感情知能で最高のパフォーマンスを発揮できる「ゾーン」を手に入れる
感情知能を習得することで得られる最高のメリットの一つは、「ゾーン」と呼ばれる自身の最高のパフォーマンスを発揮できる集中力を手に入れることができることです。皆さんも、人生で何度かゾーンに入った経験があるのではないでしょうか?勉強、スポーツ、仕事など、さまざまな場面でゾーンに入ることができれば、自分史上最高のパフォーマンスを発揮したり、不可能だと思っていたことを可能にしたりすることができます。心理学でフロー状態と呼ばれるこの現象は、科学的な理解も進んでいます。今日はその秘密と感情知能との関係を TED の動画などを紹介しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。
フロー状態とモチベーション
フロー状態はミハイ・チクセントミハイにより提唱され、その可能性は多くの注目を集めています。感情知能は、フロー状態を手に入れるための有望で具体的な方法論の一つであると思います。ミハイ博士の理論によると、フロー状態に入るには二つの条件があるそうです。一つは、目標 (Goal) を達成するためのスキルを持っていること、もう一つは、そのスキルよりも少し高いレベルのスキルを必要とする少し高い目標 (Stretch Goal)を目指すことです。
この動画では、フロー状態に入るためのモチベーションの大切さを語り、モチベーションを高める五つの要素、好奇心、情熱、目的、自律性、熟達を語っています。この五つの要素は、仕事をする中で自分の技術レベルを上げていく過程と非常によく似ているかもしれません。好奇心がそそられる仕事に就き、次第に仕事に情熱を持つようになり、目的を見つけ、自律的に仕事ができるようになり、最終的に熟練したレベルに到達するというような過程です。この過程により、フロー状態を手に入れるための二つの条件、目標を達成するためのスキルと、そのスキルよりもより高いレベルの目標達成を目指す習慣を手に入れることができるでしょう。しかし、実際には、この二つの条件を満たしていても、なかなかフロー状態に入れない、もしくは、フロー状態をコントロールできないことがあると思います。
集中という「今」を捉える能力を磨く
この動画では、射撃競技の世界チャンピオンだった経験から得た「集中」する方法と人間の脳の能力との関係を紹介しています。人間の脳は、過去を振り返ったり、未来を想像する能力を備えていますが、集中するとは、過去でも未来でもない、「今」を捉える能力のことだと説いています。内省力の投稿の中で、人間の脳は起きている時間の約半分は脳内のおしゃべりに費やされており、「今」を認識できていない話を紹介しましたが、集中する、さらには、フロー状態を手に入れるためには、「今」を認識し続ける能力を磨くことが必要になります。また、感情認知力の投稿の中で、瞑想を行う際には脳の持っている一点集中の能力を呼吸に応用することを紹介しましたが、フロー状態を手に入れるためには、その能力を「今」まさに行っている活動に応用することが必要になります。感情知能で鍛えられるこれらの能力を磨くことが、フロー状態を手に入れ、コントロールする方法を与えてくれます。
フロー状態を手に入れる際に気が付かなくてはいけないことは、高い目標を目指すとはいっても、そのこと自体は未来の出来事であり、「今」に集中するためには妨げになるということです。その高い目標を達成するために「今」やらなければいけないことは何であるのかを明確にし、そこに集中することで、フロー状態を手に入れることができます。それは、過去、今、未来、という時間軸を捉えながら、脳内のおしゃべりを抑えて、一点集中の能力を「今」やるべきことに応用するということなのです。
マインドフルネスで「今」を生きる
この動画では、心の健康を保つ大切さと、そのためのマインドフルネスの有効性を語っていますが、自分の感情に目を向ける方法をとても興味深い方法で表現しています。以前、現象学という哲学的な視点から自分の感情と向き合う方法を紹介しましたが、この動画の方法は全く異なる視点からの発想であるにもかかわらず、その類似性は非常に興味深いものがあります。あらゆる感情そのものは脳の正常な働きの一部であるため、特に怒りや恐れといった後ろ向きな感情を「取り除く」ことを考えてしまうと、困難に直面することになると思います。そうではなく、怒りを感じている否定しがたい自身の脳からの結果、哀しみを感じている否定しがたい自身の脳からの結果を受け入れることから始めることが重要となります。一方で、感情に結びついている自分の考えや記憶は豊かにすることができるのです。そして、それを行うためにはマインドフルネスが有効であり、それによって、「今」を生きる方法を手に入れることができるのです。
感情は外部からの刺激により誘発されることがあります。音、におい、キーボードやペンの感覚、部屋の温度、目の前にいる人の行動、など五感から得られる情報は特定の感情に変換されることがあります。フロー状態を手に入れるためには、それらの感情と向き合うことが大切になります。マインドフルネスによって、そのような五感からの情報が特定の感情に結びついているという事実と、自分もまだ気が付いていない価値観や過去の経験などの結びつきに思いを巡らせることができます。一方で、内部からの刺激により誘発される感情の多くは、先ほど紹介した脳内のおしゃべりから来ています。感情知能によって、この外部と内部の両方からの刺激からくる感情を受け入れ、理解することができるようになるのです。
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