キャラクター語り:シャルル七世【小説:Tristan le Roux/赤髪のトリスタン】
アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)の未邦訳小説「Tristan le Roux/赤髪のトリスタン」を底本にしています。
総合目次:
神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー(Tristan le Roux/赤髪のトリスタン)
訳者あとがき:キャラクター語り
翻訳者だって「ひとりの読者」としてネタバレ感想書きたい!
そんな主旨で、好き勝手に語ります。
ここからは、各章の「登場人物紹介」ページの順番にならって、私が思ったことを書いていきます。
シャルル七世(26歳)
悩み多きフランス王。
額で切り揃えた髪に縁取られた輪郭、知的で思慮深い端正な顔だち。
穏やかで才気あふれる人格者だが、善良でありたいと願うあまり、悪事を許してしまうところがある。母妃イザボーが神を忘れて父王シャルル六世への貞節を失ったことを嘆き、自分は父の実子ではないのではと血筋を疑っている。
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シャルル七世について:ネタバレあり
第四章〈シャルル七世〉編「15話 シノン城」ではさびれた城内の様子と、貧相な食卓が出てきて、小姓エティエンヌに言いたい放題にけなされるシーンがありました。
第一章〈カルナックの善良な伯爵〉編では、オリヴィエの豪華な居城と豊かな食卓が、第二章〈ラヴァルの邪悪な伯爵〉編では、ジル・ド・レのホラーじみた居城と卑猥で血生臭いムードの食卓が出てきました。
三者三様、城主の個性が表れています。
最高権力者であるはずのシャルル七世がもっとも貧乏くさい。
それでいて、一番楽しそうに見えます。私がシャルル七世推しだからそう見えるのかな。
オリヴィエ、ジル・ド・レ、シャルル七世。
お城に招待されて食事をともにするなら誰がいい?
*
シャルル七世は、トリスタンが欲しいものを全部持っている人です。
トリスタンは「幸せを手に入れるための条件」だと信じてますが、シャルル七世は王であるが故に「気に入った人を自由に愛することができない」と嘆きます。
個人的に好意を抱いた相手が不幸に見舞われる光景を何度も見てきた。
絶望しないために、誰も何も愛さず、無関心でいようとしていた——と。
エティエンヌの訃報を聞いて、「自分の王国を見つけた喜びよりも、友人を失った悔しさの方がはるかに大きいというのに」と言いながら泣いていました。
ジャンヌが有名すぎて目立ちませんが、シャルル七世もまれにみる数奇な人生を送っています。
ジャンヌと出会う以前の状況について、ざっくり補足してみます。
狂王シャルル六世と淫乱王妃イザボー・ド・バヴィエールの10番目の子(末っ子で五男)として生まれて冷遇されて育ちますが、兄王子たちの連続死で14歳で王太子となり、パリに連れ戻されます。父王が精神を病んでいたために、王太子=摂政でもある(無茶ぶりがすごい)。
1年後(15歳)、母妃と愛人ブルゴーニュ公がクーデターを起こし、多数の犠牲者を出しながらパリを脱出。
さらに1年後(16歳)、和解交渉の席で、王太子の側近がブルゴーニュ公を殺害。結果的に、シャルル七世は廃嫡されてしまいます。
なお、最終章「処女検査」の異端審問で「シャルルはブルゴーニュ無怖公を殺した実行犯なのか、あるいは殺させたのか? 彼は上手くやったと思っているのか?」と問いかけられているのはこの件です。シャルル七世自身は殺害計画を否定しています。
諸説ありますが、14歳で王太子になるまで政治と無縁だった少年が殺害計画を主導したというのは考えにくいと、私は思います。
19歳のとき、父王の崩御でフランス王シャルル七世として即位。
そして……。
*
また語りすぎていますね。キャラクター語り(11人目)最長記録です。
推しの話はやめられない止まらない!!
ジャンヌと出会う前のシャルル七世に興味ある人向けに、昔書いたエッセイ「暗愚か名君か、ジャンヌ・ダルクではなく勝利王シャルル七世を主人公にした理由」を置いておきます。約3000文字。
総合目次:
小説後半について
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【URL:神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー】
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