国外逃亡のしかた(欧州留学のすすめ)――白川寧々さんトークイベント
2020.6.20(土)朝。二つ目のオンライン参加です。
白川さんの著書『国外逃亡塾』発売記念ということでインフィニティ国際学院・学院長の大谷先生が企画されました。
今まで何度か白川寧々さんのトークイベントに行き損ねていたのと、イベントレポートの評価が大絶賛一色だったので一度話を聞いてみたいと思っていたところでした。
オンラインではありましたが実現できて嬉しかったです。
今回、白川さんはサンフランシスコからのご参加でした。
そして参加者も全国から集まっていたようで、北は北海道、南は沖縄さらには日本を超えてヨーロッパからも参戦していました。
国外逃亡をすすめる背景となる部分を中心にまとめていきたいと思います。
白川さんってどんな人?
学生時代はとにかくルールが嫌いだったという白川さん。日本の学校システムにはフィットしなかったそうです。
そんな白川さんが独学で英語を学ぶようになったのは、反抗期がきっかけ。
コンサルの仕事に就いたのもおじさんに偉そうにできるからという理由だそうで、とてもユーモアに富んだ方だなと感じました。
そんな白川さんは何を最上位目標として活動しているのかというと、人を自由にしたい、とのこと。
自分より大きいもの(存在)にNoと言える自由があればいい。
ただ、Noを言ったあとのフォローに疑問符がつくので推奨しているのは「逃げましょう」ということ。
白川さんは逃げましょう≒Noと言えることと考えているようです。
国外逃亡ってアンチ日本?と思われがちですが決してそうではないようです。
背景として、現状の日本の姿が見え隠れしているようです。
いま、日本では
今の日本人は経済的不自由、身体的不自由という二つの不自由があってもやるしかない!と無理して頑張ってしまうため結局自分をダメにしてしまう、心的不自由状態を引き起こしています。白川さんはこれを立派な制度的虐待であると言っています。
今の自分のことを言われているようでなんだか恥ずかしくなってきました。コロナ禍において同じような状況にある方は他にもいるのではないのでしょうか。
経済的不自由とは
経済的不自由については日本でもいろいろと報道されています。
その最たる例が、白川さんの言葉を借りると「給料低すぎる問題」。
これは私も同じような印象を受けます。
私が就職したのは90年代前半。バブルがはじけた年だったのですが、今はその時と大卒の初任給はほとんど変わりません。
また、90年代後半はそのころあまり主流ではなかった派遣という形で私は職に就いていますが今よりも明らかに時給は高かったことを記憶しています。
その記憶が確かならば、特にスキルの必要もないデータエントリーやファイリングの仕事でも時給1600円を下回ることがなく、外国語のスキルが全くなくても英語の書類を見て何をいっているかがわかる程度であれば時給は1800円以上に跳ね上がり、更にプログラマなどかなり専門的な仕事は2300円以上あったと思います(これはあくまでも私が所属していたP社の話であって他の派遣会社は金額が前後していると思いますがあまり変わらないと思います)。
そこから考えると、肌感覚ではありますが時給は全体的に当時に比べ300円程度は下がっているのではないかと思います。
300円の違いって大きいと思いませんか?
