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読後コラム

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読んだ。感じた。いろいろやっちまった。
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今も心にあの一冊 「有夫恋」 時実新子

今も心にあの一冊 「有夫恋」 時実新子

今は亡き時実新子さん。この本のページをめくる度に走る衝撃的川柳の数々。今も定期的にページをめくって心をザワザワさせたくなってしまう。

去っていく足に乱れのない憎さ
みな善人で銃殺刑である
男の嘘に敏感なふしあわせ
投げられた茶碗を拾うわたしを拾う

初めて読んだ時は、な、なにこれ?川柳ってなに?と戸惑った。そして短い句が放つ心えぐる爆薬の数々にすっかりやられていた。

25年前、中日新聞の夕刊で

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今も心にあの一冊「Drクマひげ」史村翔原作・ながやす巧作画

今も心にあの一冊「Drクマひげ」史村翔原作・ながやす巧作画

二十歳越えて人と目を合わせられず100%劣等感。勝手な論理で「堂々とした大人」になるには多く本を読むしか無いと考えました。世界を理解すべく振り子のように極論と極論を往復し、その振幅の中で中立や普遍に収束したいと願いました。
無理に難解な本や興味が無い本も開きました。それぞれの書物の世界はこの下宿では地続きでした。人間の異常性や奔放な性、精神病理から日常を浮き彫りにする文章群に軽々と振り回されました

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今も心にあの一冊「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン著

今も心にあの一冊「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン著

高校生になると女子と話せない異常さいよいよ昂まり、なまじラジオ、音楽や小説などから影響を受け、さまざまな要素が混在する受け売りひとり上手人間へ。
妄想の世界では湘南の海岸道路でポニーテールの女の子をバイクに乗せ「あいつのことなんか忘れちまえ。」と相当カッコ良く叫んだりした。
海岸にバイクをキュッと停め、なぜかたわわに実ったトマトを「ほらよ」と彼女に投げる。二人してトマトにかぶりつく。するとプシュー

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今も心にあの一冊「オーパ!」開高健著

今も心にあの一冊「オーパ!」開高健著

名古屋市営地下鉄「中村公園駅」界隈は名古屋市西部に位置する下町風情に満ちた街、その生まれ育った街で私は鍛えられた。
小学生時分、オカダヤ百貨店で計3回カツアゲにあい、初め2回はお金をまき上げられた。3回とも同じ他校上級生と思われる目を細めてオラオラ体を揺らすいかつい3人グループだった。
初め2回は脅され完全にビビって言われるままに小銭を出してしまった。無傷でキレイなままお金だけ取られた情けなさに地

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今も心にあの一冊「ドラえもん第6巻」藤子不二雄・作

今も心にあの一冊「ドラえもん第6巻」藤子不二雄・作

小学校のドッジボール大会がある前日などはなかなか寝つけなかった。
明日は何としても最後まで残って無茶苦茶速いボールが来てもビシって受けて、猛烈なスピードで投げて相手を次々弾き出し、クラスのみんなからいっぱい声援をもらって女の子からもキャーキャー黄色い声があがってうわぁオカザキくんってこんなにすごいんだぁ、なんて言われたらどうしよう、いや、言われたい!一度でいいからなんとしても言われたい!などと布団

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