東大世界史のカリスマ=大岡師の思い出
noteでお題「#こうして私は受験を乗り越えた」を募集しているので、1980年代の予備校全盛期を語ります。当時の大学受験生にとって、名物講師の授業は、単なる受験勉強を超えたモチベーションになっていました。私が最もお世話になったのは、代ゼミ現代文の堀木博禮(ひろのり)先生です。
(「東大現代文のカリスマ=堀木先生の思い出」をご参照ください。)
今回ご紹介するのは、東大世界史のカリスマ=駿台の大岡俊明師です。(堀木先生と同じく)板書なしでしゃべり続けるスタイルと、長髪・バンダナのヒッピーファッションで、異彩を放っていました。残された情報も少なく、未だに謎のベールに包まれた講師です。
大岡師の夏期講習「世界史テーマ別」は、瞬殺の人気講座でした。取れなかった生徒は、廊下から聞き耳を立てたり、取れた生徒に録音を頼んだりします。一問一答の知識ではなく、史実が深いところでつながっていると理解させる内容で、東大受験生の知的好奇心を満たしていたのでしょう。
私が最も印象的だったのは、大恐慌の論述問題です。大岡師は、政治経済の視点だけでなく、ラジオの普及やボクシング人気など、アメリカの大衆文化を踏まえて書くと解説されました。キーワードの羅列に終わらない、ことの本質に迫る姿勢が忘れられません。
当時の予備校の授業は、受験対策にとどまらない「学問の入口」であったように思います。今の受験生にはない「贅沢な時間」だったのかもしれません。