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【はちどりの前日譚】映画『リコーダーのテスト』感想
1980年代の韓国、ソウルの団地に住むある少女の日常を描いた短編映画『リコーダーのテスト』。2018年に公開された『はちどり』の前日譚に当たる作品である。
映画配信サービス『JAIHO』にて先日まで配信されており配信終了ギリギリに何とか鑑賞することができた。この作品を観るのはこれが2回目なのだが、改めて素晴らしい作品だと思ったので感想を挙げておきたい。
家父長制、社会格差、男女格差…『はちどり
【"自分"という存在の不確かさについて】映画『NIMIC』感想
映画ファン向けの映画配信サービス「JAIHO」にて5月5日から配信されている『NIMIC/ニミック』を観た。
『ロブスター』、『哀れなるものたち』などの作品でしられるギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモスの短編ということで配信を心待ちにしていた作品だ。
本作は約12分と非常に短い短編だ。
だが、短いながらもパンチが効いている。
例えるなら、もの凄い風刺の効いた四コマを読んだ時のような切れ味の鋭
【閉じ込められた屋敷の中で】映画『イヤーウィグ 氷の歯を持つ少女』感想
『エコール』、『エヴォリューション』の"変態"もとい"鬼才"ルシール・アザリロビック監督が2021年に製作した『イヤーウィグ 氷の歯を持つ少女』。
AIHOで4月27日から独占配信されているという知らせを見て驚いた。
新作が製作されていたことも知らなかったが、前2作が日本で劇場公開されていたのに本作は劇場公開がスルーされていたという事実もショック。
アザリロビック監督作品といえば、多くの謎を残
【諍いに大きいも小さいもない】映画『ソルフェリーノの戦い』感想
2012年、フランスのソルフェリーノ通りでは国の未来を左右する大統領選挙が行われていた。その裏ではある元夫婦の争いが勃発していた。
熱狂の選挙と交互に描かれる夫婦の争いを描いた映画『ソルフェリーノの戦い』。
監督は2月23日に公開予定の『落下の解剖学』のジュスティーヌ・トリエ。
『落下の解剖学』は2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門でパルムドールを受賞しゴールデングローブ賞でも脚本賞
【演技と本当の境界線はどこに】映画『アルプス』感想
2024年に最初に観た映画が本作の『アルプス』。
ただ、最初に観たといっても劇場ではなく配信サービスの『JAIHO』で鑑賞しました。
監督は1月26日に最新作『哀れなるものたち』の公開が控えてるギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモス。『ロブスター』、『女王陛下のお気に入り』などの作品で知られているが、今作は長編3作目にあたる。
なお本作はベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞も受賞している。
今回改め
【吸血鬼はスケボーに乗って夜を漕ぐ】『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』感想
最高にクールな『吸血鬼映画』を知っているか?
例えるなら「イラン×吸血鬼×ジム・ジャームッシュ」を掛け合わせたような見たことない吸血鬼映画だ。
『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』は日本で2015年に公開された。イランの架空の街を舞台に人間の青年と吸血鬼の少女の出会いがモノクロ映像で描かれる。
監督をつとめたのはイラン系アメリカ人のアナ・リリー・アミールポアー。本作が長編デビュー作となる
【わき道に逸れてからが本番です】映画『マンディブル 2人の男と巨大なハエ』感想
2人の男が仕事の途中で巨大な蠅を見つける。
『マンディブル 2人の男と巨大なハエ』は『ラバー』、『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』のカンタン・デュピュー監督の2020年製作の映画だ。
これまでに『地下室のヘンな穴』、『タバコは咳の原因になる』とカンタン・デュピューの作品を見てきたが、本作がこれまでの作品の中で一番見やすく感じた。
物語は主人公のマヌがある男にスーツケースを届けるという怪しい仕事を
【ビジュアル最高!】映画『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』感想
『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』は2021年製作の中国映画である。中国の小説家、双雪涛の短編小説を原作に最新のモーションキャプチャーなどを取り入れながら、5年の歳月を費やして作られたファンタジー大作だ。
ゴッドスレイヤー…
神殺し…
中二病全開の邦題からしてどういうタイプの作品なのか、ある程度想像はつくのではないだろうか
※ちなみに原題は『刺殺小説家』、邦題は作中の小説のタイトルから取られ
【かけがえのない あの時】映画『夏の庭 The Friends』感想
動画配信サービス「JAIHO」で7月16日より配信されている映画『夏の庭 The Friends』。観たことはなかったが作品の存在自体は前から知っていた。
原作の『夏の庭 The Friends』は小説で作者は湯本香樹実。
1992年に刊行されてから十数か国で翻訳出版されており、日本のみならず海外でも文学賞を受賞している。
本屋の特集コーナー(今だと「新潮文庫の100冊」フェアとか)で昔からよ