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伊豆天城山でハイキング-21
登山口にはコース案内図があるので写真を撮る。万が一を考えてささ家族にも撮っておいてもらおう。
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ここは周回コース、どっちから回ろうか。
持参してきたマップには断面図が載っているので、コースの高低差が確認できる。天城高原駐車場(ハイカー専用)を発着地点とした天城シャクナゲコースは万二郎岳と万三郎岳、二つの山頂がある。万三郎岳までは天城縦走路とコースが同じで縦走コースはその後、戸塚峠に向かって進んで行く。
スタート地点から万二郎岳までは傾斜が激しく、万三郎岳まではなだらかなようだ。急な傾斜を下りて行くのは膝への負担が大きいということで、今回は万二郎岳を先に行くことで決定。
コースも決まったし、さぁ出発だ。
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止まっていると寒くても山道を歩いているうちに体はどんどん熱くなるので、私とたぁは重ね着をして脱ぎやすい恰好をしている。木に囲まれた道に入ると温度がちょっぴり下がり、寒さに凍えないよう足を動かさないと。
なだらかな道を進んで行くと人工的な壁があった。
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足元には苔を付けたたくさんの石ころが転がっているから、もともとここには水の流れがあった場所でそれをコントールするためのものだったのかもしれない。
「四角い穴が三つ空いているね」
それは私が好む無表情な埴輪顔をしている。
「穴が三つあると顔に見えるんだよ」
ららが言う。
「うん、知ってる」
以前、天然石屋を経営していた時にお客さんから同じことを言われて、「あぁ、納得」と頷いたのを思い出す。
「うわぁ」
歩き続けると周辺には緑だけではなく色づく木々たちが見えてきた。紅葉が美しすぎて、つい歩くスピードが落ちる。
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前を行くささ家族に声をかけて紅葉と彼らの写真を撮り、たぁとセルフィを楽しむ。
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道は階段状だったり、土道だったり、石がゴロついていたりするけど歩きやすい道だ。
寒くても立派に育つかわいい苔たち。
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シンプルな命にいつも多くの力と癒しをもらっている。
標高1160mの四辻(万二郎登山口)にやってきた。ここを左に進めば万二郎岳へと向かい、右に行けば万三郎岳へと繋がる。
暑くなってきたので水分補給をしていたら、後ろから来た人たちが左へと進んで行くのを見て、「同じ方向だ」とちょっとホッとする。
ほんの少し標高が上がっただけで緑色はググっと減り、色づく紅葉の世界に囲まれた。
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のんびり写真を撮り撮り歩いているからどんどん抜かされていく。
一人ハイキングよりもカップル、友人同士など複数グループのほうが多そうだ。
「早く行かないと」
れんは抜かされ続けることに焦ったのか、ちょっと大きめの声でみんなにハッパをかける。
確かに彼の考えは正しい。
このコースの所要時間は4時間半であり、6時間かかることもあると言う。冬至が近い11月上旬、既に日の暮れは早く、さらに山の中となれば夕方4時には暗くなり始めるだろう。
だからこそ朝早く出発をしたかったのに、準備に時間がかかってそれが叶わなかった。それに確かにのんびりだけど止まることはなく遅すぎるわけではないし、この紅葉を楽しむためにここまで来たのだから・・・・・・
「まぁ、そう焦らずに」
そう、言ってみた。
リボンが木々に巻かれ、コースの目印になっている。たまにわかりづらかったり、先にありすぎたりしてわかりづらいこともあるけど、今回は5人グループだから一人間違えても誰かが気づく。それに残念なような心強いような私たち以外のハイカーもそれなりにいる。
グループの人数が多いとスピードが速い人に合わせるよりも遅い人に合わせることになる。私とたぁがささ家族の後ろを歩いていたけど、元々、たぁとの二人ハイキングでは前を行く私。話ながら歩いていたら気づけばららと前を行き、れん、ささ、そして(山では)隊長のたぁが続く。
彼は決して歩みがのろいから一番後ろにいるわけじゃない。安全を考慮したうえで、その位置にいるのだ。
お陰でみんなが安心して歩けます。ありがとう。
一人で写真を撮りとりしていて気が付いた。
ささ家族、誰も写真撮ってない。
「後で頂戴ね」
その言葉は何度か聞いたけど。
自分で撮らずに、他人任せ?
確かに写真を撮るって面倒な作業だ。だけど後のことを考えたら思い出残すって大切なことだよ。
「自分たちでもちゃんと撮ってよ」
「だっていつもはれんが撮るけど、彼のスマホ、メモリでいっぱいなんだもん」
そう言う、ささはカメラを出そうともしていない。
なんだ、その他力本願、ちょいとイラつくぞっ。
すると気まずそうにららがカメラを取り出した。
うんっ、いい子だ。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
これまでのお話
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