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ハンバーグの仕込みがゼロになったにも関わらず、ハンバーグ自体の売上が上昇!

近年、サッカーの聖地と称されるようになった神奈川県川崎市の鷺沼。鷺沼駅のほど近くに、週末になると地元サッカーチームの子どもたちや保護者らが集うお店があります。店の名は『鉄板焼き 縁(えにし)』。「縁」の名にこめられた想いや、これまでのストーリーについて、代表取締役の青木泉織氏と店長の川邊悠希氏にお話を伺いました。

スポーツバーのような感覚で、
地元の人が気軽に集えるお店をめざす。

青木:このお店から1つでも多くのご縁がつながりますように。そんな想いをこめて、『鉄板焼き 縁(えにし)』の暖簾にはあえて1つ画数を増やした「縁」の造語を描きました。じつは子ども2人がサッカーに打ちこんでいて『さぎぬまSC』に所属。チームの保護者たちから「チームで集まってわいわいできるお店をやってよ」と言われるうちに、「ご縁がつながる店」という構想を描いていった感じです。私の本業は不動産ですが、不動産ビジネスだけというのもつまらないなと考えていたところだったので、飲食ビジネスに参入する良いきっかけになりました。

『縁』を開業したのは2023年のこと。子どもが所属するサッカーチーム関係者が集まって試合の振り返りができるよう、店内には大型モニターとスピーカーを設置しました。チームの集まりがない日も、大型モニターではサッカーに限らず何かしらのスポーツを流しています。日本代表のサッカー試合があるときはコーチ陣やチームのお父さんたちと集まって試合を見たり、オリンピック中継を流したり。そんなスポーツバー的な要素も楽しめるお店です。

初めての飲食ビジネスに鉄板焼きという業態を選んだのは、店長や調理スタッフの技術もあわせてエンターテインメントになると考えたからでした。目の前の鉄板でおこなわれる調理には臨場感があふれています。五感をフルに使って見せた方がより美味しく味わっていただけると考えました。ただ、鉄板焼きというと高価で敷居の高いイメージを持たれることも少なくありません。そこでリーズナブルなお店であることが伝わる戦略として、うちでは広島焼きを前面に打ち出しました。同じ鉄板焼きでも広島焼きのイメージならぐっと敷居は下がります。地元の人に日常使いでご来店いただけるようにと考えたこの戦略は大当たり。近くで働く幼稚園の先生たちや消防団、自治会の集まりなど、幅広い地元の方たちにお越しいただいています。

川邊:店名に鉄板焼きを冠するお店なので、広島焼き以外にもさまざまな鉄板焼きメニューを考えました。その中でも特にこだわったのがハンバーグです。とびきり上等なお肉を使えば誰が作っても美味しいのですが、うちのようなリーズナブルなお店だとそうはいきません。そこで、ひと手間かけた自家製ハンバーグを開発しようと考えました。これがもう、ほんとうに大変で。開発もさることながら、毎日の仕込みに膨大な時間が取られるようになったんです。

スタッフを疲弊させていた仕込みが、
シコメルのハンバーグ導入でゼロに。

青木:自家製ハンバーグの開発では、店長やうちの自宅のキッチンで何百もの試作を作りました。まさにトライ&エラーの繰り返しです。お肉の種類や産地をいろいろ組み合わせて、スパイスや塩加減も微調整しながら、途中からは算数の授業みたいに「塩分何%」まで細かく設定。ついに美味しいハンバーグができた!となったものの、自家製のものは劣化しやすいんですね。3、4日もしたら酸化するしドリップも出てくる。注文が2日ないだけで、苦労して開発したハンバーグのクオリティが下がってしまう。

川邊:毎日の仕込み負荷もけっこう高くてね。正直、仕込みの中ではハンバーグがいちばん手間が掛かっていました。時間をかけたわりに自家製ハンバーグは劣化が早く、しばらく注文がでないと「今日も注文でないねぇ」とスタッフとぼやく日々。鮮度が落ちたハンバーグは煮込みハンバーグにしたり、ばらしてタコスに使ったりして極力ロスが出ないよう工夫しました。

青木:うちは鉄板焼きの店で、ハンバーグ専門店ではありません。にもかかわらず、ハンバーグを自家製にしてからはスタッフの負荷が膨大に。かといって仕込みの手順を減らすとクオリティが下がってしまいます。悩んだ結果、クオリティの低いものを提供するぐらいなら出さない方がいいと判断しました。そこで仕込み済みのハンバーグを購入してアレンジする方向に切り替えることにしたんです。いろいろなハンバーグを仕入れて比較。黒毛和牛や単価の高いものなど、かなりの数を試しましたが、シコメルのハンバーグが一番でした。決め手はやはり味ですよね。他社のものはフワフワすぎたり、玉ネギの入れすぎで甘みが強すぎたり。でもシコメルのハンバーグは純粋に「美味しい」と思ったんです。スタッフも含めて満場一致でした。

川邊:シコメルのハンバーグにしてから仕込み時間はぐっと削減されました。それまでは前日の夜と当日の朝とでハンバーグの仕込みをしていたのですが、今ではハンバーグの仕込みはゼロです。以前は仕込みのために開店2時間半前に出勤していましたが、今では1時間前に来ても開店準備が間に合うようになりました。朝の仕込みもゆったりできるようになり、そのぶん新メニュー開発にも力を入れられるように。それからは2週間に1回のペースで新メニューを考え、黒板メニューに出しています。

青木:シコメルは調理スタッフからの紹介でした。TVでシコメルのことを知ってずっと気になっていたそうです。もともと調理スタッフには新メニュー開発に力を入れてほしいと思っていました。ですから思い切って自家製ハンバーグをシコメルのものに切り替え、仕込みの負荷を大幅に減らせたのは収穫でした。

冷凍から調理できて手間いらずのハンバーグが
お客様から評判となり売上もUP。

川邊:気になるお客さんの反応はというと、これがまたいいんです。みなさん「美味しい」と言ってくださる。ハンバーグのメニュー名を「自家製ハンバーグ」から「淡路牛ハンバーグ」に変えましたが、今のところ前の方が良かったという声はありません。むしろ以前より安定してハンバーグの注文が出るようになりました。

青木:シコメルのハンバーグは冷凍で届くのですが、不思議と解凍してもドリップが出ないんです。あえてシコメルのハンバーグを3日ぐらいおいてから食べてみたのですが、それでも美味しかった。冷凍の方法が特殊なのかな。

川邊:ハンバーグは解凍せず、冷凍のままで焼いています。冷凍のハンバーグを鉄板の上に乗せてフタして焼くだけ。解凍してから焼くとか、いろいろ調理方法を試したのですが、冷凍のまま焼いても味が変わらなかったので、解凍のひと手間を省きました。

青木:ハンバーグ自体の売上も前より上がっています。やはりシンプルに美味しいからですかね。あまりに美味しいので、私はお店にお金を払って家で食べる用に個人買いしているほどです。それだけ美味しいのに驚くほど価格は安い。さらに経営側からすると仕込みのコストが小さくなるのも大きな魅力に感じています。

最近では地元の野球チームからも、サッカーチームのようなお店の使い方をさせてもらえないかと話がありました。ご縁をつなぐお店になればと願って創業したので、新しいご縁は大歓迎。不動産業が私の本業ではありますが、軌道に乗ってネームバリューがでてきたら店舗を増やすのもありだと思っています。ゆくゆくは沖縄の宮古島などにもお店を出せたら楽しいでしょうね。これからも店名『縁』の名のとおり、鉄板焼きとスポーツを介して、1つでも多くのご縁をつないでいけたらうれしいです。

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