
伊豆天城山でハイキング-15
気づけば既に16時近い。この時間に宿に着いていたかったのに予定は未定だ。残り二つの滝を見るために急ぎ足で下流へと向かう。
階段を下っていくと出会滝が見えてきた。

名前は出会いでも流れは一本だけ。
出会ってないじゃん。
そう思いながら下っていくと別の流れがあった。

ただ滝同士が近いわけじゃないし、同じ滝つぼに水が落ちているわけでもなく、先で流れが合流しているというだけ。
うーん。
つい名前からイメージが沸いてしまうとそれを求めてしまうよね。
折角だから二つの滝を一つの写真に収めようと試みたけどうまく収まることはなかった。
さらに下っていくと高さ30m、幅7mの河津七滝中、最大の大滝が下に見える。滝を上から見えているからなかなかその全貌が分かりづらい。滝の下は川辺になっているけど階段で下っては行けず、別の道でそこまで行く必要があるらしい。
「下に行ってもなんだか変な場所から見ることになるし」
疲れたのか、面倒だと感じてしまったのか、それとも時間が気になったのか誰一人、れんの言葉に反するものはいなかった。

駐車場に戻るとお土産屋さんはまだ営業していたけど飴売りの彼は姿を消していた。これから一時間以上かけて伊豆高原駅の山側にある宿へと向かう。
国道135号線を戻っていくと海に沈む夕日が見えた。
「綺麗だね。どこかで停まって見ようか」
「いいよ。停まらなくて」
宿への到着時間が遅くなるだけだから。
だけど運転手でもなければ少数派の意見が通ることなんてなく、車は道路沿いの薬局の駐車場に停められた。
夕日は綺麗でも道路には車がひっきりなしに通るからどうしても写真に写り込んでしまう。
若干、彼らの行動パターンに疲れを覚えていた私は撮影する気にはなれず、代わりにららが写真に収めたものを使用させてもらおう。

「アオキ寄る?」
ドライブ中、ささ家族が何度もそう言っていた。
アオキって言ったらスーツの?
どうして今?
到着した先はご当地スーパーだった。
明日の登山用ランチをどこかでゲットしないといけず、ここが選ばれたのだ。
好きです、地元のスーパー。
土地ごとに特色があって東京ではお目にかかれないような代物に出会えることもあるから、つい買いもしないのに生鮮食品売り場まで見に行っちゃう私。
今、ランチを買っても食べるのは明日。賞味期限などを気にして私たちはパンを買うことにした。
「これ買おうかな?」
そう言いながら、たぁが手にしているものはチョコだった。
知らない人のために言っていこう。彼は無類のチョコ好きで私から「チョコ博士」と言われている。
彼が「買う」、「食べる」チョコに対して余計な口出しをすると怒られる。それでも体調管理という面で食べ過ぎを指摘するとその時は不貞腐れても翌日から自分で気を付けるようにはなった。
「どうして悩んでいるの」
「量が多いから」
食品表示を確認すると“容量:800g”。うん、確かに重い。
だけど見たことがない種類でどうしても気にある彼は購入を決めた。
お会計を済ませてから皆に一つずつ配る。
「甘っ!」
甘いもの好きなささ家族はおいしく頂いていたけど、甘いものをあまり口にしない私には合わず、一口食べて残りをたぁに渡すとポンと自分の口へと放り込んだ。
11月上旬にもなると日暮れは早い。17時過ぎ、山沿いの道路を走っていると辺りは既に薄暗くなっていた。
ナビを頼りに進んでいると急に「ノースイン」と宿の看板が見え、誤って通り過ぎてしまった。引き返そうとすぐそばを左に曲がって、細道をまた左へと曲がる。
「宿で駐車場の行き方を聞いてくる」
ささは車を降りて走っていった。
道の先は空き地になっていて、れんはそこに車を移動しようと動かす。
ギギギギィ
鈍い音が車内に響いた。
「あぁ、(やってしまった)」
れんは悲しげな声を出した後、外へと出た。
道沿いに大きめの石が転がっていて、暗がりの中、それに気づかずに車を動かし、残念無念、こすってしまった。音が後ろから聞こえてきたように思えたけど前の部分に傷が出来てしまったようだ。
「ここの隣が宿だよ」
ささが戻ってきて教えてくれた。
彼女は複数の行き方を車の外から教える。
「一番いい行き方だけ教えて。それに助手席に座れば」
「そうだね」
彼女は乗り込み、再び車道に出るとすぐに看板が見えたので左に曲がる。
狭い駐車場には既に数台の車が停まっていたけど、良い場所を見つけて無事、停車。
運転ご苦労様でした。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
お知らせ:
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
来週から二週間強、海外で過ごします。
移動や行事参加が多いので、残念ながら旅行記を書く時間が取れそうにありません。
次回更新は10月25日になります。
まだ暑さは残っていますが、秋の訪れを楽しみに素敵な毎日をお過ごしください。
これまでのお話
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。