氷の世界
第3回『ワタシとウタ』、井上陽水さんの「氷の世界」。
日本の作詞家の中で、私は井上陽水さんが一番と言っても良いほど好きです。
本当に良い歌詞というものは、直感で、なんとなく良いなぁと思うんですよね。
そして、井上陽水さんの曲の中で私が最も好きなのが「氷の世界」です。
ご存知の方もそうでない方も、この機会にお聴きください。
私が井上陽水さんに初めて心を奪われたのは、「傘がない」を聴いた時です。
ぼうっとお風呂で音楽を聴いていたら、突然流れてきたその曲に神経を全て奪われてしまいました。
初恋と似た感覚です。
それまでの優しいおじさんというイメージとは一変。
ロックの真髄に触れた瞬間です。
そこから毎日聴き漁り、辿り着いた先には氷の世界が広がっていました。
その曲に流れる疾走感は、まさに吹雪の如く。
焦らされている中にあるいくつかの共感によって、自身の身がどれほど大きな力によって突き動かされているのかを実感します。
社会生活と似たようなものを感じますね。
なんだこの歌詞は。
いつまで経っても息苦しいほどに興奮してしまうほど良い歌詞ですね。
語るのも野暮です。
すごく抽象的ではあるのですが、自身の記憶のようにも感じられます。
重い指切りと軽い嘘。
その狭間に生まれる緊張感。
緊張感が不安や恐怖に変わる。
でもみんなが笑ってくれると、安堵するんじゃないかな。
はたして、それはどうでしょう。
人目を気にして空気を読んでいるようにも見えます。
ここにきてやっと、本当の気持ちが見えてきます。
他人に見られない優しさを隠し持つこと。
その優しさは、決して誰にも気づかれません。
本当は気づいてほしいが、気づかれるには誰かを傷つけなければならない。
その時点で自分の努力も無駄になってしまう、という自己満足的側面もあると思います。
人の欲に関して、とても巧みに表現されている箇所です。
こちらは各サビの最後に必ず登場するフレーズです。
このフレーズ、やけにキメにかかってくるんです。
さっぱりとした気持ち良さがありすぎるんです。
なんでかな〜、と思っていたのですが…
あくまでも推測なのですが、あることに気づいたんですよね。
これ、三三七拍子なのです。
日本人ならではの締まりの良さ。
吹雪に吹かれ、殺風景になった氷の世界の壮観さを表現しているようにも思えます。
あぁ…最高…
井上陽水さんの曲は、抽象的なのにすぐに飲み込めます。
一度なんとなく歌詞を理解した後、意識的に詳しく紐解いてみるのがおすすめ。
その解釈の中で、あなたの本質が現れてきます。
ぜひ、(改めて)井上陽水さんの曲たちを聴いてみてください!
次回、木曜更新の『ワタシとウタ』は、小沢健二さんについてです!
その日まで私は、リンゴ売りの真似でもしてます。
氷の世界の窓の外で。
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