礼な質問です。あ、あのワンボックスカーは最高と思って乗っているのです、ムキッ。」

「そ、そんなムキになるとは大人気ない・・・。あ、そうだ、ゴルフはしないのですか?よくお医者さんはするでしょ?」

「ゴ、ゴルフはお金持ちの遊びと決めつけて避けていました。自然を破壊して享楽に耽る人類の荒んだ一面の表れと偏見の目で見ていました。」

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母がくれた言葉

母がくれた言葉

昨年夏、母を看取りました。

なんというか、あらためて母というのは特別な存在、ですよね。母は優しくも、間違いなく猛母でした。

昭和8年生まれの母は戦時下、栄養失調・空襲・疎開体験からの生涯に通底する戦争への憎しみがありました。戦後、女の子は良いお嫁さんに路線へ。しかし高校家政科卒業後就職、職場での女性の処遇に違和感を覚えるのに時間はかかりませんでした。加えて、学歴を理不尽に自慢する男どもに腹をた

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