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こんなに素敵な物語だったとは…◇秘密の花園

 小学生のころから存在を知っていた名作ですが、じつは、いまになってはじめて読みました。
 F.H.バーネット『秘密の花園』。

 複数の出版社からいろいろな翻訳本が出版されている中で、今回私が読んだのは、2024年3月に教文館から出たばかりのハードカバー(訳:脇明子)です。常体(だ・である調)で訳されていて、大人も読みやすく、ジェリー・ウィリアムズの挿絵も素晴らしい!
 そもそも、長年読まずにいた名作をなぜいま手に取ったかといえば、「教文館が出している?」と興味を持ったから。キリスト教系の出版社である教文館は、大好きな版元さんです。

 そして、読んでみてびっくり。
 こんなに私好みの作品だったとは!
 親の愛情を受け取れずに育った少女と少年の、美しい再生の物語です。

 どうしていままで敬遠していたかといえば、内容を完全に誤解していたせいでした。明るく元気でみんなの人気者の女の子が、秘密の花園を探検する話だと思っていました…。
 つまり私は「明るく元気でみんなの人気者」というキャラクターが苦手だったので、勝手な思い込みでこの物語を避けてきたのです。

 それが、ちょうど作者のバーネット没後100年というこのタイミングで、読むことができました。これも、きっと運命でしょう。そう思うことにします。

(↓版元のブログにある本書の紹介。とてもいい記事です)

 有名な作品ですから、あらすじの紹介は割愛して、とりわけ心に残った箇所を引用させていただきます。

 コリンは、インドの苦行僧のことを説明したあとで、「おばさんは、魔法を信じてますか?」とたずねてみた。「信じてるんだと、いいんだけど。」
「ああ、信じとるよ、坊や」と、おっかさんは答えた。「その名前で知っとるわけではないけど、名前はちごうても、ええじゃろ? フランスでも、ドイツでも、ちがう呼び方をしとるに、決まっとるもんな。種から芽が出てきたり、お日さんが照ったり、坊やがええ若い衆に育ったりするんも、おんなじ力が働いとるからで、そりゃ、ええ力に決まっとる。わたしらのように、貧しうて学のないもんは、勝手な名前で呼んだらいかんと思うとるけど、そんなもんやない。大きゅうて、ええもんは、ちゃんと見とってくださる。ありがたいこっちゃ。そのええもんは、あたしらのこの世界みたいなもんを、百万も千万も、作っとられる。その大きなええもんを信じるのを――この世界がその力でいっぱいじゃと信じるのを、やめたらいかん。呼び方は、どうでもええ。
              ※太字は、原典で傍点がふられている部分。

F.H.バーネット『秘密の花園』

 ちょっと遅くなりましたが、この物語に出合えて幸せでした。


 それと、もうひとつ情報が!
 佐藤志敦@推し活翻訳家さんが、noteでバーネット作『MyRobin』のご自身による邦訳を公開されています。
 その名も『わたしのロビン君』。
「『秘密の花園』の翌年に発表された短編で、そこに登場するコマドリのモデルが主役」という、エッセイ調の作品です。作者の人柄が伝わってくるような、あたたかくて繊細な敬体(です・ます調)で翻訳されています。

 ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。


◇見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーから
devaagni2000さんの作品を使わせていただきました。
ありがとうございます。

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真帆しおん*MAHO Shion
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