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【約空想日記】シンデレラの私は階段を降りれない。

通りすがりの靴屋で一目惚れをした靴があった。
直近で似たような靴を買っただとか、今は節約しなきゃ行けない期間だよ?とか気にならないくらい一目惚れした靴。

吸い込まれるように店内に入り、店員さんに自分のサイズを告げいざ試着……できなかった。
靴は脱いだ。でもまた履いた。

言い訳すると、その日はとてつもなく寒くて、人に会う予定もなくて、
「私があたたかいこと」
が第一優先だったわけで。
もっこもこのコートに愛用170デニールの黒タイツ。
そう、お手入れを怠ってたとかじゃなくて愛用していただけで……。
ここまで言って思い当たることがない人はどうかこの15行のことは忘れて、そっとこのページを閉じて欲しい。そのままの毎日を継続して、どうか。

「サイズいかがでしたか?」
とにこやかに聞いてくれた可愛い女性店員さんに
「すみません、今日は厚手のタイツを履いて来てしまったのでまた日を改めて来ます!」
なんてよく分からない言い訳して、そそくさと目の前の本屋に逃げ込んで。


くやしい。

ときめいたのに。
明日になったら売れちゃうかもしれないのに。
毛玉が恥ずかしいなら始めから履かなければいいのに。あっ、言っちゃった。

ごめんね。

私のために靴を持ってきてくれた店員さん。
温かさを優先させて毛玉の着いたタイツを履かされていた私の足。

「いつデートに誘われても100点が私のポリシー」

と言っていた彼女に憧れ努力していたけれど、まだまだ詰めが甘かった。


12時の鐘が鳴り、シンデレラは走り出す。
もしも、あそ場にいたのが今の私だったら。
このタイツを見られたくがないためにノータイムで引き返し、王子からガラスの靴をぶんどっていたかもしれない。いや、それよりも姫を探し出し、目の前で靴を脱げと言われていたらと考えると目も当てられない。

私は、予告無くデートで座敷を選び靴を脱がせる男の人とは付き合えないな…。なんて見当違いのことを考え始めて。「1度部屋に帰ってタイツを脱ぐ」という奇行ごとまるっと愛してくれる素敵な方を捕まえるか…なんて夢を見て。

将来の夢はお姫様。
1度は憧れる人もいるであろうシンデレラ。
私は今日、魔法使いがチャンスをくれた時。落としたガラスの靴ごと王子の手を取るくらいの女になると決めた。

2022/01/20/23:57

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(題名別案)
「シンデレラの魔法は一目惚れに似ている」

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(追伸)
青色のワンピースに身を包み、際立つ白の靴下を履いて再度買いに行きました。

2022/01/21/16:26


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しの
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