もうひとつ、日本の「給料低すぎ問題」がはっきりわかる資料をシェアしたいと思います。
この資料はOECDの統計をもとに全労連が作成したものです。
ちょっと見にくいのですが資料1では1997年=100としたときの実質賃金指数をあらわしています。
これを見ると、一目瞭然ですよね。
日本だけ100を割っている、つまり97年より賃金が下がっている、ということを示しています。
賃金が下がっている割には高等教育(特に大学)の費用はあがっているような気がします。
今の日本は給料が下がり、労働生産力も下がっている状況。
この背景には日本特有の問題があるのではないかと言われています。
一番大きいのは職場への忠誠心。
日本は終身雇用、年功序列という固有の制度が根強く残っています。
ただし、その制度も近年崩れつつあるので長く働いていても賃金があがらなくなるという問題が生じています。
働いていて嫌になってしまう。就活が嫌になってしまう。
それが今の日本の状況なのだと思います。
では、日本の教育は時代遅れなのか、というと必ずしもそうではないようです。
「日本の従来型の教育が悪い」という意見が出ることも多いのですが、それは日本だけがそういうふうに言っているのではなく、海外も同じようなことを言っている国は多いようです(ヨーロッパを除く)。
経済的不自由の原因を、白川さんは日本の教育そのものよりも経済的アウトプットがダメになったときダメになる、と表現しています。
身体的不自由とは
ここでいう身体的不自由というのは、格好のことをさしています。
確かにバブルの時は、荒木師匠をはじめ、紫色の羽根センスを持った派手な格好をしたOLさんたちがジュリアナ東京で朝まで踊りあかす、といった開放的なイメージがありました。
でも、今はあまりそのようなイメージがありません。
先日、資料を整理していた時に見つけたのですが、昔と今での入社式での様子がとても対照的でした。
写真は1986年といまのJALの入社式を比較したものです。
1986の資料は新聞記事のため、残念ながらわかりにくいのですが、明らかに柄物のスーツを着ている方が多いようです。それにくらべ、今は全員がほぼ黒。
実は私が就職活動をした1993年の時点では既に今と同じようにリクルートスーツを着ていたので(とはいえ、グレーや紺といった色のスーツを着ている人もいたので今思えば過渡期だったのかもしれません)このような同質性を求められるような服装になったのはバブルが境となっているのかもしれません。
二つの不自由が心的不自由を引き起こす
経済的不自由、身体的不自由をおこすことによってさまざまな不満を抱きます。
それでも、やるしかないと自分を追い込んでしまうと、ある日爆発して自分をダメにしてしまいます。
それが心的不自由という状況を引き起こしてしまいます。
私は、お話を聞いていて、不自由さでがんじがらめになってしまう前に手を打った方が精神的に楽になるのではないかと思いました。
不自由さを感じながらやるよりは選択肢を広げて自由を拡散する方法を探るというのはひとつの方法として考えられます。
金魚鉢
白川さんは日本の様子を金魚鉢にたとえていました。
金魚鉢に入っている金魚たちは日本の中にとどまっている人たち。
そこから勢いよく外に飛び出た”変態金魚”さんのことをグローバル人間と思いがちだけど、そうではないということ。
スターバックスに行ったことがある、ユニクロ着たことがある人は十分グローバル人間であるとすると日本人のほぼ100%、グローバル人間と認定されていることになります。
「英語ができないから私には関係ないや」と金魚鉢の外=未知の世界と思い込み、金魚鉢の外に飛び出さない人はもったいない。
ひとつの世界の中の日本というところに住んでいるだけで世界は開かれています。
先進国の中、幻想の金魚鉢の中にいると思い込んでいるのです。
そういう人たちがこれからますます苦しくなっていくのではないかと分析しています。
私はよく「日本は江戸の鎖国時代のときのように外に開こうとしない」と発言していたのですが、閉ざしている前提とした話をするのではなくもうすこし視野を広げるという考えもあるなと感じました。
これからの世界は教育などすべてにおいて新しい課題を見つけ、発見していこうというところにお金をつぎ込んでいくのではないかと予想しています。
みんながこの課題をどうにかしようと今、少しずつ動き始めています。
それについて行けない人が淘汰されて行ってしまう。
この局面でだめになったら早い段階で衰退していくのではないかという見立てです。
このような背景を踏まえ、海外での進学を進めているのだそうです。
課題や、予測不能な立場で挑戦をあきらめないという社会を肌で感じてほしいということです。
寧々さんの半生
ご自身の学生時代を振り返っていました。
英語教育が思っていたより残念だと感じた14歳。
17歳の時親に詰め寄られたこと。
周りの協力を得ながらアメリカの大学を受験。
大学卒業時リーマンショックと重なってしまったものの、米会計系のコンサルについた話、など。
話を挙げたらきりがないほどその半生に海外留学をすすめるヒントが隠されていました。
