「本質的な価値の提供がしたい」という言葉についての考察
採用面接をしていると、たまにこんな言葉を聞きます。
本質的な価値を提供したい
気持ちはめっちゃわかります。
自分も仕事するなら本質的な価値提供がしたいと思いますので。
でも面接のときに「本質的な価値提供ってどんなイメージ?」「どんな原体験からそう思うようになった?」と話題を振ってみると、結構言葉に詰まる方も。
そこで今回は、この「本質的な価値を提供がしたい」というふわっとした思いを言語化して解像度をあげたいと思います。
そもそも価値提供とは?
ビジネスをしている以上、お金払ってもらえていて満足してくれてるなら、大きくは価値を提供しています。
価値を感じることができないと買い続けてくれるということはないですもんね。買い切り型であっても、商談時に価値を感じるから買うんです。
そのビジネスが存続する限り(詐欺グループでもない限り)は、価値は提供しているはずなんですよね。
"本質的"とは?
「本質的な価値提供」の「本質」。
to Cビジネスならその個人の生活に、to Bビジネスならその企業の運営に、それぞれなくてはならないもの(must have)だったり、導入すると生活やビジネスの価値を底上げするものだったりするのかなと思います。
なので、どんなサービスでもターゲット次第で本質的な価値を提供はしているはずです。
例えば、私はスポーツ観戦はハマると沼りそうなのでしないようにしています。笑
そんな私からすると、たまーにYoutubeで見る好プレーダイジェストは本質的な価値というより、息抜きです。
一方で、「スポーツ観戦命!応援したい!」という人にとっては、好プレーダイジェストがその人の生活を私の何万倍も潤すコンテンツなはず。
ちょっと無理矢理感ありますが、このように、ターゲット次第で本質的な価値提供になっているんじゃないかと思っています。
では、転職者はどこに違和感があって「本質的な価値提供をしたい」となるのか
おそらくこれは、その人が所属する企業姿勢にあるんだと思います。
例えば・・
売上至上主義なのか
顧客第一主義なのか
競合に勝つことが第一なのか
いろんなイデオロギーがあり、企業戦略上その時々で変わることがあるものなので、何が正しくて何が誤っているなどは言い切れないです。
ですが、それぞれのイデオロギーに対して、「自分の正義はそこではない」と思うタイミングと転職想起が重なり、「本質的な価値提供がしたい」と思い始めるんじゃないかと思います。
本質的な価値提供をしたいと思ったときに気をつけることは?
残念ながら優秀なメンバーに「本質的な価値提供をしたいんだ!」と思われてしまった企業を擁護するわけではないんですが、、、
「本質的な価値提供をしたいんだ!」と思っている人は、次のことに気をつける必要があると思います。それは
実はクライアントからの要望を吸い上げない姿勢にフォーカスしている
例えば、いろんなことを考えて意思決定しているという視座に至れていないとき
クライアントの言う事を鵜呑みにしている
例えば、自社のプロダクトの思想や正義性を失念しているとき
プロダクトのせいで売れないんだと思っている
例えば、他の人は売れているとき
これらは、実は「本質的な価値提供」に重きを置いているわけではないと思います。
1、2点目とかは、「クライアントの声に向き合う価値提供」をしたいのではないでしょうか?
本質的な価値提供をしたい人は、クライアントからの要望や声に対してクリティカルな思考を持てているかを一度思い起こしてみましょう。
「こういうのできないの?」と言われたときに、本当に実現したいことや目指す姿カタチはクライアントと同じものをイメージできているか?
本当は違うカタチの方がやりたいことを実現できるのではないか?
本当にやりたいことはなんなのか、誰にとって、いつの、何のための価値なのかを考えるとよいです。
そしてそういった会話をできる人は、クライアントからの信頼も厚いと思います。
自分も「本質的な価値提供がしたい」と思っていた
自分がなぜ本質的な価値を提供したいと転職時に思ったかを簡単に書いておきます。
それは、社内政治が蔓延しているように見えて、意思決定スピードが遅かったことが原因かなと思います。
また、競合に気を取られすぎていて、使命感や指針などがおざなりになっていることを感じました。
クライアントのことを見ておらず、自分たちの体裁を気にしているんじゃないかなと思ってしまったのです。
ここで、自分自身がクライアントに提供している価値に自信が持てなくなってしまいました。
ここから、「本質的な価値提供がしたい」と思うようになりました。
価値提供に自信ができるとどうなるか
今ではありがたいことに、私は「本質的な価値提供ができている」と概ね思えています。理由はいくつかあります。
プロダクトが素晴らしいと自信を持って言えるから
会社が保持するノウハウが経験に裏付けられているから
そのノウハウを自分も吸収し続けられているから
結果、クライアントが実現したいことにフォーカスしているから
プロダクトが素晴らしいと思えるのは前提ではありますが、コモディティ化が進みやすい現在、機能なんて簡単に真似できます(特許を踏まなければ)。
A社とB社があり、ほぼ同じ機能が備わっているなかで、何をもって本質的な価値提供と言うか。
「機能」という表面だけにとらわれてしまっては、"本質的な"の部分がおざなりになってしまうと思うんです。
それよりも、クライアントが目指したいゴールを解像度高く理解し、そのゴールの実現に向けて伴走できるノウハウを提供できるかが重要だと思います。
機能開発という観点では、R&Dをあまり必要としない後発組の方が価格も抑えられるし有利という場合が多いものです。どこに"本質"を置きたいのか、自問自答してみるとよいんではないでしょうか?
スタンスとして持つべきは継続的にレベルアップをする覚悟
本質的な価値は、機能という「ハード面」に現れることも、知識や知恵という「ソフト面」に現れることもあるでしょう。
私はビジネスサイドなので「ソフト面」が求められることが多いと感じています。そのため、勉強やキャッチアップの継続が大事であると考えています。
会社のこれまでの歴史や経験、ノウハウなどの強みを自分ごとにしようとする努力(インプット)と、クライアントに還元しようとする姿勢(アウトプット)。
ここに、本質的な価値が宿るんだと捉えています。
アウトプットの質が下がってきたように自覚するなら、それはインプットが足りていない証拠。
「会社の組織運営に乗っていればOK」ではなく、会社の運営を活かして自分の強みを磨き、インプットとアウトプットを繰り返すことで経験を蓄積し、本質的な価値提供ができるようになるんだと思います。