日本の大企業に勤めている友人と自分を比較し、自己分析していました。
日本の企業はサービス残業は当たり前(近年になり定時退社する企業も増えてきましたが)、でも給料はすぐにはあがらない。
ご自身の所属する会社はトレーニングと名の付くものはビデオを見て感想を書くだけ、ボスも含め自分も6時には帰れる、そして結構サラリーももらえるというもの。
日本の大企業に勤めている子たちが自分より何倍も大変な新人研修をしているのに給料がもらえないということが世の中に対する疑問のはじまりだったようです。
ここからが本題・進学について
進学するには、まずは普通の努力をしてください、とのこと。
今の高校生世代にとって、偏差値にみあった普通の大学が見当たらないのだそうです。(デジハリは日本の中で唯一それにみあった学校として挙げられていました)。
普通に日本の四年制大学に行くと英語ができなくなってしまいます。
そこで、大学教育を英語で受けられるところを勧めています。
英語ができないと下降カーブにロックオンしてしまう、という寧々さんは言っています。
英語ができなければビジネスコミュニケーションがとれなくなり、課題の発見、解決につながらないので日本国内の年功序列レールに乗ってしまいもったいない結果になってしまうと私は解釈しています。
経済的自由の近道
アメリカ、イギリス、カナダ、シンガポールは学費が高い、とのこと。
アメリカを例にとると、寧々さんが通っていた頃のアメリカの大学は頑張ればなんとか学費が出せるというレベルだったようですが、今は当時の2倍かかるとのことです。
このデータだけをみると海外進学は絶対無理だとあきらめてしまう人がいるのですが、探せば日本の常識以下の進学ルートを探すことができます。
英語力がなければまずいのですが、高校3年生はこの時点から頑張ってやるなら英語が苦手でも大丈夫、とのこと。
入学のハードルは決して高くなく、国際ランキングが高い大学=いい大学というわけではありません。
たとえば、ハンガリーの大学はコンピュータサイエンスが高くグローバル賃金が高い、と紹介しています。
コミュニティカレッジから4年制大学への編入をするならヨーロッパの大学を勧めています。ただし、具体的な学校名を挙げなかったのはググってください(Googleで調べましょう)、とのこと。
今の中高生は進路まったなしの状態なので、多めにリサーチをかけて英語だけでやっていける留学生ウェルカムの欧州5カ国(ハンガリー、チェコ、エストニア、フィンランド、オランダ)を厳選してくださいました。
あくまでも今回の判断基準は①英語しか必要なし、②費用が日本並み、それ以下、③国際ランク、教育評価の高い学校、です。
基本、学費は払っても20~50万円、物価は東欧で日本の半分以下、オランダで東京並み、というのが目安です。
どこも良いところ悪いところがあるのであとは自分で調べて一番フィットした学校をさがすように、とのことでした。
入学ハードルがとにかく低い
そして、もうひとつの特長としては、入学へのハードルが低いということが挙げられます。
・個人的な書類を1月までに提出すればよい。
・合否が決まるまで早いと数週間、遅くとも4~5月
・日本の高校を卒業してからでも手続きは間に合う
・日本のAO入試と同じような感じ
高校在学中にいったんは浪人しようと決めたとしても、やっぱり海外に行こう‼️で普通に間に合います。
寧々さんオススメ欧州5か国の特長
・ハンガリーは一番コスパがいい。
・エストニアはIT大国である
・フィンランド・オランダはムダがなく、アントレプレナーシップのプログラムは有名
・ヘルシンキ大学は「教育改革修士号」がある(5年)
・オランダは日本の高卒のみではほとんどとってくれないためファウンデーションコースにいったあとの大学進学をオススメ
・TOEFLは60点でも大丈夫
・最終学年で数学を履修する(これ大事)
その他欧州の留学事情
・フランスは学費が安いが、フランス語が話せない
・ドイツは全て学費無料
・イギリス、アイスランド以外は全て安い
どんな学校があるかはGoogleで検索して、以下のサイトで探すことができます。
・Foundation Program (ファウンデーションコース検索)
・BachelorsPortal.com
まとめ
このあとも、具体的な学校名をいくつか挙げながら1時間半では到底おさまりきれない驚きの情報を大量にいただきました。
彼女が国外逃亡をすすめる背景がよくわかり、これから受験を控えるわが子たちにもより多くの選択肢を与えることができたのではないかと思います。
日本にとどまる、とどまらないは本人たちに判断を任せるとして、これからは一人一人が世界全土に目を向けてグローバルな視点で課題解決を図れるような人間が一人でも多く輩出できるようわたしも次世代の子どもたちを応援していきたいと思いました。
私たちが思っている以上に欧州留学のハードルは低いです。
選択肢のひとつとして、ストックしておくのはいかがでしょうか。
※今回の動画がインフィニティ国際学院のyoutubeチャンネルにアップされていました。